
ドル/円の10月見通し 「日米ともに利上げ見送りへ、次回は12月の公算」
執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 シニア為替アナリスト 神田卓也
ドル/円 の基調と予想レンジ
基調
もみ合い
予想レンジ
155.000~160.250円
ドル/円9月の推移
9月のドル/円相場は152.887~160.389円のレンジで推移し、月間の終値ベースで約1.5%下落した(ドル安・円高)。前月の上昇の流れを引き継ぎ、2日には160.39円前後まで上昇する場面もあったが、高田日銀審議委員が「連続利上げ」の可能性に言及したことなどから下落に転じた。続く3日には米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事が「利上げ見送り」を支持する考えを示したことから155円台に下落した。その後も上値は重く、7日には節目の155円を割り込んだことで下げ幅を拡大。8日には152.89円前後まで下値を広げ、2月以来およそ7カ月ぶりの安値を付けた。しかし、10日の米8月生産者物価指数(PPI)が上振れしたことをきっかけにドルが反発。米連邦公開市場委員会(FOMC)が約3年ぶりに利上げを決めた16日には、ウォーシュFRB議長のタカ派発言もあって156円台を回復した。18日は日銀が6月以来の利上げを決めたものの、2人の委員がこれに反対したことなどから円売りが強まると、一時158円台に乗せた。同日のNYタイムには日銀が「レートチェック」を行い市場の動きをけん制したが、その後もドル買い・円売りの流れは変わらず24日には159円台にタッチした。ところが、25日には日米首脳が「円の過小評価」について懸念を共有したことから反落。月末にかけて156~157円台でのもみ合いとなり157.42円前後で取引を終えた。
ドル/円 日足チャート

ドル/円9月の四本値
始値 159.707 高値 160.389 安値 152.887 終値 157.420
9月振り返り
| 日付 | 内容 |
|---|---|
| 1日 | 米財務省は、G20会議に先立ってベッセント長官が植田日銀総裁と行った会談の内容を公表。長官は「円の大幅な過小評価に対処するため、日本が断固とした市場・金融政策上の措置を講じることを強く支持する」と表明した。「円安が日本のインフレ圧力を高める一因にもなっている」と指摘した上で「インフレ期待の安定や過度な為替変動の回避には『適切な金融政策の策定と発信』が肝要だ」と訴えた。 |
| 2日 | 日銀の高田審議委員は、一般論と前置きした上で、内外の環境が変わり得るという先行きを展望した場合、これまでのような25bp(0.25%ポイント)の利上げ幅が「必ず決まっているというものではない」と述べた。また、年2回のペースでの利上げは「従来の発想」であり、「結果として、局面が変わるなら連続利上げということも、もしかしたらあり得る」と話した。 |
| 3日 | 米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事は「適切な政策スタンスに関する自分自身の判断は、8月のインフレ動向から得られる情報に大きく左右される」とし、「(インフレ率が)2%目標に向けて進展し続けていることが確認できれば、政策金利を現行水準に据え置くことを支持する用意がある」と語った。その上で「エネルギー価格の上昇や関税は、現時点では持続的なインフレ圧力の重要な源泉とは見ていない」との見解を示した。 |
| 4日 | 米8月雇用統計で非農業部門雇用者数は16.2万人増と市場予想(5.5万人増)を大幅に上回った。6月と7月の雇用者数が合計で5.5万人分上方修正されたこともあって、3カ月平均の増加幅は7.1万人となり、前月7月時点の3.8万人から拡大した。このほか、8月の失業率は4.1%で予想通りに前月から横ばい。労働参加率は61.6%に上昇した(予想61.5%、前月61.4%)。平均時給は前月比+0.3%、前年比+3.1%と予想通りで、前年比の伸び率は前月から0.1%ポイント鈍化した。 |
| 9日 | ベッセント米財務長官は「円相場に介入する場合、私には明確な見通しがある」と語り、「今は私が胴元だ。円相場について私に反して賭けてみればいい、私には『非対称な』情報がある」と強調。他国通貨に関して異例の口先介入を行った。 |
| 11日 | 米8月消費者物価指数(CPI)は前月比+0.4%と予想通りだったが、食品とエネルギーを除いたコアCPIは+0.3%と予想(+0.2%)を上回った。前年比では総合が+3.4%(予想、前月ともに+3.4%)、コアは+2.4%(予想+2.4%、前月+2.5%)の伸びとなった。 |
| 16日 | 米連邦公開市場委員会(FOMC)は予想通りに政策金利を25bp(0.25%ポイント)引き上げ3.75-4.00%とした。声明において、利上げは「委員会が掲げる2%目標への早期回帰を支援するものである。委員会は物価安定を実現する」と強調した。また、政策金利予測(ドットチャート)では、18人中16人が年内にさらに1回以上の利上げが必要との見通しを示した。ウォーシュFRB議長は会見で「金融環境が『引き締め的』であるとは言い難い」として「FOMCは緩和の度合いを縮小した」と利上げの理由を説明。「FRBの責務のうち、労働市場の状況は良好だ」とした上で、「最大の焦点は物価の安定にあり、インフレ率が高すぎる状態が長期間続いている」との見解を示した。さらに「全会一致の決定は、物価安定を実現するという我々の決意を示すものだ」と語った。 |
| 18日 | 日銀は予想通りに政策金利を1.00%から1.25%に引き上げた。声明にて物価の上振れリスクに言及した上で「現在の金融環境が緩和的であることを踏まえると、経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている」とした。一方で、追加利上げのペースやタイミングについては「中東情勢やAI関連需要の拡大、為替相場の変動の影響を含め、経済・物価の中心的な見通しが実現する確度やリスクを点検しながら、検討していく方針である」として明確な見通しは示さなかった。また、佐藤委員と浅田委員が政策金利の据え置きを主張し、利上げに対して反対票を投じたことも明らかになった。植田日銀総裁は会見で「政策の局面が変化したと考えている」と発言。しかし、今後の利上げペースについては「特定のものを念頭に置いているかといえば、それはない」などと踏み込んだ発言を避けた。なお、利上げ後に円が下落したことを受け、日銀はNY外為市場で「レートチェック」を行い市場の動きをけん制した。 |
| 25日 | 片山財務相は閣議後の記者会見で、米国時間22日に行われた日米首脳会談において「トランプ米大統領から円安への懸念が示された」と明らかにした。これに対し、高市首相は一般論として「円の過小評価は問題だ」と発言したという。その後、高市首相は、トランプ米大統領から「円安によって米国の貿易が厳しいという話があった」と説明。その上で「金融政策や財政政策に関する議論はなかった」と述べた。その後、米財務省のベッセント長官は、「本日、片山財務相と生産的な電話会談を行った」とSNSで発表。日米首脳会談の議論に基づいて「日本の強固な経済基盤を反映した強い円の望ましさを議論し、通貨市場について密接な意思疎通を維持することの重要性についても話し合った」と明らかにした。 |
| 29日 | NY連銀のウィリアムズ総裁は、年内にあと1回の利上げが適切になる可能性があるとしつつも、「9月のFOMCで政策措置(利上げ)を決定したため、性急に行動する必要はない」との認識を示した。 |
| 30日 | 米8月個人消費支出物価指数(PCEデフレーター)は前年比+3.4%と市場予想(+3.7%)を下回った。また前月分は+3.7%から+3.4%へ下方修正された。食品とエネルギーを除いたコアPCEデフレーターは+3.0%と市場予想(+3.3%)を下回り、伸び率は前月(+3.3%から+3.0%に下方修正)から横ばいとなった。 |
各市場 9月の推移

10月の注目イベント(日・米)
| 1日 |
日銀短観
米9月ISM製造業景況指数
ジェファーソンFRB副議長講演
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17日 | |
| 2日 |
日本9月東京都区部消費者物価指数
米9月雇用統計
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18日 | |
| 3日 | 19日 | ||
| 4日 | 20日 |
米9月住宅着工件数
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| 5日 |
米9月ISM非製造業景況指数
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21日 |
日本9月貿易収支
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| 6日 |
植田日銀総裁講演
米8月貿易収支
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22日 | |
| 7日 |
日本8月毎月勤労統計
FOMC議事録
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23日 |
日本9月消費者物価指数
米10月PMI・製造業/サービス業
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| 8日 |
日本8月経常収支/貿易収支
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24日 | |
| 9日 |
米10月ミシガン大消費者信頼感指数
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25日 | |
| 10日 | 26日 | ||
| 11日 | 27日 |
米9月耐久財受注
米9月新築住宅販売件数
米10月消費者信頼感指数
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| 12日 |
日本祝日、米国祝日
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28日 |
FOMC(27日~)
ウォーシュFRB議長会見
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| 13日 |
日本9月国内企業物価指数
米9月中古住宅販売件数
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29日 |
米9月PCEデフレーター
米7-9月期GDP・速報値
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| 14日 |
米9月消費者物価指数
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30日 |
日銀金融政策決定会合(29日~)
日銀展望レポート
植田日銀総裁会見
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| 15日 |
米8月生産者物価指数
米9月小売売上高
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31日 | |
| 16日 |
内田日銀副総裁講演
米9月鉱工業生産
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ドル/円の10月見通し
9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)が想定以上に「タカ派的」だったとの見方から10月の連続利上げが意識され、オーバーナイト・インデックススワップ(OIS)の25bp(0.25%ポイント)利上げ織り込みは一時70%を超えた。しかし、29日のウィリアムズNY連銀総裁の発言や30日の米8月個人消費支出物価指数(PCEデフレーター)の結果を受けて10月利上げの織り込みは30%台に低下した。今月14日に発表される米9月消費者物価指数(CPI)が前月の前年比+3.4%から大幅に加速しない限り、中間選挙(11月3日)直前の27-28日に行われるFOMCでは政策金利を3.75~4.00%に据え置く可能性が高そうだ。とはいえ、中東情勢をめぐる不透明感がくすぶり続けている以上、米国のインフレ懸念は後退しないと見られ、市場の12月利上げ期待は維持される公算が大きいだろう。
一方、日銀も10月(30日)は一部の連続利上げ期待に反して政策金利を1.25%に据え置く可能性が高いと見る。日銀は物価の上振れリスクに警戒感を示しているものの、同時に景気の下振れリスクにも目配りする姿勢を維持しており、連続利上げはそうした姿勢と平仄が合わないことになる。もっとも、9月会合で利上げのペースを「3カ月に一度」へ引き上げたことを踏まえると、追加利上げは12月とする大方の見方が大きく変化することは考えにくい。
10月のドル/円相場については、米連邦準備制度理事会(FRB)と日銀がいずれも利上げを見送る一方、年内の利上げ期待は維持される公算が大きいことから上下双方向ともに値動きは限られそうだ。おおむね155円から160円のレンジで推移するだろう。
神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年から外国為替市場に携わる為替アナリスト。証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社し、ドル/円スポット、資金(デポジット)、金利デリバティブなど国際金融商品の取引仲介業務を担当。2009年7月、外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・金融市場の調査・分析に従事。2011年12月より現職。
30年以上にわたる市場経験をもとに、個人FX投資家向けの相場解説・情報発信を行う。テレビ東京「Newsモーニングサテライト(モーサテ)」への出演をはじめ、NHK、日経CNBC、ストックボイスTV、ニッポン放送など、テレビ・ラジオ・新聞・WEBメディアへの出演・取材・コメント実績多数。
