
米WSJ紙のフェドウォッチャー、ニック・ティミラオス氏いわく、トランプ大統領による金利引き下げ圧力は近代史においてほとんど前例のない激しさだという。その大統領に対して、パウエル氏がどのように考えているかも興味深い。
昨日の米下院金融サービス委員会においてパウエルFRB議長は、9月利下げの可能性に言及したものの、基本的には「追加緩和に対する慎重な姿勢」、「関税によるインフレリスクへの懸念」、そして「労働市場の堅調さ」を強調した。ただし、議長任期が1年を切ったパウエル氏の影響力が、米連邦公開市場委員会(FOMC)内で弱まっているのは気にすべきところだろう。
先日、トランプ大統領が1期目のときにFRB理事に指名した2人(ウォラー氏と現在は銀行監督担当の副議長ボウマン氏)が、7月利下げに言及した。注目すべきは、これまでタカ派として知られていたボウマン副議長が、インフレ上昇よりも雇用低迷リスクへの懸念を表明したこと。FOMCで金利据え置きを決定した直後の発言なだけに、政策担当者の間で溝が出来ていることが容易に想像できる。
今後パウエルFRB議長にとっては、政治と経済リスクの均衡を保つため、今以上に努力が必要となりそうだ。トランプ政権からの圧力がさらに強まり、金融当局の独立性が揺らいだ場合は単純に考えるとドルにとってはネガティブだろう。
パウエルFRB議長が懸念している関税についてだが、トランプ大統領が設定した貿易協定締結の期限7月9日が迫ってきた(中国については8月半ばまで)。現時点で米国と合意したのは英国のみ(鉄鋼アルミ関税は未解決)だが、欧州連合(EU)、そして日本については話し合いが継続中。まだ中東情勢が不安定だとは言え、今後はトランプ関税を巡る報道に市場の目が向くのではないか。
想定レンジ上限
・ドル円、24日の高値146.19円
想定レンジ下限
・ドル円、18日の安値144.34円
(小針)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ