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【見通し】NY為替見通し=地政学リスクとトランプトレードの見極め、カナダCPIにも注目

本日の欧州時間は欧米長期金利が急低下し、市場流動性が悪いこともありドル円は153.29円まで急落した。ウクライナが射程の長いミサイルATACMSを使用してロシア領内を攻撃したこと、これに対する報復措置としてロシアが核攻撃を示唆していることで、安全資産とされる債券に買いが集まっている。

 ただ、NY時間のドル円は引き続き神経質な値動きとなるだろうが、このままドル売りトレンドが継続するかの判断は難しそうだ。ウクライナとロシアの緊張感が大幅に増していることで、リスク回避の動きは円買いに動きやすい。しかしながら、両国の緊張がこれ以上高まらなければ、トランプトレードやパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長がこれまでよりも利下げに対する消極的なスタンスを先週見せて以来の「ドル買いトレンド」が再開する可能性もある。円買い・ドル買いの両面でのリスクが大きいことで、他通貨と比較し円がらみの取引はNY時間も激しくなることが予想される。

 なお、本日は米国からは住宅指標が発表される程度で、週後半21日には雇用指標(前週分の米新規失業保険申請件数と失業保険継続受給者数)、22日には11月の各種購買担当者景気指数(PMI)速報値が発表されるなど、市場の注目度が高い経済指標が週後半に集中している(なお、20日には半導体大手エヌビディアの決算も発表予定)。今回のドル売りで積極的にリスク回避の動きになるか、ポジション調整の域に収まるかは、これらの週後半の米経済指標などを含めて判断する必要がありそうだ。

 また、この数日は米メディアが取り上げられている話題の中心は、第2次トランプ政権の次期財務長官に誰が指名されるかになっている。カンター・フィッツジェラルドのCEOハワード・ラトニック氏、投資家のスコット・ベセント氏、元FRB理事のケビン・ウォーシュ氏、資産家のマーク・ローワン氏、テネシー州選出の共和党上院議員ビル・ハガティ氏などの名前が挙がっている。ラトニック氏やベセント氏は兼ねてから高関税の導入を支持していることもあり、両氏のいずれかが指名された場合は再びトランプトレードに戻る可能性もありそうだ。

 米国の経済指標は注目度の高いものは発表されないが、本日はカナダから10月の消費者物価指数(CPI)が発表されることで、カナダドルの値動きには要注目。9月分のCPIは1.6%増まで鈍化し、2021年2月以来の低い伸び率を記録した。この影響もあり、カナダ中銀は先月50ベーシスポイント(bp)の利下げを決定した。今回発表されるCPIは、12月の中銀会合を前にした最後のインフレ指標発表になることで、先月同様に弱い結果となった場合は2会合連続で50bpの利下げに傾く可能性もありそうだ。なお、市場予想は前年比1.9%増、トリム値は2.4%増となり、現時点では25bpの利下げが織り込まれている。

・想定レンジ上限
 ドル円の上値めどは、これまでの本日高値154.67円。その上は18日高値155.36円。
 カナダドル円の上値めどは、本日高値で日足一目均衡表・転換線も位置する110.39円。

・想定レンジ下限
 ドル円の下値は、これまでの本日安値153.29円。その下は日足一目均衡表・基準線152.80円。
 カナダドル円の下値めどは、15日安値109.26円。その下は90日移動平均線108.32円。


・提供 DZHフィナンシャルリサーチ