
豪ドル/円(AUD/JPY)相場は112円台後半(8月19日現在)で推移しています。春先から初夏までの114円台後半からは反落し、足元では109〜113円台で方向性を探る展開です。
現在の相場環境は、オーストラリアの金利と物価が、豪ドル/円(AUD/JPY)相場を上げやすくしています。他方で、中国景気や鉄鉱石価格の低迷、円買い圧力が上値を抑えています。そのため、チャートが一気に上昇するというよりも、109〜114円台というレンジで、「行ったり来たり」しやすい局面です。
豪ドル/円(AUD/JPY)相場を予想する上で、投資家が今、チェックすべき材料は、豪ドル側として、オーストラリアの金利・物価・雇用、日本円側として、日銀介入、中国景気、鉄鉱石の4つです。まずは豪ドル側の動向から見ていきましょう。
オーストラリアの金融政策、物価、雇用
金利が高めで、当面、利下げが見込みにくいことから、豪ドル/円(AUD/JPY)相場は上がりやすい状況です。一般的に金利の高い国の通貨は買われやすくなります。
オーストラリア準備銀行(RBA)は2026年5月5日に政策金利を4.10%から4.35%へ上げたあと、6月16日、8月11日と据え置きました(8月の会合は全員一致)。次回は9月29日です。物価が再上昇すれば、追加利上げの余地は残っています。
オーストラリアの物価は、2026年6月までの1年間で対前年比3.8%まで落ち着いてきました。RBAが確認する基調の物価も対前年比3.6%で、目標とする2〜3%よりも少し高めです。
物価が高いと金利は下げにくく、豪ドル高の材料になります。物価が大きく下がって、利下げが意識されると、豪ドル/円(AUD/JPY)相場は下がりやすくなります。
最新である6月の雇用統計をみると、働いている人が7万6,300人増えました。失業率は4.4%、働く意思のある人は67.0%でした。雇用が増えて、失業率が低くなると、「景気は良くなっている」と見られるので、豪ドル高の材料になります。これに対して、雇用減少、失業率上昇すると、豪ドルは下がりやすくなります。
オーストラリアの金利、物価、雇用は、豪ドル/円(AUD/JPY)相場を上げやすい状況となっています。
日本の政策金利と為替介入の余波
続いて日本円側の状況を見ていきましょう。円が買われる局面では、豪ドル/円(AUD/JPY)相場は下がりやすくなります。現在は下げやすい材料が揃っています。
日銀は6月16日、政策金利を1.0%程度とする方針を決め、6月17日から適用しています。日本の政策金利が上がると円は買われやすくなるので、豪ドルは下がりやすくなります。
財務省が公表した2026年4〜6月の為替介入(ドルを売って円を買う)は合計11兆7,349億円でした。豪ドル/円相場そのものへの介入ではありませんが、介入で円買いが広がると豪ドル/円(AUD/JPY)相場も下がりやすくなります。
オーストラリアの政策金利4.35%に対して日本は1.0%程度と金利差は依然として大きく、豪ドル/円相場の下値を支える要因となっていますが、ドル/円相場が急伸して、円高圧力が高まった場合には警戒が必要です。
中国の景況感と資源価格の影響
オーストラリアは資源や農産物の貿易で中国とつながりが深く、中国の景気が後退すると豪ドルは上がりにくくなります。一般的に、中国が好景気だと、オーストラリアから中国への輸出増の期待が膨らみ、豪ドル/円(AUD/JPY)相場は上がりやすくなります。逆に景気後退は下がりやすい、または上がりにくい材料になります。
1.中国の景況感
2026年7月の中国の国家統計局・製造業PMI(企業景況感を示す。50より上は拡大、50より下は縮小)は49.2でした。民間調査(RatingDog)は50.9と拡大を示していますが、前月の51.7からは下がっており、勢いに欠ける状況です。
2.鉄鉱石など資源価格
鉄鉱石はオーストラリアの代表的な輸出資源です。現状は豪ドル/円(AUD/JPY)相場をやや下げやすい材料となっています。価格上昇はオーストラリアの輸出に追い風で、豪ドル高の要因となります。逆に価格が弱くなれば、上がりにくくなります。
足元の鉄鉱石価格は、高値から下げたあと、上値が重くなっています。これに中国景気の弱さが重なると、豪ドル/円(AUD/JPY)相場はさらに上がりにくくなります。
ここまでの材料をみると、チャートは一気に一方向で上昇するというよりも、一定の幅のレンジ内で下げと上げが交互に出やすい状況です。
豪ドル/円相場のテクニカル分析
続いてチャートを使ったテクニカル分析から、相場の方向性を考えます。
●豪ドル/円相場の週足チャート

まず、週足チャートです。一気に上昇するというより、109〜113円台のレンジから「下がったところを見る」形状を示しています。
短期・中期・長期の移動平均線は上から並ぶ「上昇」を示す並びです。価格は短期線の上にあります。一方、ボリンジャーバンドは中央線付近からプラス1σラインの下にとどまり、MACDはシグナルを下回っています。上向きは残る一方で、勢いの弱さも並びます。
上げの目安は113円台後半(プラス1σライン)、下げの目安は111円台〜109円台後半が一例となります。週足の終わりが短期線の上を保てるかが「土台」で、保てそうなときは日足チャートを見ます。
●豪ドル/円相場の日足チャート

日足は週足の「土台」が保てそうなときの位置確認です。価格は短期・中期線の上、長期線は109円台半ばで下にあります。中央線は超えていますが、プラス1σライン(114円台前半付近)には届いていません。
下げの目安は111円台後半、上げの目安は113〜114円台が一例となります。中央線の上で定着するのか、マイナス1σラインを割り込むのかが、短期の分かれ目となるでしょう。
中長期の豪ドル/円相場のメインシナリオとリスクシナリオ
豪ドル側(金利・物価・雇用)の材料は豪ドル/円(AUD/JPY)相場をやや上げやすく、円側(中国・鉄鉱石)の材料は上げにくくなっています。相場は109〜114円台のレンジで動く想定で、「一方向への上昇」になるとは見ていません。
メインシナリオは2026年末から2027年にかけて、急騰・急落ではなく、上げ・下げを交互に試す展開です。下の目安は109円台後半、上の目安は113〜114円台です。週足の方向が保てそうなときだけ日足を見ます。
リスクは、中国経済の悪化と鉄鉱石価格の下落が同時に進むこと、日銀による介入警戒感が再燃すること、オーストラリアの景気が急落して利下げが意識されることです。この場合は109円台を下に抜けることも想定に入れておきましょう。
●今後チェックしたいポイント
1.中国PMI
2.鉄鉱石
3.オーストラリアの雇用統計(8月20日以降)
4.RBAの金融政策決定会合(9月29日)
5.米ドル/円相場の動向
金利差やスワップポイントだけで売買は判断せずに、為替レートの変動と分けて見てください。
岩田仙吉(いわたせんきち)氏株式会社タートルズ代表/テクニカルアナリスト
2004年、東京工業大学から一橋大学へ編入学。専門は数理経済学。卒業後、FX会社のシステムトレードプロジェクトのリーダーになり、プラットフォーム開発および自動売買プログラムの開発に従事。その後、金融系ベンチャーの立ち上げに参画。より多くの人に金融のことを知ってほしいと思い金融教育コンテンツの制作に集中するために会社を創業。現在は、ハイリスク・ハイリターンの投資手法ではなく、初心者でも長く続けられるリスクを抑えた投資手法を研究中。
