27日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、重要イベントを控えたポジション調整の売りで152.57円まで下落後、153.20円付近まで持ち直した。ユーロドルは米長期金利の低下を受けて1.1652ドルまで上昇した。ユーロ円は178.23円まで上昇し、1999年のユーロ導入以来の高値を更新した。
本日の東京外国為替市場のドル円は、日米首脳会談で重点が置かれる協議内容次第、すなわち防衛費増額ならば円安、貿易赤字減額では円高を見極める展開となる。
昨日開催された日米財務相会談では、今後も両財務相の間で緊密に協調していくことが確認され、日本銀行の金融政策は話題にならなかった、と報じられた。為替に関しては、片山財務相は「特に、今日この点についての機微にわたる話は出なかった」と述べていた。
本日の日米首脳会談では、日米関税協議のフォローアップ、安全保障政策を巡る日米の協調と日本の防衛費増額などが協議されると見込まれている。
日米両国は9月に合意した関税交渉で、米国で製造され安全認証を受けた乗用車を追加試験なしに日本国内販売のために受け入れると合意し、これを文書に明記した。報道によると日本政府は、トランプ米大統領がお気に入りらしいフォードのピックアップトラックF-150(価格約10万ドル=1530万円)100台を購入し、道路やダムの点検業務などに活用する計画だという。さらにトヨタ自動車は、米国生産車を日本に輸入する案を米国側に通達する、と報じられた。
日米首脳会談での円安要因としては、トランプ米大統領が日本政府に対して、防衛費を次年度予算のGDP比1.8%(9.9兆円)から3.5%(約20兆円)まで引き上げることを求めた場合。債券市場は防衛費増額を賄うために国債発行増額を予想して債券安、為替市場では円安が進むと見込まれる。
日米首脳会談での円高要因としては、トランプ大統領が日米貿易不均衡是正のために円安抑制に言及する可能性。すなわち、日本銀行の利上げを通じた円安の修正を求めた場合となる。その場合、株式市場は下落に転じ、為替市場では円高が進む可能性がある。
日本の対米貿易黒字は、今年1-9月で5兆5630億円となり、トランプ関税がなかった昨年同時期の6兆1556億円から5925億円減少していた。しかし、日米貿易不均衡是正を目指すトランプ米政権にとっては10%程度の減少では飽き足らず、関税だけではなく円安抑制も俎上に上がる可能性に警戒しておきたい。
先週末に開催された米中閣僚級貿易協議では、通商摩擦の緩和を目指す多数の合意が示されたことで、米中報復合戦第2幕は回避されて貿易休戦が1年間程度継続することになった。中国が米共和党の支持基盤となる州で大豆の購入やレアアース(希土類)の供給を再開し、米国は11月1日付けで発動を警告していた100%関税措置を見送る方針となった。しかし、米中の貿易不均衡の是正も解決にはほど遠い状況となっている。
(山下)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
