10日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、米・中長期金利の低下を受けて一時155.80円まで下落した。米連邦公開市場委員会(FOMC)では予想通りに利下げが決定され、短期国債を購入する方針を示された。ユーロドルは、米金利の低下で1.1700ドルまで上昇した。
本日の東京外国為替市場のドル円は、予想通りにタカ派的利下げが決定されたFOMC声明を受けて、「思惑で仕掛けて事実で手仕舞う」相場展開を予想する。そういった中で、来週の日銀金融政策決定会合の利上げ観測を斟酌していく展開か。
FOMCでは、予想通りにFF金利誘導目標が3.50-3.75%に引き下げられたが、2019年以来となる3名の反対があった。2026年と2027年の利下げ見通しが1回だったことでタカ派的利下げとなった。長期金利(中立金利)見通しは3.0%で据え置かれた。声明文では、「追加的な調整の程度とタイミングを検討するにあたり、今後の経済指標を慎重に検証していく」と述べられており、これは政策変更の一時停止を示唆する際に使用される文言だ。
パウエルFRB議長は、これまでの利下げにより「経済の動向を見守るのに適した状態にある」と言及し、今後の追加利下げに慎重な姿勢を示した。一方、次期FRB議長の最有力候補のハセット米国家経済会議(NEC)委員長は、経済指標が堅調なら0.5%ポイントの利下げを支持する可能性がある、と述べている。そのため、来年以降のFRBの金融政策は予断を許さない状況となる。
市場の反応は、タカ派的利下げという思惑で156.96円まで買い上げてきたドル買い持ちポジションが、利下げ決定という事実を受けて手仕舞われつつあり、155円台まで売られているFOMCが、銀行準備の「十分(ample)」な供給を維持するため、年限が短めの米財務省証券の新規購入を承認し、12日から月額400億ドルの財務省短期証券(Tビル)の購入を開始すると表明したこともドル売り要因。
植田日銀総裁が先日、「長期金利が急激に上昇する例外的な状況では、機動的に国債買い入れの増額などを実施する」との発言が円売り要因とされたことと同様の構図である。
今後は、来週の金融政策決定会合での0.25%利上げ観測による円買いと、来年の追加利上げ時期は夏辺りまでという思惑による円売りが錯綜するだろう。そういった中、過去26日間の中心値である一目均衡表・基準線155.36円付近を軸にした相場展開を想定する。
また、抗日戦争勝利80年を迎える中国では、週末13日は南京事件の追悼日だ。レアアース(希土類)の禁輸措置などの強硬策を打ち出した場合、日本経済は大きな打撃を受けることになり、地経学的リスクによる円売り・株売りの可能性にも警戒しておきたい。
9時30分発表の11月豪雇用統計では、失業率は4.4%予想と10月の4.3%から悪化、新規雇用者数は+2.0万人と10月+4.22万人からの減少が見込まれている。直近の豪データでは、7-9月期の豪国内総生産(GDP)は前年同期比+2.1%と2023年以来の高水準、消費者物価指数(CPI、前年比)はRBAのインフレ目標とする2-3%を上回っていた。
先日の豪準備銀行(RBA)理事会では3会合連続で政策金利の据え置きが決定され、声明文やブロックRBA総裁はタカ派的な見解を表明。もし、予想に反して雇用情勢の改善傾向が示された場合は、早期利上げ観測が高まることで豪ドル買いを促すことになる。
なお米国では、トランプ米大統領が、連邦最高裁によるトランプ関税違憲判決の可能性を抱えている。来週辺りに公表される「エプスタイン文書」の内容次第では、トランプ政権を支えてきた保守派の「MAGA(アメリカを再び偉大に)」陣営のさらなる離反が危惧されている。
米共和党は、ニューヨーク市長選挙、バージニア州とニュージャージー州知事選挙に続き、トランプ米大統領の地盤であるフロリダ州で30年近く支配してきたマイアミ市長選挙でも敗北した。来年の中間選挙の結果次第ではレームダック化する可能性も警戒されている。
(山下)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
