
更新日時:2026年10月2日 21時35分(データを更新)
執筆日時:2026年9月30日 22時10分
執筆者 :株式会社外為どっとコム総合研究所 小野 直人
10月2日21時30分に米9月雇用統計が発表されます。NFP(非農業部門雇用者数)は10万人増、失業率は4.1%、平均時給は前月比0.3%が市場予想です。
前回8月のNFPは16.2万人増(8月分の雇用統計に関する詳しい反応はこちら)でしたが、今回10万人程度へ減速しても、それだけで雇用悪化とは言い切れません。今回の焦点は、これまで続いてきた「low-hire / low-fire」、つまり解雇は少ないものの、採用も少ない状態から本当に抜け出し始めたのかです。
採用には持ち直しの兆し、ただし「low-hire」脱却はまだ
9月ADP民間雇用者数は9.0万人増と、市場予想の7.4万人を上回りました。8月は3.8万人から3.6万人へ下方修正されており、9月は雇用増加ペースがはっきりと持ち直しています。
週次ADPでも、4週間移動平均による週当たりの雇用増加数は8月半ば以降に上向いていました。S&P Globalの9月PMI速報値でも、雇用は2022年6月以来の速いペースで増加しており、9月に入って企業の採用姿勢が改善した可能性は高まっています。
ただし、「採用が完全に戻った」と判断するのはまだ早そうです。
求人減少と「仕事を見つけにくい」という実感
8月JOLTSでは求人件数が733.5万件から707.9万件へ減少しました。採用者数は519.2万人へ小幅に増えたものの、民間部門では484.7万人から484.6万人とほぼ横ばいです。一方、レイオフや解雇は低水準にとどまっています。
9月のコンファレンス・ボード消費者信頼感指数でも、「雇用が十分」と答えた割合が24.5%から23.6%へ低下する一方、「就職が困難」は20.3%から21.9%へ上昇しました。両者の差は4.2ポイントから1.7ポイントまで縮小しています。
つまり、8月までは「人を切らない一方、新しく積極的に採るわけでもない」状態が続いていたものの、9月に入り少しずつ採用に持ち直しの兆しが出てきたと考えられます。
今回の雇用統計では、こうした変化がNFPにも表れてくるのかを確認することになります。
ただ、その数字を判断するうえでは、もう一つ注意したい点があります。前回の16.2万人を、そのまま今回の基準にしないことです。
図表1 雇用者数変化に関連するデータ
| 項目 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 |
|---|---|---|---|---|---|
| NFP 万人 | 6.3 | 3.1 | -1.0 | 13.3 | 2.9 |
| 失業率 % | 4.3 | 4.2 | 4.1 | 4.1 | 4.2 |
| 労働参加率% | 61.8 | 61.5 | 61.4 | 61.6 | 61.8 |
| 時間給/前月比 % | 0.2 | 0.3 | 0.1 | 0.3 | 0.1 |
| ADP民間雇用者数 万人 | 12.2 | 9.5 | 4.6 | 3.6 | 9.0 |
| Indeed Job Postings Index | 101.9 | 100.8 | 101.6 | 101.9 | 103.1 |
| 新規失業保険申請件数 万件 | 21.0 | 22.7 | 18.9 | 20.7 | 19.8 |
| 失業保険継続受給者数 万人 | 178.5 | 181.2 | 177.7 | 177.1 | 171.9 |
出所:各種公表データを基に外為総研が作成
※データは最新値
※Indeed job postings Indexは月平均
※失業保険データは、雇用統計調査週の分
前回16.2万人は特殊要因が大きい、10万人でも弱いとは限らない
前回8月のNFP16.2万人増は、現在の雇用の勢いをそのまま表した数字とは考えにくい面があります。
8月は飲食店が5.9万人増、地方政府の教育部門が4.2万人増と、一部業種が全体を大きく押し上げました。過去12カ月のNFP増加が月平均3.1万人だったことを考えても、16.2万人は一時的な押し上げが重なった、異常値に近いやや特殊な数字だったとみられます。
また、労働力人口の伸びが以前より鈍っているため、失業率を安定させるのに必要な雇用増の「合格ライン」も以前より低くなっている可能性があります。
そのため今回は、前回から何万人減ったかよりも、10万人程度の雇用増でも失業率が4.1%前後で安定するのかを見る方が重要です。
では、その10万人前後という数字を、市場はどのように受け止めるのでしょうか。最後は、NFPだけでなく失業率と賃金の組み合わせがカギになります。
ドルの反応は「失業率」と「賃金」の組み合わせ次第
9月30日発表の8月コアPCEは前月比0.2%と、市場予想の0.3%を下回りました。今回はBEAの年次改定と同時発表だったため前年比の変化は慎重にみる必要がありますが、少なくとも物価が予想以上に加速した内容ではありません。
そのため今回の雇用統計では、採用の持ち直しが、予想を下回るPCEを受けていったん後退したFRBの追加利上げ観測を再び強めるほどの内容になるかがポイントです。
強い結果ならドル買い、予想程度なら反応は限定的
NFPが10万人前後、あるいはそれ以上となり、失業率が4.1%以下、平均時給も強ければ、労働市場の底堅さが意識され、米金利上昇とドル買いにつながりやすいと考えられます。失業率が低下する場合、労働参加率が横ばいか上昇していれば、より素直に強い内容と受け止めやすくなります。
一方、NFPが10万人前後、失業率4.1%、賃金も予想程度なら、雇用は崩れていないものの、インフレ懸念を一段と高めるほどでもありません。ドルの反応も限定的になりそうです。
反対に、NFPが予想を下回り、失業率が上昇、賃金も鈍化すれば、ADPが示した採用改善への期待が後退し、FRBの追加利上げ観測の低下からドル売りにつながりやすくなります。
なお、失業率が低下しても労働参加率まで低下している場合は、仕事探しをやめた人が増えたことで失業率が押し下げられた可能性があります。今回もNFPだけでなく、失業率、平均時給、労働参加率を合わせて見ることが大切です。
図表2 消費者信頼感指数(コンファレンスボード)
| 項目 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 |
|---|---|---|---|---|---|
| 消費者信頼感指数 | 90.6 | 92.2 | 90.2 | 88.6 | 81.9 |
| 現況 | 119.4 | 118.5 | 114.4 | 117.2 | 109.3 |
| 期待 | 71.4 | 74.7 | 74.0 | 69.5 | 63.6 |
| 雇用が十分 | 24.8 | 25.5 | 24.4 | 24.5 | 23.6 |
| 就職が困難 | 19.8 | 21.7 | 21.7 | 20.3 | 21.9 |
| 雇用が十分-就職が困難 | 5.0 | 3.8 | 2.7 | 4.2 | 1.7 |
出所:公表データを基に外為総研が作成
ドル円は159円前後を回復できるか
ドル円では、強い雇用統計となれば、まずは直近で上値を抑えられた159円前後を回復できるかが焦点です。
NFPだけでなく、失業率や賃金も強く、FRBの追加利上げ観測が一段と高まれば、159円台後半まで上値を広げる可能性があります。
一方、雇用統計が市場予想程度にとどまれば、ADPで採用改善がある程度確認された後だけにサプライズは小さく、158〜159円台では上値を抑えられやすいとみています。
図表3 雇用統計への反応
| 結果 | 市場の見方 | 想定される反応 |
|---|---|---|
| NFP10万人以上、失業率4.1%以下、平均時給が予想以上 | ADPに続いて採用の持ち直しを確認。労働市場の底堅さやインフレ圧力を意識 | 米金利上昇、ドル円上昇、金下落。ドル円は159円前後を試しやすい |
| NFP10万人前後、失業率4.1%、平均時給0.3%前後 | おおむね市場予想通り。雇用は崩れていないが、利上げ観測を大きく強めるほどでもない | ドルの反応は限定的。失業率、賃金、労働参加率の中身が焦点。158〜159円台では上値を抑えられやすい |
| NFP予想割れ、失業率上昇、平均時給鈍化 | ADPが示した採用改善への期待が後退。low-hire継続への警戒が強まる | 米金利低下、ドル円下落、金上昇。FRBの追加利上げ観測も後退しやすい |
図表4 ドル円チャート

米雇用統計の実績・市場予想と関連経済指標データ
図表5 [雇用統計の実績と予想]
| 年月 | 非農業雇用者数変化(万人) | 失業率(%) | ||
| 予想値 | 初回結果 | 予想値 | 初回結果 | |
| 2026年09月 | 8.8 | 2.9 | 4.1 | 4.2 |
| 2026年08月 | 5.8 | 16.2 | 4.1 | 4.1 |
| 2026年07月 | 8.5 | -2.3 | 4.2 | 4.1 |
| 2026年06月 | 11.3 | 5.7 | 4.3 | 4.2 |
| 2026年05月 | 8.5 | 17.2 | 4.3 | 4.3 |
| 2026年04月 | 6.2 | 11.5 | 4.3 | 4.3 |
| 年月 | 平均時給/前月比(%) | 労働参加率(%) | |
| 予想値 | 初回結果 | 初回結果 | |
| 2026年09月 | 0.3 | 0.1 | 61.8 |
| 2026年08月 | 0.3 | 0.3 | 61.6 |
| 2026年07月 | 0.3 | 0.1 | 61.4 |
| 2026年06月 | 0.3 | 0.3 | 61.5 |
| 2026年05月 | 0.3 | 0.3 | 61.8 |
| 2026年04月 | 0.3 | 0.3 | 61.8 |
※初回結果は改定前の値
◇関連の経済データ実績
| 年月 | ISM製造業雇用指数 | ISM非製造業雇用指数 |
| 2026年09月 | 52.7 | - |
| 2026年08月 | 51.2 | 47.8 |
| 2026年07月 | 52.8 | 47.4 |
| 2026年06月 | 49.7 | 51.2 |
| 2026年05月 | 48.6 | 47.9 |
| 2026年04月 | 46.4 | 48.0 |
出所:Bloomberg、外為どっとコム「経済指標カレンダー」
市場予想は弊社経済カレンダーより、2026年9月30日 現在
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小野 直人
株式会社DZHフィナンシャルリサーチでの情報配信業務、上田ハーロー株式会社での調査・市場部門を経て、2021年より外為どっとコム総合研究所へ参画。ニュースベンダーとFX会社で培った「情報の目利き力」と「市場実務の経験」を武器に、個人投資家へ有益な情報を発信している。ドル円などの主要通貨に加え、トルコリラ・メキシコペソなどの新興国通貨、日経平均・NYダウといった株価指数(CFD)まで、幅広い金融商品の分析を得意とするマーケットアナリスト。
