●サマリー
・日銀は0.25%の利上げを決定したものの、ドル円は157円台まで上昇
・円安の背景には、投機筋が積み上げた円買いポジションの巻き戻しも
・ドル円は158円台半ばの200日移動平均線を突破できるかが焦点
・原油高や海外中銀の利上げが続けば、円安圧力がさらに強まる可能性
・上下動を繰り返しながら160円方向へ戻ると予想
【必見!】日銀会合後のドル円見通し
日銀が利上げ、それでもドル円は157円台へ
日本銀行は金融政策決定会合で、政策金利を0.25%引き上げました。
市場では事前に利上げが予想されていましたが、発表後の為替市場では円買いではなく円売りが優勢となり、ドル円は156円台前半から一時157円台まで上昇しました。
なぜ、日銀が利上げしたにもかかわらず円安が進んだのでしょうか。
佐々木氏は、その背景として日銀の政策内容だけでなく、投機筋のポジションの偏りを指摘します。
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円ロングの巻き戻しが円安を加速か
ドル円は9月に入り、160円近辺から152円台まで大きく下落していました。
この円高局面では、日米当局による円安への対応やGPIFの資産配分を巡る思惑などを背景に、海外のヘッジファンドなどが円買いポジションを積み上げていたとの見方があります。そのため、今回の利上げが市場予想の範囲内にとどまったことで、積み上がっていた円ロングが巻き戻され、円売りにつながった可能性があります。
植田総裁「政策の局面が変化」で一時円高
植田和男総裁は記者会見で、物価上昇率が2%程度で安定していくことが重要になるとして、「政策の局面が変化した」との認識を示しました。
この発言を受け、ドル円は一時156円台半ばまで下落しました。
一方で、植田総裁は急激な利上げについて、資産価格の大幅な調整や貸し出しへの悪影響を避ける必要があるとの考えも示しました。
市場では、日銀が今後も利上げを続ける一方、急ピッチで金融引き締めを進めるわけではないと受け止められ、ドル円は再び157円台へ上昇しました。
今回の利上げを支えた4つの要因
佐々木氏は、今回の日銀の利上げ判断を支えた主な要因として、以下を挙げています。
・中東情勢を背景としたエネルギー価格の上昇
・AI関連需要の拡大
・予想物価上昇率の上昇
・賃金上昇の継続
特に、賃金と物価がともに上昇する動きが続くかどうかが、今後の金融政策見通しにおいて重要になります。
ドル円は158円台半ばが重要ポイント
今後のドル円相場を見るうえで、佐々木氏が注目しているのが158円台半ばです。この水準には200日移動平均線が位置しており、テクニカル面で重要な節目となります。
ドル円がこの水準を明確に上回れば、再び160円方向を試す展開が意識されやすくなります。一方で、158円台半ばで上値を抑えられれば、当面は方向感を欠く展開が続く可能性もあります。
米国ではFRBの追加利上げ期待に注目
ドル側の材料では、FRBの金融政策が引き続き重要です。
今後は米PMIやPCEデフレーター、雇用統計などを通じて、景気やインフレの強さを確認することになります。米経済指標が強ければ、追加利上げ観測が高まり、米金利上昇を通じてドル高圧力が強まる可能性があります。
日銀が利上げを続けたとしても、FRBなど海外中銀の利上げペースがそれを上回れば、金利差は縮小しません。その場合、円高材料としての日銀利上げの効果は限定的となります。
原油高も円安要因に
円相場を見るうえでは、原油価格の動向も重要です。
日本はエネルギーの多くを輸入に依存しているため、原油高が進むと輸入額が増え、貿易収支が悪化しやすくなります。さらに、エネルギー価格上昇によってインフレ率が高まる一方、名目金利の上昇が追いつかなければ、実質金利は低下します。
実質金利の低下は円保有の魅力を低下させるため、円安要因となります。さらに、円相場への影響を考えるうえでは原油だけでなく、小麦や大豆、トウモロコシなど、輸入依存度の高い商品価格の動向にも注意が必要です。商品価格上昇が続けば、輸入物価上昇を通じて円相場に影響を与える可能性があります。
ドル円は再び160円へ?
今後のドル円について、佐々木氏は、上下動を繰り返しながら再び160円方向へ戻る可能性があるとみています。
ポイントは、日銀の利上げだけでなく、日本と海外の金利差、原油高による貿易赤字の拡大、実需の円売りが続くかどうかです。
また、円安が進めば本邦当局による為替介入への警戒も強まります。ただし、介入やけん制発言を繰り返しても円安基調が変わらなければ、市場では「ファンダメンタルズが変わらない限り円安は止まりにくい」との見方が強まる可能性があります。
まとめ
日銀は利上げに踏み切りましたが、ドル円はむしろ157円台まで上昇しました。
背景には、利上げが事前に織り込まれていたことに加え、投機筋の円ロングポジションの巻き戻しがあったとみられます。今後は、158円台半ばの200日移動平均線を突破できるかが重要です。
加えて、FRBの追加利上げ観測、原油高、日米金利差、貿易収支にも注意が必要です。日銀が利上げを続けても、海外金利の上昇や輸入コスト増加が続けば、円安圧力は簡単には解消されない可能性があります。
ふくおかフィナンシャルグループ チーフ・ストラテジスト佐々木 融 (ささき・とおる)氏
1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。
2010年にマネージングディレクター就任、2015年から2023年11月まで同行市場調査本部長。23年12月から現職。著書に「インフレ・円安・バラマキ・国富流出」「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」など。

