7日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、5月米非農業部門雇用者数が前月比27.2万人増と発表され、米10年債利回りが4.4335%前後まで上昇したことで、157.08円まで上昇した。ユーロドルは1.0800ドルまで下落した。ユーロ円は169.97円から169.08円付近まで下落した。
本日の東京外国為替市場のドル円は、米5月雇用統計の結果を受けて堅調推移が予想されるものの、週末の日銀金融政策決定会合での金融政策正常化への警戒感から上値は限定的だと思われる。
8時50分に発表される1-3月期実質国内総生産(GDP)改定値では、速報値のマイナス成長からプラス成長に上方修正されるか否かに注目しておきたい。
実質賃金が25カ月連続で前年比マイナス圏で低迷し、GDPもデフレギャップを抱えたマイナス成長の状況では、今週の日銀金融政策決定会合での金融政策正常化は「時期尚早」(中村日銀審議委員)という見解も聞かれている。
米5月の雇用統計は、事業所調査(データ数:12万)の米非農業部門雇用者数は前月比+27.2万人だったが、家計調査(データ数:6万)の失業率は4.0%、就労者数は▲40.8万人となり、エコノミストの間ではどちらが労働市場に関する正確なシグナルなのかという議論が起きている。
米労働省労働統計局(BLS)のデータによると、昨年の雇用者数の伸びは月間雇用統計に基づく平均の約25.1万人よりも、毎月平均で約6万人少なかった可能性があるとのことである。そして、昨年、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、起業・廃業モデルなどを理由に、事業所調査が労働市場の実情を過大評価している可能性が高い、と報じていた。一部の分析によると、2023年下半期に廃業が急増したことで、年間で73万人の過大評価だった可能性が報じられており、8月の年次改定での下方修正に警戒しておきたい。
しかし、米連邦公開市場委員会(FOMC)は、事業所調査による非農業部門雇用者数を重視して、金融政策を運営してきているため、米10年債利回りは4.43%台へ上昇し、ドルは全面高となっている。
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」での利下げ開始は、雇用統計発表前の9月FOMCから11月FOMCとなり、12月FOMCでは据え置きが見込まれており、年末のFF金利誘導目標は5.00-25%となっている。
明日からのFOMCは、ドット・プロット(金利予測分布図)での利下げ開始時期の先送りや年内の利下げ回数がこれまでの3回から1-2回に減る可能性に注目することになる。
本邦通貨当局は、4月29日と5月2日によるドル売り・円買い介入(9兆7885億円)を実施したが、その原資は、2022年秋と同様に、米国債の売却だったことが判明した。
2024年5月末の外貨準備は前月末比474億ドル減の1兆2316億ドルとなった。外貨預金は、1589億ドルで4月末の1577億ドルから12億ドル増加していた。証券残高(※米国債)は、9275億ドルで、4月末の9780億ドルから505億ドル(x158円=7.97兆円)減少していた。財務省は、証券の減少率(5.2%減)は過去最大と表明している。
本邦通貨当局は、4月29日(推定約5.6兆円)の第1弾介入を159円台、第2弾介入と5月2日未明(推定約4.1兆円)の第3弾介入を157円台で行ったと推測される。しかし、イエレン米財務長官が為替介入に対して幾度も釘を刺して以来、157円台での円買い介入は見送られている。
鈴木財務相は、先週末に「為替介入は抑制的に行われるべきものと考えている。急激な変動には、それをならす行為が必要。今後も為替市場を注視し、必要に応じて万全の対応をとる」と述べており、本日、ドル円が157円台後半へ上昇した場合には警戒しておきたい。
(山下)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
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