10日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、前週分の米新規失業保険申請件数が予想より強い結果となり、米10年債利回りが4.37%台まで上昇したことで146.79円まで上値を伸ばした後、米長期金利が上昇幅を縮小した影響で146.10円台まで押し戻された。ユーロドルは、米長期金利の上昇を受けて1.1663ドルまで下押し後、1.1700ドル前後まで下げ渋った。
本日の東京外国為替市場のドル円は、米10年債利回りや日経平均株価の動向を睨みながらの相場展開が予想される。
昨日のドル円は、9日の米10年債利回りの4.41%台までの上昇に連れた高値147.18円から、4.33%台までの低下に連れた安値145.76円まで下押ししたものの、支持帯となっている一目均衡表・雲の上限145.55円が機能して下げ渋る展開となっている。
本日も、米10年債利回りの動向を睨みつつ、雲の上限を念頭に置きながら相場に臨んでいきたい。
昨日の米国30年債の入札は、前日の10年債入札同様に無難に終わった。
トランプ米政権の看板政策である「大規模な減税・歳出法案」は、超党派機関の米議会予算局(CBO)の試算によれば、米財政赤字を今後10年間に3.3兆ドル膨らませる見込みとなっている。しかし、ベッセント米財務長官が、米金融機関に米国債を購入させるために補完的レバレッジ比率(SLR)を緩和することを示唆したことで、トリプル安(ドル安・株安・債券安)の引き金となりやすい米国債の下値不安が和らいでいることが確認できた。
一方で、米国債にとっての懸念材料は、2011年8月5日の米格付け機関スタンダード&プアーズ(S&P)による米国債格下げショックの再現となることであり、警戒を怠らずに夏相場に臨んでいきたい。
今夜発表される米国6月の財政赤字は335億ドルと予想されており、昨年6月の709.65億ドルの赤字からの赤字幅の減少が見込まれている。背景には、トランプ関税による歳入増があると思われるため、確認しておきたい。
ベッセント米財務長官は、2025年の関税収入が通年で3000億ドルを超えるとの見通しを示しているが、関税を負担しているのは、輸出国ではなく輸入国(輸入業者や消費者)である。
ノーベル経済学賞の経済学者ジョセフ・スティグリッツ氏やポール・クルーグマン氏が「愚挙」と断じるトランプ関税は、いよいよ来月1日から本格的に発動されることになる。
米国の貿易赤字削減を目指したトランプ関税だが、今年1-5月の貿易赤字は5223.75億ドルとなっており、昨年のバイデン政権時の1-5月の貿易赤字3473.40億ドルから50%程度増えている。
昨日はハト派のウォラーFRB理事が「7月FOMCの利下げは検討可能」と述べたが、7月利下げに言及しているのは、ボウマンFRB副議長との二人だけである。
先日のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、次期FRB議長候補にハセット米国家経済会議(NEC)委員長が浮上したと報じ、トランプ米大統領も米連邦準備理事会(FRB)の金融政策を巡り2度ほど会談を行ったとのことである。
FRBの金融政策を巡るリスクシナリオは、次期FRB議長にFRBに対して利下げ圧力をかけ続けているハセットNEC委員長が指名され、影のFRB議長としてパウエルFRB議長をレームダック化させることとなる。
(山下)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
