
昨日は複数のECB高官から、為替水準についてコメントが見受けられた。シムカス・リトアニア中銀総裁は「ユーロ上昇のスピードを注視する必要」、ナーゲル独連銀総裁からは「ユーロは対ドルで特別に高い水準ではない」との見解が示された。ミューラー・エストニア中銀総裁は「ユーロの上昇は速いが、今のところ特に気にする必要はない」と述べ、慌てる必要がないというスタンスが目立った。
デギンドスECB副総裁も「ユーロドルは1.17ドルで十分許容できる」と発言。ただし「1.20ドルでも無視できるが、それ以上になると複雑になる」と警戒感もにじませてきた。そういったなか本日は、欧州中央銀行(ECB)の金融政策決定において重要な役割を担うレーン専務理事の発言が市場の注目を集めそうだ。
なお、昨日発表された6月ユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値は前年比+2.0%、同コア指数も+2.3%と市場予想に沿った結果だった。結果発表の数時間後、ラガルドECB総裁の発言「責任を全うしたとはいえないが、目標には到達」が伝わった。
ユーロドルの値動きはユーロ高というだけでなく、ドル安でもある。主要通貨に対するドルの値動きを示すドルインデックスは昨日、96.38まで低下した。今年一番高かったところからだと、約12.5%の下落率だ。
前述したトランプ米政権がFRBに利下げ圧力を強めていることが、米金利先安観というだけでなく、中銀の独立性への懸念も相まってドル安要因とされている。また、米上院が僅差で可決した大規模なトランプ減税・歳出法案も、ドルにとってネガティブと受けとめられているようだ。一部試算によるとこの法案は、今後10年間で約3兆3000億ドルの財政赤字の拡大につながるもよう。米国発の材料も気にかけておくべきだろう。
想定レンジ上限
・ユーロドル、2021年9月8・10高値1.1851ドルを超えると同月3日高値1.1909ドル
想定レンジ下限
・ユーロドル、6月30日安値1.1708ドル
(小針)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ