
本日の東京外国為替市場のドル円は、多くの企業による満額回答を受けた春闘の第1次集計結果を見極めて、来週18-19日の日銀金融政策決定会合での金融政策正常化の度合いを探る展開が予想される。
昨日のニューヨーク市場では、「日銀は来週18-19日に開く金融政策決定会合で、マイナス金利政策を解除する方向で調整に入った」「長期金利を0%に誘導する長短金利操作(YCC)の撤廃を含めて、大規模金融緩和の正常化に踏み切ることを検討」と報じられた。
すなわち、春闘の結果を受けて、「賃金の上昇を伴う形」での2%の物価目標を安定的に達成できる確度が高まりつつあることで、マイナス金利やYCCの解除の是非についてより踏み込んだ議論が行われる公算が高まっている。
ドル円は、米国2月の消費者物価指数(CPI)や卸売物価指数(PPI)を受けて、米連邦準備理事会(FRB)による利下げ開始時期が先送りされつつあることで、日足一目均衡表・転換線148.52円を窺う堅調推移となっている。
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.25%の利下げ開始確率が57%程度へやや低下、年内の利下げ回数は3回のままとなっている。
19日の日銀金融政策決定会合の結果では、マイナス金利やYCCが解除されることは、ほぼ織り込まれつつある。
メインシナリオは、内田日銀副総裁が示唆したように、緩和的な金融環境が維持されていくことになった場合であり、ドル円は、マイナス金利解除の「思惑で円買いを仕掛け、事実で手仕舞う」ことになり、150円方向に向けた上昇トレンドが再開するのかもしれない。
リスクシナリオは、植田日銀総裁の発言「デフレではなくインフレの状態」に示唆されるように、インフレ目標2%に向けた断続的な利上げの可能性が示された場合となり、ドル円は145円方向に向けた下落トレンドが再開するのかもしれない。
春闘に関する市場予想の中心は3.85%(定昇1.7%、ベア2.15%)前後となっており、30年ぶりの高い水準となった去年の3.58%(推定:定昇2.0%弱、ベア1.58%前後)を上回ることが見込まれている。ある試算によると、個人消費を左右する実質賃金をプラスにするには3.6%の賃上げが必要になるとのことで、今年の実質賃金はプラス圏に浮上する可能性が高まっている。
(山下)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ