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【市場概況】東京為替見通し=日米金融政策の方向性相違で円買い優勢か、FRB独立性消失の危機も

先週末の海外市場では、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の米カンザスシティー連銀主催のシンポジウム(ジャクソンホール会議)での講演で、市場が「利下げ再開を示唆した」との受け止めから、ドル売り・債券買い(金利は低下)・株買いが広がった。ドル円は一時146.58円まで値を下げ、ユーロドルが1.1743ドルまで値を上げた。

 本日の東京時間でのドル円は、上値が限定的か。日米の金融政策の方向性の違い(金利差縮小)を背景としたドル売り・円買いや、FRBの独立性が危惧されていることがドルの重しとなりそうだ。

 先週末のジャクソンホール会合では、昨年に引き続きパウエルFRB議長が年後半からの利下げを示唆した。昨年の同会合でパウエル議長は、「政策を調整する時が来た」と高らかに利下げに舵を切ることを宣言。それと比較すると今年は、弱めのトーンではあったものの、FRBの2大責務の1つ「雇用の最大化」について、「雇用の下振れリスクが高まっている」との認識を示した。なお、もう1つの「物価の安定」については「長期的なインフレ期待はしっかりと固定されているように見える」と言及している。

 パウエルFRB議長は、現状の政策金利をやや引き締め的との判断も下した。7月雇用統計時に発表された過去2カ月分の修正値が大幅に下方修正されたことで、これまでよりも「雇用の最大化」の責務が現時点ではFRBが重きを置くことを明示したといえよう。

 さらに金融市場が休場の23日には、植田日銀総裁がジャクソンホールで「賃金には上昇圧力がかかり続けると見込まれる」と発言。FRBが利下げに傾く一方で、日銀の利上げ期待が高まる。今月13日にベッセント米財務長官が日銀への利上げ圧力と捉えられる発言をし、米国からの圧力もかかっていることで、日銀が利上げ路線に動く可能性は高い。日米の金融政策の方向性の相違(日米金利差の縮小)を背景に、為替相場はドル売り・円買いの傾向に戻りそうだ。

 FRBの独立性が懸念されていることも、ドルの上値を抑える要因。先週末にトランプ米大統領は、「クックFRB理事が辞任しなければ解任する」と発言した。クック理事の辞任問題は、トランプ政権の内部から、同氏の住宅ローンをめぐる不正の追及が起こったことがきっかけだ。これを主導しているのはボンディ司法長官と米連邦住宅金融局(FHFA)のパルト局長とされ、両者ともにトランプ米大統領への忠誠心が高いことで知られている。

 トランプ米大統領が、ここまでクック氏をFRB理事から追い出したいのは理由がある。現時点で7名のFRB理事の中でハト派(トランプ派)とされているのが、ボウマン副議長とウォーラー理事。これにまだ上院で承認されていないが、米大統領経済諮問委員会(CEA)ミラン委員長が来年1月まで暫定的に理事に指名されている。来年5月15日の任期でパウエル議長が議長職とともに理事を辞任すれば、過半数となる4名のトランプ派が占めることになる。しかしながら、パウエル氏が議長辞職とともに理事も辞めるという慣例を破って、2028年1月末まである理事職に居座る可能性が出てきた。トランプ大統領は金融政策もコントロールしたいため、自分の意向を組んでもらえないFRB理事のあら探しで、クック氏の住宅問題を追及している。

 しかもクック氏は民主党支持者というだけではなく、FRB理事の任期満了時期が7人の中で最後になる2038年の1月末まで残されている。同氏が辞任すれば、暫定的なFRB理事就任ではなく、トランプ大統領に対してより忠誠心の高い人物を、長期的に次期理事として任命できる。大統領の思惑通りになれば、FRB独立性が完全に失われるという危機がドルの重しとなるだろう。



(松井)

・提供 DZHフィナンシャルリサーチ