外国為替市場ではここ数週間、低金利国通貨の円の上値が切り下がっている。対ドルも例外ではない。原油高などで投機マネーの一部が拡大する中、国際的な信用収縮がなおも小康状態を保っているためだ。欧米勢が借り入れベースで運用資産を増やす「レバレッジ投資」を総じて抑え、リスク許容度が悪化しづらい構図になった点も見逃せない。
レバレッジ比率の低下は金融派生商品(デリバティブ)の分野で主に進んでいるもようだ。米国のサブプライム(返済能力の低い個人)向け住宅ローン問題発の混乱を誘発したとの反省からだ。例えば英HSBCホールディングスの経営幹部は5月30日に開いた株主総会で、「高レバレッジへの傾斜モデルはもはや受け入れられない時代だ」と指摘。成長よりも安定重視の施策に注力する姿勢を示した。
また、ある大手投資銀は4—6月期のレバレッジ倍率が2—3倍程度緩むとの見通しを明らかにした。
資産膨張型のビジネスは自らに有利な市場環境が持続した場合に強みを発揮する半面、反動には極めてもろい。差損回避(ヘッジ)の規模やリスクも大きく、不調に終われば傷口を広げてしまうことになりかねない。2007年秋以降、欧米金融機関のサブプライム絡みの損失が膨らんだ局面でもヘッジ戦略の失敗が響いた。
そもそも資産担保証券(ABS)やレバレッジド・ローン(合併や買収のさいに利用される貸し出しで被買収企業の不動産やキャッシュフローをテコにしたもの)債権の一部のように適正価値の把握が困難で、格付け会社の評価が揺れがちな商品は融資の担保になじまない。「相場の右肩上がりを前提にした銀行・証券や投資ファンドの動きはバブルといっていい」(欧州系証券の債券ストラテジスト)。「脱レバレッジ」は当然の帰結といえる。
金融セクターにとってデリバティブ関連での収益先細りは痛手。だが不透明な部分を取り除くことで守りやすさが増す。各国の流動性対策や米低金利政策が続いているうちに体勢を立て直すことも可能だろう。株式や外為市場では「マネー収縮の最悪期は過ぎた」との声が依然として多いようだ。(今 晶)
2008年6月10日(火)13:22