16日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、一部FRB高官のタカ派発言で154.79円まで上昇し、1990年6月以来約34年ぶりの高値を更新した。ユーロドルは1.0654ドルから1.0601ドルまで下落した。
本日の東京外国為替市場のドル円は、155円のノックアウト・オプションの攻防戦に注目。また、同水準を巡る本邦通貨当局のドル売り・円買い介入の可能性に警戒する展開か。
本日からワシントンでG20財務大臣・中央銀行総裁会議が開催され、合わせて日米韓財務相会談も予定されており、円買い介入の司令塔である鈴木財務相と神田財務官が不在となる。しかしながら、155円が本邦通貨当局の防衛ラインならば、円買い介入が断行される可能性があるため、警戒しておきたい。
神田財務官は、円買い介入の大義名分として、投機的な円売りとボラティリティー抑制を挙げている。2022年秋の円買い介入に対して、イエレン米財務長官は「ボラティリティーを滑らかにするスムージングが目的であれば、理解できる」との認識を示していた。ボラティリティーの拡大を示すボリンジャー・バンド+2σは、本日154.55円付近に位置している。
ドル円は、1990年以来34年ぶりの高値を更新し続けている。そういったなか米商品先物取引委員会(CFTC)のデータでは、ヘッジファンドなど投機筋によるネットの円売り越しは162151枚(x1250万円=約2兆円)と、2007年6月26日以来(188077枚)17年ぶりの高水準だ。当時の円・キャリートレードの残高は約23兆円だった。
2007年6月当時のドル円は124.14円を高値に反落して、2011年の変動相場制移行後の安値75.32円まで下落していった。背景には、米国のサブプライムローンの崩壊、リーマンショック、東日本大震災などが挙げられる。
一方で現状のドル高・円安は、米連邦公開市場委員会(FOMC)による利下げ開始時期の先送り観測と日銀のゼロ金利という緩和的環境の長期化観測という日米金融政策のファンダメンタルズが背景にある。
しかしながら、ヘッジファンドなど投機筋による円売りもあることで、本邦通貨当局がドル売り・円買い介入に乗り出す可能性には警戒しておきたい。
IMM通貨先物の投機的な円売り持ちポジション(約2兆円)は、投機筋の全体のポジションの氷山の一角に過ぎない。しかしながら、2022年秋の3回の円買い介入金額(9兆1880億円)に比べると、「勝つ介入」を目指しているらしい神田財務官に分があるように思える。なお一部資料によれば、円・キャリートレードの残高は2月末時点で約11.5兆円となっている。
一部の市場筋は、神田財務官が介入に踏み切る「神田ライン」は、過去28日間の安値から10円上昇した水準(本日は156.49円=146.49円+10円)付近ではないか、と推測している。また、ドル円の上昇チャネルの上限は、本日156.54円に位置している。
(山下)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
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