20日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、トランプ米大統領がクックFRB理事に対して「今すぐに辞任すべき」との見解を示したことや米長期金利の低下などにより146.87まで下落した。ユーロドルは米長期金利の低下やFRBの独立性を巡る懸念などから1.1674ドルまで上昇した。
本日の東京外国為替市場のドル円は、明日22日のジャクソンホール会合でのパウエルFRB議長の講演を控えて動きづらい展開の中、FRBの独立性を巡る懸念や米10年債利回りが低下していることで上値が重い展開が予想される。
ドル円のテクニカル分析では、8月1日の高値150.92円から146円台まで下落した後、149円台前半の200日移動平均線が上値を抑える形で、146円台-148円台での保ち合い、フラッグを形成しつつあると思われる。ドル円がフラッグを形成しているとの仮定が正しければ、下放れて、N計算値(150.92円~146.62円~148.52円)による目標値144.22円を目指す展開が予想される。
昨日は、トランプ米大統領が米住宅ローン契約に関して不正疑惑が出ているクックFRB理事に対して「今すぐに辞任すべき」との見解を示したものの、クックFRB理事は「辞任を強要されるつもりはない」と反論している。
トランプ米大統領が尊敬しているレーガン第40代米大統領は、利下げ要求を拒んでいたボルカー第12代FRB議長を追い出すため、4名の刺客をFRB理事として指名したことで、ボルカー第12代FRB議長は辞表を叩きつけた。
現在、トランプ・チルドレン(ウォラーFRB理事、ボウマンFRB副議長、ミランFRB暫定理事)の3名を送り込んでおり、クックFRB理事の代わりに4人目のFRB理事を指名できれば、パウエルFRB議長に対する包囲網が完成する。
パウエルFRB議長は明日のジャクソンホール会合では、雇用市場の低迷を理由に、昨年のジャクソンホール会合同様に利下げ開始を表明して、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.50%の利下げを断行するのか、それともインフレへの警戒感から、「データ次第」と表明するのか注目されている。
パウエルFRB議長は、夏にトランプ関税による物価上昇が顕在化する、と述べていた。
7月の消費者物価指数(CPI)は伸び率が鈍化していたものの、卸売物価指数(PPI)の伸び率が加速していたことは、輸入企業が関税分を転嫁し始めたことで、8月のCPIの伸び率加速の可能性が残されている。7月のFOMC議事要旨では「過半数のメンバーはインフレリスクが雇用リスクを上回ると認識」していたが、パウエルFRB議長が「雇用の最大化」と「物価の安定」のどちらに軸足を置くのか、明晩まで待つことになる。
(山下)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
