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【市場概況】東京為替見通し=東京勢不在で神経質な動きか、アジア通貨買いがドル円の重し

先週末の海外市場でのドル円は、日銀政策決定会合後の植田日銀総裁の会見で利上げを急がないややハト派寄りとの姿勢を示した流れを受けて一時144.49円と4日以来の高値を更新した。ただ、NY時間では週末を控えたポジション調整目的の売りなどもあり143円後半まで下押しした。ユーロドルは米長期金利が上昇すると一時1.1136ドルまで下落した。しかし、ウォラー米連邦準備理事会(FRB)理事が「雇用市場が悪化すれば、再び0.50%の利下げの検討あり得る」「データが軟調になれば、利下げペースが速まる可能性がある」と話したことで1.1176ドル付近まで持ち直した。

 本日のドル円は神経質な動きになりそうだ。7月の日銀政策決定会合後の植田日銀総裁の会見以来、日銀の正副総裁の発言で金融市場は激しく上下を繰り返している。このことについて植田総裁も先週の政策決定会合後の会見で自ら「情報発信をもう少し丁寧に、場合によっては少し頻繁にできるといいと考えている」と、これまでの会見で市場が大きく動意づいたことへの反省とも捉えられる発言をした。東京市場が秋分の日の振替休日で休場ということもあり、本邦からは市場を動意づけるニュースや発言も期待できないことで、先週の堅調な流れを引き継いで本日のドル円は、下値がある程度は買い支えられると予想する。

 一方で、円の売り仕掛けをするにもリスクが高そうだ。今回の植田総裁発言は、おそらく7月の会見で日経平均が暴落したことや、為替市場で円安が急速に進んだことを修正したのだと思われるが、それ以外にも27日に行われる自民党総裁選が絡んでいることも指摘されている。総裁選の有力候補の一人でもある高市早苗経済安全保障担当相は「金融緩和を我慢強くやらなければ、また元のデフレ状態に後戻り」と日銀の引き締め政策に反対している。総裁選を前に、植田総裁が慎重な発言を述べざるをえなかったとの意見も多くみられる。また、今回の声明文では「消費者物価について基調的な上昇率が徐々に高まっていく」と指摘している点を考えると、日銀が今後も利上げスタンスを変える状況ではないことで、今回の植田日銀総裁の会見だけでは円を積極的に売るのも難しいだろう。

 また、本邦投資家は円相場にばかり目が移っているが、先週末はタイバーツ、マレーシア・リンギ、インドネシア・ルピア、シンガポール・ドルなどのアジア通貨が軒並み年初来高値(ドルの年初来安値)を更新している。仮に日銀の利上げ路線がこれまで市場が予想していたほど急速なペースで進まない場合でも、日銀と米連邦準備理事会(FRB)の金融政策の方向性の違いは変わらないことで、他のアジア通貨同様に海外ファンド勢はドル売り・アジア通貨買いを継続することも大いに考えられることで、ドル円も同様に上値では売りが出てくることが予想される。

(松井)

・提供 DZHフィナンシャルリサーチ