
米連邦準備理事会(FRB)は16日まで開催した連邦公開市場委員会(FOMC)において、大方の予想通り0.25%の利上げを決定しました。政策金利の引き上げは2023年以来、約3年ぶりとなります。
事前の市場では「利上げ打ち止め観測」や幹部内の意見対立も警戒されていましたが、蓋を開けてみれば「全会一致」での利上げ決定となったほか、金利見通し(ドットプロット)で年内あと1回の追加利上げが示唆されるなど、想定以上の「タカ派姿勢」が示されました。これを受けて米債利回りが跳ね上がり、為替市場ではドルが全面高の展開を見せています。
政策金利の変更
FFレート誘導目標を従来の3.50%~3.75%から3.75%~4.00%へ0.25%引き上げ。
採決結果
事前の反対票観測(ウォラー理事やボウマン副議長など)を覆し、全会一致で採択。
声明文のポイント
「経済活動は堅調に拡大」「不透明性にもかかわらず国内消費支出は弾力性がある」と景気の底堅さを評価。
労働市場については「雇用の伸びは労働力に伴うペース」と評価しつつも、「インフレは依然高止まりしている」と指摘。
「利上げは、インフレの適時な2%目標復帰を支援する」「FOMCは物価安定をもたらす」とし、引き締めの正当性を強調。
金利見通し(ドットプロット)と経済予測:追加引き締めを強く示唆
FRB当局者18人(※ウォーシュ議長は前回6月に続き自身の見通し提出を控える)の予測分布から、タカ派的なシナリオが浮き彫りとなりました。
金利見通し(ドットチャート)
年内見通し:18人中16人が「年内に少なくともあと1回の追加利上げ(4.00%~4.25%へ)」を予想(据え置き予想は2名のみ)。中央値は4.125%へ引き上げ。
先々の見通し:2027年は政策金利を据え置くシナリオが示され、2027~2028年の金利水準予想も切り上がった。長期中立金利見通しは3.1%から3.2%へ上方修正。
主要経済指標の見通し
PCEインフレ率:2026年末の中央値は3.7%(前回3.6%から上方修正)。2%目標への完全回帰は2029年までずれ込む見通し。
実質GDP成長率:2026年は2.3%(前回2.2%から上方修正)、2027年は2.4%と底堅さを維持。
失業率:2026年は4.1%を見込み、2029年まで同水準が継続すると予想。
ウォーシュFRB議長 記者会見:「物価安定を最優先」
トランプ米大統領が「金利は1%以下にすべき」「早急な利下げを」と公に牽制していたことや、議長自身のスタンスから「利上げに消極的、あるいは打ち止めを示唆するのではないか」との観測が一部にありました。しかし、会見でのウォーシュ議長は断固たるインフレ抑制姿勢を打ち出しました。
現状認識とインフレへの危機感
「インフレは過剰に長く、過剰に高い」「過剰に多くのインフレ項目が3%を超えて上昇している」と強い懸念を表明。
「現在の金融環境が『引き締め的』であるとは言い難い」と言及。
二重の責務(物価安定と雇用最大化)の優先順位
「インフレリスクは上向き、労働市場のリスクは均衡」「FRBは物価安定を最優先する」と明言。
「本日の決定は、我々がインフレ抑制に真剣であることの証明」「物価安定こそが経済成長の基礎となる」と強調。
マーケットの反応
① 債券市場(金利急伸)
タカ派サプライズを受け、米金利は急上昇。
政策金利に敏感な米2年債利回りは一時4.7423%前後と2024年7月以来の高水準を記録。
米10年債利回りは発表前の4.93%台から一時5.02%台まで跳ね上がりました。
② 外国為替市場(ドル大幅続伸)
ドル/円:発表前の金利低下局面で一時154.86円まで軟化していたものの、FOMC発表後は一転してドル買いが急加速。一時156.42円まで急伸し、156.26円~36銭水準で取引を終えました。
ユーロ/ドル:5日続落。一時1.1461ドルまで下落。
ドル指数:一時100.35まで上昇し、7月下旬以来の高値を記録。
③ 株式市場(ダウ急落、ハイテクが下支え)
NYダウ:金利上昇を嫌気し、631.21ドル安(51,461.90ドル)と大幅反落。銀行株やエネルギー株が売られました。
ナスダック:半導体・ハードウェア関連などのハイテク銘柄が下支えし、終盤に下げ幅を縮小。わずか3.14ポイント安(25,978.43)の小幅安にとどまりました。
今後の焦点・マーケットの視点
日米金融政策の温度差と為替動向
米国の年内追加利上げ観測が強まったことで、ドル高基調が定着しやすくなっています。本日から始まる日銀金融政策決定会合において、市場は80%前後の確率で利上げを織り込んでいますが、日銀が想定通りの利上げペースを維持できるか懐疑的な見方もあり、金利差を背景としたドル高・円安圧力は根強く残る可能性があります。
黒川健(くろかわ・たける)
米国Capital Market Services LLCニューヨーク本社および上田ハーロー株式会社でカバーディーラー、プロップディーラーを約20年間務める。2021年9月(株)外為どっとコム総合研究所入社後は、テクニカル分析、ファンダメンタル情報を配信している。
