
執筆:外為どっとコム総合研究所 小野直人
執筆日時 2026年9月4日 16時20分
【この記事でわかること】
- 来週のドル円予想レンジ:154.00〜158.00円
- 今週のドル円が155円台まで急落した背景(ジャクソンホール・日銀タカ派化・米財務長官発言)
- 日銀9月利上げ観測と利上げ幅(0.25%/0.50%)を巡る市場の揺れ
- 日本の5年債入札と4-6月期GDP改定値が円相場の分岐点
- 米国債需給・CPI・PPI・入札が米金利とドル円の方向性を左右
今週のドル円|日銀のタカ派化進展観測で円が急騰
前回は157.50〜160.80円を予想しましたが、今週は一時160.39円まで上昇した後、155円台まで急落しました。8月28日のジャクソンホール講演でウォーシュFRB議長がタカ派姿勢を示したことで強まった米利上げ観測が週初も意識され、ドル円は160円台で推移しました。しかし、その後は高田日銀審議委員の発言や、ベッセント米財務長官の円安是正を意識した姿勢を受け、日銀の9月利上げと、その後の利上げペース加速を織り込む円買いが優勢に。9月3日には一部で0.50%の大幅利上げまで意識され、円高が加速しました。
その後、9月の利上げ幅は0.25%にとどまる公算が大きいと報じられ、0.50%利上げを見込んだ円買いの一部は巻き戻されたものの、9月利上げやその後の追加利上げペース加速への見方は残っており、円高への警戒は続いています。
なお、4日の米雇用統計は本稿執筆時点では未発表です。結果次第で、来週のスタート地点は大きく変わります。
来週のドル円見通し|日本も米国も金利が為替の主因
日本の5年債入札、円高継続か巻き戻しか
来週は8日に日本の4-6月期GDP改定値と5年国債入札があります。GDPが上方修正されれば、日銀の利上げを後押しする材料となりそうです。
加えて注目したいのは、5年債入札後の日本国債の動きです。2〜5年金利を中心に上昇し、長短金利差が縮小するなら、日銀の追加利上げペース加速を織り込む動きとして円高を支えそうです。
一方、日銀の金融正常化だけでなく、積極財政への懸念もくすぶったままです。9月1日には10年国債利回りが1996年以来初めて3%に達しました。10年・30年など長期・超長期金利が短中期より大きく上昇し、長短金利差が拡大すれば、財政不安による「悪い金利上昇」として円売りへ戻る可能性もあります。
来週は、日本金利が上がったかではなく、短中期と長期・超長期のどちらが主導して上昇したかが円の強弱を判断するポイントです。
また、米国でも金利動向がドルの主要なドライバーとなっており、国債需給と物価指標を通じて米金利が落ち着くかが焦点です。
米国債市場とCPI、米金利は落ち着くか
来週は、8日の3年国債入札、9日の10年国債入札(リオープン)、10日のPPI、30年国債入札(リオープン)、増額対象となる10〜20年国債の買い戻し(バイバック)、11日のCPIと、米国債市場と物価を巡る材料が続きます。
米財務省は長期・超長期国債の流動性支援を目的に、バイバックの上限を20億ドルから少なくとも40億ドルへ引き上げます。FRBの量的緩和とは異なりますが、国債市場の流動性改善を通じて、長期金利の上昇圧力を和らげる可能性があります。
国債需給の安定やインフレ鈍化への期待が高まれば、米金利の低下とFRBの利上げ観測後退を通じてドル円の下押し材料になりそうです。反対に、国債需要が弱いうえにCPIも強ければ、米金利が再上昇し、今週進んだ円高を巻き戻す可能性が高まります。
なお、11日のCPIは15〜16日のFOMCを前に確認する最後の主要な物価指標となるため、米金利やドル円の反応が大きくなる可能性があります。
ドル円テクニカル分析|158円が戻りの壁、155円割れなら154円台へ

ドル円の日足では、25日移動平均線が158.76円、100日移動平均線が159.96円、200日移動平均線が158.46円付近です。14日RSIは33.5です。
今週の急落で3本の移動平均線をすべて下回り、158円台は戻りの抵抗帯として意識されそうです。
上方向では、158.00〜158.76円に200日線、25日線が集まっています。ここを明確に回復できれば、急落後の戻りが続く可能性があります。
下方向では、155.20〜155.00円前後が重要です。ここを割り込むと、予想レンジ下限の154.00円前後が視野に入ります。RSIは33.5と売られ過ぎに近く、155円台では反発にも注意が必要です。
(各レート水準は執筆時点のもの)
【ドル円チャート 日足】

重要イベント・経済指標(2026年9月7日〜9月11日)
- 9月7日(月)
- アメリカ レイバーデーで米国市場休場
- イギリス ヒーリー財務相、主要政策演説
- 15:00 ドイツ 7月鉱工業生産(前月比)
- 18:00 ユーロ 4-6月期四半期域内総生産(GDP、確定値)
- 9月8日(火)
- 12:35 日本 5年債入札
- 08:30 日本 7月毎月勤労統計調査・現金給与総額(前年同月比)
- 08:50 日本 4-6月期四半期実質国内総生産(GDP、改定値)
- 26:00 アメリカ 3年債入札
- 9月9日(水)
- 26:00 アメリカ 10年債入札(リオープン)
- 9月10日(木)
- 08:01 イギリス 8月RICS住宅価格指数
- 08:50 日本 対外対内証券売買契約等の状況
- 10:30 日本 増・日銀審議委員、発言
- 15:00 ドイツ 8月消費者物価指数(CPI、改定値)
- 21:15 ユーロ 欧州中央銀行(ECB)政策金利・スタッフ経済見通し
- 21:30 アメリカ 8月卸売物価指数(PPI)
- 21:30 アメリカ 新規失業保険申請件数
- 21:45 ユーロ ラガルドECB総裁、定例記者会見
- 26:00 アメリカ 30年国債入札(リオープン)
- 26:40〜27:00 アメリカ 米財務省10〜20年国債バイバック
- 9月11日(金)
- 08:50 日本 7-9月期四半期法人企業景気予測調査
- 08:50 日本 8月国内企業物価指数
- 15:00 イギリス 7月月次国内総生産(GDP)
- 15:00 イギリス 7月鉱工業生産
- 15:00 イギリス 7月製造業生産指数
- 15:00 イギリス 7月貿易収支
- 21:30 アメリカ 8月消費者物価指数(CPI)
- 23:00 アメリカ 9月ミシガン大学消費者態度指数・速報値
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小野 直人
株式会社DZHフィナンシャルリサーチでの情報配信業務、上田ハーロー株式会社での調査・市場部門を経て、2021年より外為どっとコム総合研究所へ参画。ニュースベンダーとFX会社で培った「情報の目利き力」と「市場実務の経験」を武器に、個人投資家へ有益な情報を発信している。ドル円などの主要通貨に加え、トルコリラ・メキシコペソなどの新興国通貨、日経平均・NYダウといった株価指数(CFD)まで、幅広い金融商品の分析を得意とするマーケットアナリスト。
