ゴールドのスペシャリスト・池水雄一氏は、4,000ドルあたりで下値が堅いとみています。短期的に金利上昇などでゴールド価格が下落しても、長期では調整局面が良い買い場になる可能性が高いとの見方です。さらに年末にかけては、ゴールド価格が4,800~5,000ドル程度まで上昇する可能性も十分にあると分析しています。
今回は、池水氏が実際に使うチャートをもとに、ゴールド価格の買い場や4,000ドルが重要な理由、今後の金相場見通しについて解説します。
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ゴールドはどこで買う?短期の値動きは読めない
ゴールド投資を考えるうえで、気になるのが「どこで買えばいいのか」という点です。
ただし、池水氏は短期的な値動きを予測するのは難しいと指摘します。
マーケットでは、数秒後や数分後に何が起きるか分かりません。そのため、「この価格が必ず底値になる」と決めつけて売買するのは現実的ではありません。
一方、長期的にはゴールドが上昇しやすい理由があります。インフレが続けば、ドルや円などの通貨は価値が低下します。これに対して、ゴールドは実物資産です。そのため、通貨価値の低下に対するヘッジ手段として選ばれやすくなります。
池水氏は、こうした長期的な構造を踏まえ、ゴールドに対する強気の見方を維持しています。
4,000ドルが重要なサポートになっている理由
池水氏が現在の金相場で重視しているのが、4,000ドル近辺です。
ゴールド価格はこれまで何度も4,000ドルを一時的に割り込みました。しかし、そのたびに買いが入り、4,000ドル台を回復しています。
池水氏によると、一時的な4,000ドル割れは7回ほどありました。それでも下落が続かなかったことから、4,000ドル近辺には強い買い需要があるとみています。
買い手として意識されるのが、中央銀行や長期投資家です。短期トレーダーは、米金利の上昇などを材料にゴールドを売ることがあります。ただし、短期売買では、売ったポジションをいずれ買い戻す必要があります。一方、中央銀行や長期投資家は、短期的な値上がり益を目的としていません。
外貨準備や通貨価値の低下への備えとしてゴールドを保有します。そのため、こうした長期目線の投資家による買いは、金価格の下値を支える要因になりやすいと考えられます。
米利上げ観測が高まりゴールド下落!買い場になるか?
短期的なゴールド価格を左右する材料の一つが、米国の金融政策です。
ゴールドには金利が付きません。そのため、米金利が上昇すると、利息を得られる米国債などの魅力が相対的に高まります。結果として、ゴールドは売られやすくなります。
直近でも、米利上げ観測が高まったことで、ゴールドが下落する場面がありました。
ただし、池水氏は、この売りの中心は短期投資家だった可能性が高いとみています。
ゴールド価格は、それまで大きく上昇していました。その過程で、短期筋の買いポジションも積み上がっていたと考えられます。ジャクソンホール会議でのウォーシュ氏のタカ派的な発言を受けて米利上げ観測が強まり、利益確定や損切りの売りが出たという見方です。
つまり、今回の下落は長期的な上昇シナリオが崩れたというより、短期的なポジション調整と捉えることができます。池水氏自身は4,000ドル近辺で積極的に購入しており、足元の水準を追いかけて買う姿勢ではありません。一方、4,200ドルや4,100ドル程度まで下落すれば、再び購入を検討するとしています。さらに4,000ドル近辺まで下がれば、長期目線では魅力的な買い場になるとの見方です。
目先は米雇用統計と米インフレ指標に注目
短期的な金相場では、米国の経済指標が重要になります。
特に注目したいのが、米雇用統計やCPI、PCEデフレーターです。
雇用が強く、インフレも高止まりすれば、FRBが金融引き締めを続ける根拠になります。その結果、利上げ観測が強まり、米金利が上昇すれば、短期的にはゴールドの下押し要因になります。
反対に、雇用やインフレが弱ければ、利上げ観測は後退しやすくなります。この場合、ゴールドには買いが入りやすくなるでしょう。
池水氏も、米経済指標を受けてゴールド価格が大きく下落する場面があれば、長期投資の買い場として注目するとしています。
中央銀行の買いが金相場を支える
長期的な金相場を見るうえでは、中央銀行の動向も重要です。
中央銀行は、外貨準備資産としてゴールドを保有します。短期トレーダーのように頻繁に売買するわけではありません。そのため、中央銀行による買いは、中長期的に金価格を支える要因になりやすいと考えられます。
池水氏は、仮にゴールド価格が再び4,000ドル近辺まで下落すれば、中央銀行にとっても買いを入れやすい水準になる可能性があるとみています。
4,000ドル近辺で再び買いが入るかどうかは、今後の金相場を見るうえで重要なポイントです。
「ディベースメント取引」もゴールドのサポート要因に
もう一つの注目材料が、ディベースメント取引です。
ディベースメントとは、財政赤字や政府債務の拡大、インフレなどによって、法定通貨の価値が低下することを指します。通貨への不安が強まると、投資家は実物資産に資金を移しやすくなります。その代表的な投資先がゴールドです。
米国では政府債務が拡大しています。財政への懸念が強まれば、ドルや米国債などの資産に依存するリスクも意識されやすくなります。その結果、資産分散の一環としてゴールドを保有する動きが広がる可能性があります。
ゴールドは年末5,000ドルまで上昇する?
では、年末にかけてゴールドはどこまで上がるのでしょうか。池水氏は、4,800~5,000ドル程度まで上昇する可能性は十分にあるとみています。
背景にあるのは、米国の財政問題や政治・金融政策をめぐる不透明感です。
短期的には、米金利の上昇によってゴールドが売られる場面も考えられます。一方、中長期では、政府債務の拡大や通貨価値の低下に対する不安が残ります。こうした環境では、ゴールドが資産を守るための「保険」として選ばれやすくなります。
池水氏は、短期的な値動きよりも、こうした長期的な資金の流れを重視しています。
急上昇する局面ではFOMOに注意
ゴールドに強気だからといって、どの価格でも買えばよいわけではありません。
池水氏が警戒するのが、価格が短期間で急上昇する局面です。価格が大きく上がると、「いま買わなければ乗り遅れる」という心理が強まります。これがFOMO(Fear of Missing Out)です。
投資家が一斉に買いへ傾けば、価格は急騰しやすくなります。一方で、買いが一巡すれば、その反動で急落する可能性もあります。そのため、池水氏は過熱した相場を追いかけるよりも、調整局面を待つ姿勢を重視しています。
長期的にゴールドを保有する場合でも、高値を追いかけず、価格が下がった場面を狙うことが重要です。
まとめ
今後のゴールド相場では、4,000ドル近辺がサポートラインとして意識されます。
短期的には、米雇用統計やインフレ指標、FRBの金融政策によって金価格が大きく動く可能性があります。一方、中長期では、中央銀行による買いやディベースメント取引がゴールドを支える要因になります。
池水氏は、4,100~4,200ドルまで下がれば購入を検討し、4,000ドル近辺まで下落すれば、より積極的に買いたいとしています。また、年末にかけては4,800~5,000ドルへの上昇も視野に入れています。
重要なのは、短期的な値動きを追いかけるのではなく、通貨価値の低下に対するヘッジ手段としてゴールドを保有することです。池水氏は、調整局面では買い増しを検討しながら、長期目線で投資していくことが重要だと指摘しています。
1962年生まれ兵庫県出身。1986年上智大学外国語学部英語学科卒業後、住友商事株式会社入社、その後1990年クレディ・スイス銀行、1992年より三井物産株式会社で貴金属チームリーダーを務める。2006年よりスタンダードバンク東京支店副支店長、2009年に同東京支店で支店長に就任。2019年9月より日本貴金属マーケット協会(JBMA)代表理事に就任。一貫して貴金属ディーリングに従事し、世界各国のブリオン(貴金属)ディーラーでブルース(池水氏のディーラー名)の名を知らない人はいない。

