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日本が見捨てられる日(後編)〜ハイパーインフレに備える資産運用〜藤巻健史(経済評論家・フジマキジャパン代表)

f:id:navimedia:20200915153139j:plain撮影:椋尾 詩

日銀の異次元緩和にもかかわらず、円安は進まず、経済が成長しなかった理由を伺った中編に引き続き、最終回となる後編では、現在、日銀が直面している状況と、その先に待ち構えているもの、そのときに個人投資家が取るべき対処方法について、藤巻氏が解説した。

以下の取材記事は、個人のご経験やお考えに基づくものです。その内容について当社が保証するものではありません。実際のお取引については、充分内容をご理解のうえご自身の判断にてお取り組みください。

 

▼目次

1.もし日銀が破綻したら・・・
2.ハイパーインフレに備える資産運用
3.日本が見捨てられる日

media.gaitame.com

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もし日銀が破綻したら・・・

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編集部:
クラッシュ後の大改革とはなんですか?
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藤巻:
まず国の実力に連動した為替になるように構造改革をすることです。そして、日本がこんなに低迷した原因は、民間に任せればいいことまで政府がやってきたからだと思うので、民間でできることは、民間でやるように切り替えることです。
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編集部:
大きい政府ではなく小さい政府になるということでしょうか?
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藤巻:
政府が何かする場合の財源は税金です。足りない分は借金です。借金をすれば、将来の税金が増えます。毎年使うお金の量が一定とすると、政府が使うか、民間が使うかの二択ですから、政府がたくさん使えば、民間が使うお金が減り、民間がたくさん使うと、政府の使うお金が減ります。今の日本は、政府がたくさん使いすぎて、そのままにしているから、将来返さなきゃいけない借金がどんどん増えるのです。

他国と比較して、借金がずば抜けて多い理由です。本当の資本主義を実現し、日本の名目 GDP成長率 は伸ばし、税収を増やしましょう。今の日本の学力は、5段階評価の1なのに為替と言う通信簿で5がついているから、おかしなことになっているのです。いずれ “ガラガラポン”が起きれば、大きな改革が行われるでしょう。日本人は勤勉で優秀ですから、きっと大丈夫です。
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編集部:
ガラガラポンとは中編でも言及されたクラッシュのことですね。何がきっかけになるでしょうか?
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藤巻:
そのためには大きなイベントが必要なのですが、私は「日銀破綻」もひとつの有力な候補だと思っています。今の日本円は紙クズになってもおかしくない状況だと思っていますから。
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編集部:
中央銀行の倒産とはなかなか穏やかではないですね
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藤巻:
借金が膨れ上がった状態で、財政ファイナンスを続ければ、ハイパーインフレにならざるを得ません。この100年間で、私たちはハイパーインフレを3回経験しています。第一次世界大戦後、第二次世界大戦後、そして金本位制を放棄したことによる1980年代のハイパーインフレです。1回目と2回目は供給が原因でしたが、

3回目は“節操”のない国でハイパーインフレが起きました。私から言わせれば、今の日本がまさにそれです。
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編集部:
ただハイパーインフレが起きたら退治しなければなりません。
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藤巻:
ハイパーインフレの解決方法は3つです。まず、現在のベネズエラがやっているように、自国通貨を放棄して健全なドルに切り替えてしまう方法。自国通貨を捨てて、他国の通貨に切り替えるのは、ちょっと国としての威厳に関わるので、できればやりたくないですよね。続いて日本が昭和2年と21年に実施した預金封鎖と新券発行です。

最後は、第二次世界大戦後にドイツが選択した方法ですが、「ライヒスバンク」という中央銀行を潰して、新しく「ブンデスバンク」という中央銀行を作り、ライヒスマルクは紙切れになってドイツマルクを新通貨として流通させて、ハイパーインフレを沈静化させたというものです。
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編集部:
もし日銀が破綻したときに、国はどのような選択をすると思いますか?
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藤巻:
1)他国通貨への切り替えと、

2)預金封鎖という選択はしないと思っています。

昭和21年に預金を封鎖して新券を発行しましたが、その時はまだ明治憲法下でした。明治憲法でも私有財産権は認められていましたが、現在の憲法と比較すると、かなり強引なことが可能でした。しかし、今の世の中で、旧券を紙クズにして新券発行となると、後々、大きな問題に発展する可能性があります。ですので、日銀を倒産させて、新しい中央銀行を設立する方法が憲法違反にならないんじゃないかなと思います。
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編集部:
資産を銀行預金でばかり持っている人からは文句が出そうです
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藤巻:
今、市中に流通している円は日銀の負債です。かつて大手証券会社が倒産してしまったことがあります。しかし、証券会社が潰れて、預けていた資金がなくなったからといって、証券会社が個人の私有財産権を侵害したという話にはなりません。会社が倒産して負債がなくなるのは当たり前ですから、これなら憲法違反にならないんじゃないかと思います。

やはりドイツ方式を採用するのが現実的でしょう。古い中央銀行は新しい中央銀行から資本投入されて、残務整理機関となり、「旧中央銀行の“福沢諭吉”100枚と新中央銀行の“渋沢栄一”1枚を交換します。今後、中央銀行の仕事は新中央銀行が行います」みたいなやり方になると思います(笑)。
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編集部:
日銀倒産というシナリオが現実に起こるとしたら、きっかけはなんでしょうか?今回のコロナ禍はどうでしょうか?
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藤巻:
私は「コロナだから危ない」とは言っていません。すでに日銀の借金が大きくなりすぎているから危ないと言っています。それ以上に深刻なのが、長年ディーラーをしてきた私から見ると、今の日銀は中央銀行がやってはいけないような禁じ手ばかりをやっています。多くの人から「フジマキが『中央銀行が潰れるぞ』なんて過激なことを言っている」と言われています(笑)。

しかし、私に言わせれば、「フジマキが過激なのではない、日銀が過激なのだ」ということです(笑)。金融理論を学び、経験を積んでき人間から見れば、今の日銀がやっていることは、100倍も1000倍も過激です(笑)。

ハイパーインフレに備える資産運用

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編集部:
3月発売の書籍「日本破綻寸前」(幻冬舎)の中で、日本と同じポジションを持つのが正解だと書かれていました。コロナ禍を経験してもその考えに変わりはありませんか?
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藤巻:
まず、ドルで資産を持つという考えに変わりはありません。ただし、長期のものは避けて下さい。今はゼロ金利ですが、僕は過去に金利の高い時期も経験しています。1980年のアメリカの長期金利約20%(FF金利 19%)というような時代も見ています。当時、日本の長期金利も11%ありました。それぐらいに金利が上がることは十分にあるんです。
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編集部:
中期国債ファンドが8%で、みんなが買っていた時代ですよね?
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藤巻:
そうです。1980年は異常だったけれど、今も異常ですから(笑)。いずれ長期金利が跳ね上がるでしょう。ドル資産で保有していた場合、為替で大儲けできるかもしれませんが、ドル資産の長期保有は勧めません。なるべく短期にしましょう。
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編集部:
ドル建て資産だけで大丈夫でしょうか?
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藤巻:
以前は不動産もいいかなと思っていました。金融機関から借金して不動産を購入します。ただ、それだけでは不安なので、ドル建ての金融資産を持ってリスクヘッジをしておくという考え方でした。しかし、もし本当にクラッシュが起きたら、物件を借りている会社が倒産したり、個人が失業したり、家賃がもらえなくなる可能性があります。その可能性が高まっていると思うので今は「様子見」でしょうか。
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編集部:
他には何かありますか?
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藤巻:
ハイリスク・ハイリターンで、金融の素人にはちょっと難しいかもしれませんが、私は長期金利が暴騰すると思っていますから、国債のプットオプションですね。FXもそうですが、かなりout of the moneyのドルコール/円プットポジションも面白いかと思います。
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編集部:
海外の金融資産はすべてドル建てがいいということですか?
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藤巻:
私に言わせれば、日本円が大暴落して紙クズになる可能性があるので、その事態に備えるにはドルでしょう。ドルは世界の基軸通貨であり、世界で一番強い通貨です。軍事、政治、経済において、やはりアメリカはまだナンバーワンなんです。グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、“GAFA”はみんなアメリカ企業です。シェールガスも手に入れました。新型コロナのワクチンも開発し海外に販売しそうです。やはりアメリカは強いと思います。
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編集部:
FX投資家に何かアドバイスはありますか?
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藤巻:
私はディーラー時代、長期売買しかしませんでしたが、短期売買をされている方なら、今は短期で円を売ってドルを買い、後にドルを売って円を買い戻すことを繰り返すべきでしょう。

ドル/円の「売り」ポジションですと、下がったときに持っていかれて、大損をします。もし日銀破綻なんていうニュースが出たら、1ドル=107円が、一瞬で1000円になるかもしれません。
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編集部:
短期のショートポジションですね。
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藤巻:
あまりレバレッジを効かせずに、金融資産は常に外貨で持っておくことが大切だと思います。もしフジマキの予言通りにならなかったとしても、それは日銀が破綻しなかったわけで、日本国民にとってはいいことじゃないですか。「保険」だと思ってください。日銀が破綻したときに、ドルを持ってなかったら、おそらく生活ができません。

逆に1ドル=107円が100円や90円と円高になって損したとしても、保険を払っただけなのだと割り切って欲しいですね(笑)。

日本が見捨てられる日

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編集部:
日銀破綻を見抜く方策はありませんか?
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藤巻:
一番気にしなければいけないのは国債の長期金利です。平成19年度(2007年度)に保有していた国債の平均利回りは約0.25%です。今回のコロナ禍で前年度よりも90兆円近く歳出を増やしました。つまり、コロナのせいで国債をさらにたくさん買ったわけです。また今年度は金利が付いていた50兆円以上の国債の満期が来て、ゼロ%の利回りの国債に置き換わります。

つまり、保有国債の利回りはどんどん下がっているわけです。これがどういう意味を持つかと言えば、もし長期金利が0.3%になったら、日銀は評価損を抱えてしまうわけです。その結果、日銀は債務超過になるかもしれません。これについて日銀は「簿価会計だから大丈夫」と主張していますが、あくまでも日銀の論理であって、投資家の論理ではありません。もし、簿価会計で大丈夫なら、リーマンブラザーズだって、山一證券だって、潰れませんでした。会社は時価会計で評価しなきゃいけないんです。

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編集部:
簿価会計で経営状況を評価している民間企業はありませんね。
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藤巻:
私が勤めていたJPモルガン銀行では、「簿価会計」で取引先企業を評価しようだなんて誰も言わないし、絶対にやりません。ここで重要なのは、外国資本が日銀をどのように評価するのかということです。今の日銀の財務状況を見て、日銀との取引は止めようという外資が出てきてもおかしくありません。そうなると、外国の銀行と日本の銀行の取引ができなくなります。

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編集部:
どうして取引ができなくなるんですか?
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藤巻:
銀行間の為替取引は、すべて中央銀行の当座預金口座でやり取りするからです。例えば、JPモルガン銀行が日銀の当座預金を廃止すると、日本の銀行はJPモルガン銀行とドル/円での取引ができなくなります。JP モルガンは日銀口座がなくなるので、円の受け取りが出来なくなりますから、対価のドルなど売ってくれません。
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編集部:
そのときにどのようなことが起きるのでしょうか?
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藤巻:
日銀が評価損を抱え、債務超過になり、外国資本が日銀に対するクレジットライン を落としたら、国債や為替の取引はできなくなります。そうなると円は基軸通貨であるドルとリンクしない“ローカル通貨”になってしまうでしょう。円は暴落して、ハイパーインフレが起きざるを得ない。

だから、私たちが今一番心配しなきゃいけないことは、長期金利が0.3%を超えるのか、超えないかということです。私のディーラー時代には0.3%の上昇なんて、アッという間に起こりました。それが一時的であればいいのですが、恒常的な評価損が発生する可能性は大きく、長期金利が上がり続けることもあり得ます。すると評価損はドンドンと膨れ上がってしまいます。中央銀行というのは、株もそうですし、長期国債もそうですが、評価損になるような資産は絶対に買っちゃいけないんです。評価損が発生すれば通貨が暴落するからです。

残念なことに、今の日銀は危ない“ジャンクフード”ばかり食べてしまっている。円は世界で一番ぜい弱な通貨かもしれません。
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編集部:
日銀に対する外資の評価が鍵を握りそうですね。
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藤巻:
日銀に対する外資の評価が、ハイパーインフレのきっかけになるかもしれません。私が働いていたころ、日本国内でのJPモルガン銀行の年間利益は300億円程度でした。他の外資系金融機関も、それほど儲かっていないと思います。裏を返せば、日本に絶対いなきゃいけないことはないんです。

つまり、外資が日本を見捨てる可能性は十分にあるということです。本当に見捨てられたとき、日本円は単なるローカル通貨に成り下がるのか。目先の材料で「上がった」「下がった」と相場の動向を気にするよりも、日銀がどうなるのか、日本経済がどうなるのかを、ディーラーや個人投資家には考えて欲しいと思っています。

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藤巻健史氏
1950年東京生まれ。一橋大学商学部卒業後、三井信託銀行に入行。1980年に米ノースウェスタン大学大学院でMBAを取得。1985年米モルガン銀行に入行、ディーラーとして成績を高く評価され、1995年に東京市場では唯一の外銀日本人支店長となる。モルガン銀行会長から「伝説のディーラー」とのタイトルを受けた。2000年に同行を退行後、ジョージソロス氏のアドバイザーなど務め、2013年〜19年(1期)参議院議員として活動した。現在はフジマキ・ジャパン代表取締役