
作成日時:2026年9月10日 13:00
予想期間:2026年9月10日〜9月17日
監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 小野直人
【この記事でわかること|金価格(XAUUSD)週間見通し】
- 今後1週間の金(ゴールド)/XAUUSDの予想レンジ:4,280〜4,510ドル
- 上昇要因:ETFへの大規模資金流入、米財政・ドル価値への警戒、4,300ドル台の下値の堅さ
- 下落リスク:米8月CPIの上振れ、FRBの利上げ観測強まり、25日移動平均線(4,449ドル)を回復できない展開
- 重要な分岐点:4,449ドル(25日移動平均線)・4,280ドル・4,253ドル(75日移動平均線)の攻防
足元の金相場(XAU/USD)は、市場参加者の見方が分かれやすい局面に入っています。8月に約10%上昇した地合いがまだ生きているとみる向きがある一方、8月末から強まった米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ観測が上値を抑え続けるとみる向きもあります。
筆者のベースシナリオは、4,300ドル台では下げ渋るものの、4,449ドル前後の25日移動平均線を回復するまでは上昇再開を判断しにくいというものです。判断を左右するのは、米8月消費者物価指数(CPI)と米連邦公開市場委員会(FOMC)を通じて米金利見通しがどちらへ傾くか、そして上場投資信託(ETF)への資金流入や米財政への警戒といった8月の支援材料がどこまで残るか、この綱引きです。以下では上下双方の材料を並べていますので、ご自身がどちらを重く見るかを考えながら読み進めてみてください。
金スポット8月の動向|金価格は約10%高、ETFの資金流入が上昇を裏付け
8月の金相場は、弱い米雇用指標を受けたFRBの利上げ観測後退、ドル安、米財政やドル価値へのデベースメント懸念など、複数の材料を背景に月間で約10%上昇しました。単一の理由ではなく、金融政策・為替・財政の三方向から買いが入った形です。
この金買いの強さは、実際の資金の動きでも確認できます。世界黄金協会(WGC)によると、8月の世界の金ETFには180億ドルが流入し、保有量は前月比121トン増の4,189トンと過去最高を更新しました。北米や欧州を中心に幅広く資金が入っており、8月の値動きが投資マネーに支えられていたことがうかがえます。
ただ、この構図は月末にかけて一部が変化した可能性があります。
金スポット週間見通し|ジャクソンホールと米雇用統計で、FRBの利上げ観測が再燃
風向きが微妙に変化も、4,300ドル付近は支援材料が散見
最初の変化は、8月28日のジャクソンホール会議でした。ウォーシュFRB議長がインフレ鈍化に慎重な姿勢を示したことで、9月FOMCでの利上げ観測が再び強まり、金には売り圧力がかかりました。
さらに9月4日の米8月雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比16.2万人増と市場予想を大きく上回り、失業率は4.1%でした。強い結果を受けて利上げ期待がもう一段高まり、金は一時4,365ドル付近まで下落しています。
つまり、8月中旬までは利上げ警戒の後退も金を支えていましたが、8月末からFRBの政策見通しがややタカ派方向へ戻り始めたとみられます。米雇用統計は、その流れを補強した材料といえそうです。
ここで重要なのは、変わったのが米金利見通しだけだという点です。ETFへの資金流入や米財政への警戒といった8月の支援材料は残っており、上昇要因のうち一つだけが逆方向へ振れた状態にあります。
米CPIからFOMCへ、タカ派方向への変化が続くかを見極める
この変化が一時的なものか、それとも定着するのか。次の判断材料が米物価指標です。
9月10日の米8月卸売物価指数(PPI)に続き、11日には米8月CPIが発表されます。
CPIが予想を上回れば、「強い雇用+粘着的なインフレ」という組み合わせとなり、16日27時(日本時間17日午前3時)のFOMCに向けて利上げ期待がさらに強まる可能性があります。米金利の上昇につながれば、金利を生まない金には逆風です。
一方、CPIが弱ければ、ジャクソンホールから雇用統計にかけて高まった利上げ期待が再び後退する可能性があります。その場合はドルや米金利の低下を通じて、金に買い戻しが入りやすくなりそうです。
したがって来週は、8月の金高を支えた環境のうち米金利見通しだけが変わったのか、それとも上昇基調そのものが転換し始めたのかを、CPIからFOMCにかけて確認する局面になります。
4,300ドル台の下値を支える材料と、ポジションの整理状況
もっとも、利上げ期待が戻ったからといって、金がそのまま一方向に下落するとは限りません。
8月に確認されたETFへの大規模な資金流入や、米財政・ドル価値への警戒は残っています。足元でも米金利が高止まりするなか、金は4,300ドル台で下げ渋っており、米金利だけでは方向が決まりにくい状態です。
ポジション面でも過熱感はやや和らいでいます。WGCによると、8月にはCOMEXの金先物ネットロングも大きく拡大しており、ETFだけでなく先物市場でも買いが積み上がっていました。

その後、米商品先物取引委員会(CFTC)のデータでは、大口投機筋の金先物の買い越しが8月25日の24万3,334枚から9月1日には22万8,124枚へ減少し、1週間で1万5,210枚縮小しました。買い越し自体はなお高水準ですが、積み上がったロングの一部が整理されたことで、ポジション面ではわずかながら新たな買いが入りやすくなった可能性があります。強い上昇材料ではないものの、下値を考えるうえでの補助的な支援材料といえます。
以上をまとめると、米利上げ期待が上値を抑える一方、ETF需要や米財政への警戒などが下値を支える状態です。
テクニカル分析|金価格の25日移動平均線4,449ドルと4,280ドルの攻防

テクニカルでは、25日移動平均線が4,449ドル前後、75日移動平均線が4,253ドル前後、14日RSIは35.3です。
8月25日の4,695ドル付近を高値に調整が続き、足元では25日移動平均線を下回っています。まずは4,449ドル前後の25日線を回復できるかが、戻りの強さを見るポイントになります。25日線を上回り4,500〜4,510ドルまで値を戻せれば、足元の調整圧力はいったん和らぐとみられます。一方、このゾーンで上値を抑えられる場合は、戻りの鈍さが意識されそうです。
下方向では、直近安値に近い4,280ドル前後を維持できるかが焦点です。ここを割り込めば調整継続が意識され、次は75日移動平均線の4,253ドル前後が下値の目安になります。
チャート形状については、今後の戻り方によって三尊型が意識される可能性もあります。ただ現時点では一つの警戒材料にとどまり、まずは4,449ドルの回復と4,280ドルの維持を確認する局面とみています。
金相場のプロの視点とシナリオの組み立て方
筆者のメインシナリオは、4,300ドル台では下げ渋るものの、4,449ドル前後の25日移動平均線を回復するまでは上昇再開を判断しにくいというものです。
すでに買い持ちの方であれば、4,280ドルを損益分岐の目安として置くのか、それとも75日線の4,253ドルまで許容するのかで、CPI前の対応は変わってきます。売り持ちの方であれば、4,449ドルの25日線が戻り売りの水準として機能するのか、それとも回復されて損切りラインになるのかが判断の分かれ目です。
【あなたの見通しは?】
A.米CPIとFOMCを通じて利上げ観測がさらに強まり、4,280ドルを割り込んで75日移動平均線の4,253ドル方向へ下落する
B.米金利の重しとETF需要が拮抗し、4,280〜4,449ドルのレンジでもみ合いが続く
C.米CPIの下振れで利上げ期待が後退し、25日移動平均線を回復して4,500〜4,510ドルを試す
今後の重要イベント
- 9月10日(木)21:30 米国 米8月卸売物価指数(PPI)
- 9月11日(金)21:30 米国 米8月消費者物価指数(CPI)
- 9月11日(金)23:00 米国 米9月ミシガン大学消費者態度指数・速報値
- 9月15日(火)21:30 米国 米9月ニューヨーク連銀製造業景気指数
- 9月16日(水)21:30 米国 米8月小売売上高
- 9月16日(水)27:00 米国 FOMC政策金利発表
- 9月16日(水)27:30 米国 ウォーシュFRB議長 記者会見
- 9月17日(木)21:30 米国 米新規失業保険申請件数
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小野 直人
株式会社DZHフィナンシャルリサーチでの情報配信業務、上田ハーロー株式会社での調査・市場部門を経て、2021年より外為どっとコム総合研究所へ参画。ニュースベンダーとFX会社で培った「情報の目利き力」と「市場実務の経験」を武器に、個人投資家へ有益な情報を発信している。ドル円などの主要通貨に加え、トルコリラ・メキシコペソなどの新興国通貨、日経平均・NYダウといった株価指数(CFD)まで、幅広い金融商品の分析を得意とするマーケットアナリスト。
