8日の海外の外国為替市場でドル円は、欧州市場で153.00円まで上昇した後、NYタイムに利食い売りやポジション調整の売りで152.38円付近まで下押し。もっとも、一巡後は152.95円付近まで持ち直した。ユーロドルは、米長期金利が上昇に転じたことで1.1599ドルまで下落した。
本日の東京外国為替市場のドル円は、次期首相指名までの政治空白の間隙を突いた「高市トレード」(日本円売り・日本国債売り・日本株買い)が継続すると予想される。
ドル円は、4日の自民党総裁選での高市新自民党総裁の誕生を受けて、6日には窓を空けて上放れし、高市自民党総裁の経済政策「サナエノミクス」への思惑による「高市トレード」(日本円売り・日本国債売り・日本株買い)で153.00円まで上値を伸ばしてきている。
新政権の発足は、15日に予定されていた臨時国会での次期首相の誕生を待たなければならないが、20日頃まで先送りされる可能性が報じられており、政治空白の間隙を突いた市場の円売り攻勢が続くのかもしれない。
市場筋の見立てでは、投機筋は先週末までの円の買い持ちポジションの手仕舞いを余儀なくされた後、円・キャリートレードやドルコールオプションなどで更なるドル高・円安に備えているとのことである。
また、公明党が連立政権から離脱した場合、首相指名投票で、玉木新首相の誕生が警戒されているもようで、一寸先は闇の政治動向には警戒していきたい。
ドル円のテクニカル分析では、昨年7月の高値161.95円を頭、140円付近をネックラインとする「ヘッド・アンド・ショルダー」を形成しつつ、右肩の1月高値158.87円を経由する上辺での「下降三角形」を形成中だと思われる。下降三角形の上辺は、今月154円台で下降中であり、今後の上値の注目ポイントとなっている。
ドル高・円安を抑制したい動機としては、トランプ米政権には日米貿易不均衡是正、日本の政権には、輸入物価による物価上昇抑制がある。 トランプ米政権は、貿易赤字削減のために、関税を引き上げ、ドル安志向を標榜している。ベッセント米財務長官は、2月と8月に植田日銀総裁と電話会談をして、円安抑制に向けた利上げを要請したもようだが、2月5日の電話会談時のドル円は152円-154円だった。
2024年の161円台までのドル高・円安を反転させたのは、当時の神田財務官が主導したドル売り・円買い介入であり、市場では152円を「神田シーリング」と命名している。
ドル円が週初に150円台に乗せた時点では、故安倍自民党総裁の経済ブレーンで現在は高市自民党総裁の経済ブレーンである本田元内閣官房参与が「行き過ぎ」と牽制し、加藤財務相が過度な変動への警告を発したものの、本邦通貨当局による円安阻止の本気度は伝わってこない。
(山下)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
