
外貨建て資産を持っていると、海外の株価や資産価格が大きく下がっていないにもかかわらず急に円高が進んだだけで円換算した資産価値が目減りすることがあります。
将来外貨を受け取る予定がある人にとっても、円高は円換算した受取額の減少につながります。
こうした為替変動による影響を小さくする方法の一つが「為替ヘッジ」です。
FXというと、「円安・円高を予想して利益を狙う取引」というイメージが強いかもしれませんが、為替リスクを調整するために使うという考え方もあります。
基本的な考え方はシンプルです。
「為替変動の影響を受ける資産や取引に対して、FXで反対方向のポジションを持つ」というものです。
投資信託の値動き、「株価」だけを見ていませんか?
最近は、証券会社のアプリなどで、保有している投資信託の評価額や前日からの増減を毎日簡単に確認することができます。
全世界株式型や米国株式型など、海外資産に投資する投資信託を持っている人の中には、「海外の株価はそれほど下がっていないのに今日は評価額が減っている」と感じたことがある人もいるかもしれません。
その理由の一つが為替です。
為替ヘッジを行っていない投資信託などで海外資産に投資する場合、投資先の株価や債券価格などだけでなく、円と外貨の為替変動も円換算した評価額に影響します。
投資信託そのものを円で買っていても、投資先に海外資産が多く含まれていれば為替の動きが基準価額に影響することがあります。
投資先そのものの価値がほとんど変わっていなくても、円高が進めば円に換算した資産価値が目減りすることがあるのです。
まずは単純な例で考えてみよう
ここでは仕組みを分かりやすくするため、1万ドル相当の米ドル建て資産を持っているケースで考えます。
投資先そのものの価格が変わっていなくても、為替が150円から145円へ円高になっただけで円換算した評価額は単純計算で5万円減ります。
もちろん、実際の投資信託は複数の資産や通貨で構成されており、基準価額はさまざまな要因で動きます。
ここでまず知っておきたいのは「資産そのものの値動き」と「為替の値動き」は別の要素だということです。
そこで出てくるのが「FXで反対方向を持つ」という考え方
基本的には、米ドル建て資産なら米ドル/円、ユーロ建て資産ならユーロ/円というように、ヘッジしたい為替リスクに対応する通貨ペアを使います。
ここでは分かりやすく、先ほどの1万ドル相当の米ドル建て資産を持ちながら、為替リスクの半分だけを抑えるためにFXで米ドル/円を5,000ドル分「売り」で持っていたらどうなるかを考えます。
米ドル/円を150円で5,000ドル売り、その後145円まで円高になった場合、FX側では理論上、
(150円-145円)× 5,000ドル = 2万5,000円
の利益が生じます。

この例では米ドル建て資産は円高によって5万円目減りしますが、FXでは2万5,000円の利益が生じます。
為替によるマイナスを完全になくすわけではありませんが、その一部をFXの利益で補うことができます。
これがFXを使った為替ヘッジの基本的な考え方です。
なお、この例で逆に円安が進んだ場合は、米ドル建て資産の円換算価値が増える一方、FXの売りポジションでは損失が生じます。
つまり、ヘッジは円高によるマイナスの影響を抑える一方で、円安による円換算価値の押し上げ効果もその分小さくすることになります。
為替が動いたときのプラスとマイナスの振れ幅を小さくし、自分が負う為替リスクを調整するための考え方です。
全部をヘッジする必要はない
ヘッジというと、為替変動の影響を受ける資産についてその為替リスクのすべてをFXで打ち消さなければならないように思うかもしれません。
しかし必ずしも100%ヘッジする必要はありません。
海外資産そのものには中長期で期待している。円安になったときの恩恵もある程度は残したい。ただ、急激な円高の影響は少し小さくしたい――。
そう考えるのであれば、一部だけをヘッジする方法も考えられます。
反対に、為替の上下も含めて長期で受け入れると考えるならヘッジを行わないという選択もあります。
大切なのは、ヘッジすること自体を目的にするのではなく、自分がどの程度の為替リスクを持ちたいのかを考えることです。
ただし、「FXなら完全にヘッジできる」わけではない
ここまで読むと、「為替変動の影響を受ける資産を持つなら、FXで反対売買をしておけば安心なのでは」と思うかもしれません。
ただし、実際にヘッジを考える際にはいくつか押さえておきたい点があります。
- 資産の価値そのものも動く1万ドル相当だった資産そのものの価値が1万2,000ドルになったり8,000ドルになったりすれば、抱えている為替リスクの大きさも変わります。
- 投資信託は複数の通貨の影響を受けることがある全世界株式型のような投資信託では、米ドルだけでなくさまざまな通貨の影響を受けるため、米ドル/円の売買だけで値動きを完全に相殺できるとは限りません。
- FXにも損益とリスクがある相場がFXポジションに対して不利な方向へ動けば、FX側では損失が発生します。
ヘッジ対象の資産で反対方向の利益が生じていても、その利益が自動的にFX口座の保証金へ反映されるわけではありません。
FX口座では必要な保証金を別に管理する必要があり、保証金の状況によってはロスカットが発生する可能性もあります。 - ヘッジする金額や時期がずれることもある資産の評価額が変わったり、事業上の外貨の支払額・受取額や時期が変わったりすれば、必要なヘッジ量も変わります。
当初のFXポジションのままではヘッジが過大または過小になることがあります。 - ヘッジにはコストがかかるスプレッドのほか、長期間ポジションを保有する場合にはスワップポイントの受け払いも影響します。
為替リスクを抑えるためにFXを利用していても、FX取引そのものには損失やロスカットなどのリスクがあります。
また、ヘッジ対象とFXの値動きが完全に一致するとは限りません。
資産運用だけでなく、外貨で支払いや受け取りがある人にも
為替ヘッジの考え方は投資信託や海外株を持っている人だけのものではありません。
たとえば、海外から商品や部品を仕入れている個人事業主が数か月後に米ドルで代金を支払う予定だったとします。
支払う金額が1万ドルであれば1ドル=150円なら150万円ですが、支払いまでに1ドル=160円まで円安が進めば160万円が必要になります。
商品価格が変わっていなくても為替だけで必要な円資金が10万円増えることになります。
こうした場合、あらかじめFXで米ドル/円を「買い」で持っておけば、円安になったときにFX側で生じる利益によって支払額の増加分の全部または一部を相殺する、という考え方ができます。
反対に、海外への販売などで将来米ドルを受け取る予定がある場合は円高になるほど円換算した受取額が減ります。
この場合には米ドル/円を「売り」で持つことで円高による影響を抑えるという考え方があります。
また、FXには保証金を預けその保証金額を上回る金額を取引できる「レバレッジ」の仕組みがあります。
ヘッジ対象となる金額の全額をあらかじめ現金として用意せずに為替リスクを調整できる点は、FXをヘッジに利用する際の特徴の一つです。
ただし、レバレッジを利用することで保証金に対する損益も大きくなるため、保証金の管理やロスカットには注意が必要です。
企業や個人事業主では、将来の外貨の支払いや受け取りに備えて、銀行の「為替予約」を利用することもあるでしょう。
FXは為替予約と同じ仕組みではなく、外貨そのものを受け渡すこともできないため完全な代替ではありませんが、将来の為替変動による影響を抑えるという目的には共通する部分があります。
外貨での支払いや受け取りがあるとき、為替によって最終的な円の金額がどの程度ぶれるのかを考え必要に応じてその全部または一部をFXで調整する、という使い方です。
このように、FXを「相場で利益を狙う取引」としてだけでなく、実際の外貨の支払いや受け取りと結び付けて使う。
そんな「実需とつなげたFX」という考え方もあります。
外為どっとコムのFXは「外貨そのものを受け取る」仕組みではない
FXを為替ヘッジとして考えるときにはもう一つ重要な点があります。
外為どっとコムのFXでは為替レートの変動によって生じた損益を差金決済します。
そのため、FXで米ドル/円の買いポジションを持っていても、それをそのまま海外資産の購入代金や海外への支払いに充てたり、反対に外貨の受取代金をそのままFXの決済に使ったりすることはできません。
あくまで、為替変動の影響を受ける資産や外貨取引で発生する損益に対して、反対方向のFX取引による損益をぶつけるという考え方です。
その意味で、外為どっとコムのFXを使ったヘッジは、実際の外貨を受け渡すのではなく為替変動による損益を理論上相殺する方法と考えるのが適切です。
為替予約とは仕組みやコスト、資金管理、リスクが異なる点にも注意が必要です。
長くヘッジするなら、スワップポイントも確認したい
FXを長期間保有してヘッジを続ける場合には、スワップポイントにも注意が必要です。
スワップポイントは、通貨ペアや売買方向、2通貨間の金利差などの影響を受けて変動します。受け取れる場合もあれば支払う場合もあり、その金額も一定ではありません。
短期間では小さく見えても、長期間ヘッジを続ければ受け払いの影響が積み重なることがあります。
各国の政策金利や発表スケジュール、実際のスワップポイントは、以下のページで確認できます。
ヘッジを考えるときには、為替レートだけではなくスプレッドやスワップポイントなどのコストも含めて考えることが大切です。
FXを「為替リスクを調整する道具」として見る
FXは円安になるか円高になるかを予想して利益を狙うだけのものではありません。
すでに持っている海外資産など、為替変動の影響を受ける資産や将来予定している外貨の受け取り・支払いなどに対して、為替相場が動いたときの影響を小さくするために使うという考え方もあります。
もちろんすべての人が為替ヘッジをする必要はありません。
為替変動も含めてそのまま受け入れるのか、一部だけ影響を抑えるのか、より大きくヘッジするのか。それぞれにメリットとデメリットがあります。
一方で、
「海外資産は持ち続けたいけれど、円高による影響は少し気になる」
「海外から仕入れる商品の代金が、円安で大きく変わるのは困る」
「今、自分がどのくらい為替リスクを持っているのか考えてみたい」
と思ったときには、FXを利益を狙うための取引だけではなく、為替リスクを調整するための道具として見るという選択肢もあります。
FXには、こんな使い方もある。
まずはそのことを知っておくだけでも、外貨や為替との付き合い方を考える材料になるのではないでしょうか。
※本記事は、FXを利用した為替ヘッジの基本的な考え方を説明することを目的としており、特定の取引やヘッジ手法を推奨するものではありません。実際のお取引は、お客様ご自身の判断と責任で行ってください。
※外国為替保証金取引は、為替相場や金利の変動等により損失が生じる場合があります。また、預け入れた保証金を上回る損失が生じる可能性があります。商品内容・仕組み・リスクを十分に理解したうえでお取り組みください。
※本記事中の数値例は、為替ヘッジの考え方を説明するために単純化したものです。実際の投資信託や海外資産の価格変動、為替感応度、スプレッド、スワップポイント、税金その他のコストは考慮していません。
