
執筆:外為どっとコム総合研究所 小野直人
執筆日時 2026年8月7日 17時20分
7月末の日米協調介入の影響が残るなか、ドル円は155円台から158円台へ反発し、市場は依然として高い警戒感にあります。米CPIや米国債入札など金利を左右するイベントが続き、FRBの追加利上げ観測と日米当局の円安けん制がどちらに傾くかが焦点です。本記事では、今回の急落の背景、来週の米経済指標の注目点、FRBの政策姿勢、そしてテクニカル分析による予想レンジ(156.00〜160.00円)を解説します。
予想レンジ:ドル円156.00〜160.00円
今週のドル円は158円台へ戻す、介入効果は短命
2026年8月3〜7日のドル円は、日米当局による円買い介入への警戒が相場を大きく左右しました。7月30日に日本が単独で円買い介入を実施し、翌31日には米財務省もニューヨーク連銀を通じてユーロ売り・円買いに動いたことが週初に明らかとなる中、3日のアジア市場では一時155.21円前後まで下落しました。ただ、4月30日以降の介入時に付けた安値155.03円前後は下回らず、その後は急落の反動から徐々に持ち直しました。
米JOLTS求人件数やADP雇用者数に続き、ISM非製造業景況指数も市場予想を下回ったものの、米イラン協議を巡る合意期待の後退から原油価格が上昇し、新規失業保険申請件数や労働生産性の底堅さも重なって米金利が押し上げられると、ドル円は158.55円前後まで値を戻しました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
来週のドル円見通し(2026年8月10日〜8月14日)
米CPI、米入札結果がドル円の方向性を左右
ドル円は、米CPIを中心とする経済指標を受けて、FRBの追加利上げ観測と、日米当局による円安けん制のどちらが強まるかを探る週になりそうです。米雇用統計の結果によって週の出発点は変わりますが、来週の中心は12日の米CPIと、11日から13日にかけて実施される米3年・10年・30年債の入札です。
CPIでは、サービス価格の粘着性が注目されます。物価の強さが確認されれば、9月FOMCでの利上げ観測が高まりやすくなりそうです。ウォーシュFRB議長も先行きの政策判断をデータ次第とする姿勢を示しており、月末27〜29日のジャクソンホール会議での講演内容への関心も高まりやすいとみられます。また、国債入札への警戒とともに米金利が上昇すれば、ドル円は上方向を試しやすくなるでしょう。翌13日のPPIも強ければ、こうした見方を補強する材料になりそうです。
米小売売上高と消費の強弱がドル円の方向性に影響
反対にCPIが落ち着けば、米金利上昇への警戒が後退し、ドル円には短期的な利益確定売りが入りやすくなります。14日の米小売売上高では、高金利下でも個人消費が持ちこたえているかを確認することになり、物価と消費がともに弱ければ、米金利低下を通じてドル円は下値を試しやすくなります。
円安加速時の追加介入・ベッセント砲への警戒
一方、円安が再び加速すれば、追加の日米協調介入への警戒も強まりそうです。ベッセント米財務長官は、必要であれば追加の日米共同介入への参加をためらわない姿勢を示しています。また、円相場を持続的に安定させるには日銀の金融政策正常化も重要との立場を示しています。8月31日から9月1日に開かれるG20財務相・中央銀行総裁会議に合わせた植田日銀総裁との会談が予想される中、日銀の9月利上げを意識した発言が改めて出るとの思惑はくすぶりやすく、ドル円は上昇するほど当局対応への警戒が強まり、不安定になりやすいでしょう。
基本線は米金利上昇を背景としたドル円の戻りを想定します。ただし、160円に近づくほど追加の日米共同介入や日銀の9月利上げへの警戒が強まりやすく、今回は「上がれば上がるほど上値リスクも増える」相場になりそうです。
ドル円テクニカル分析
ドル円は163.99円付近から155.22円まで急落した後、158円台まで反発しています。200日移動平均線(158.08円)を回復しましたが、75日線(160.27円)と25日線(161.48円)が上値に控えており、戻りの勢いはまだ限定的です。14日RSIは33.9まで持ち直しています。
売買面では、158.08円を維持できれば160.00円付近までの反発余地があります。ただし、160.00〜160.27円は戻り売りが出やすいでしょう。一方、158.00円を割り込むと157円台、さらに156.00円への下押しに注意が必要です。158.00円を攻防ライン、160.00円を上値の壁として見たい局面です。
【ドル円チャート 日足】

2026年8月10日〜8月14日の重要経済指標・イベントスケジュール
- 8月11日(火)
- 23:00 アメリカ 7月中古住宅販売件数
- 8月12日(水)
- 15:00 ドイツ 7月消費者物価指数(CPI、改定値)
- 21:30 アメリカ 7月消費者物価指数(CPI)
- 8月13日(木)
- 08:01 イギリス 7月英王立公認不動産鑑定士協会(RICS)住宅価格指数
- 08:50 日本 7月国内企業物価指数
- 15:00 イギリス 4-6月期四半期国内総生産(GDP、速報値)
- 15:00 イギリス 6月月次国内総生産(GDP)
- 15:00 イギリス 6月鉱工業生産
- 15:00 イギリス 6月商品貿易収支
- 15:00 イギリス 6月貿易収支
- 18:00 ユーロ 6月鉱工業生産
- 21:30 アメリカ 7月卸売物価指数(PPI)
- 21:30 アメリカ 新規失業保険申請件数
- 21:15 アメリカ クリーブランド連銀総裁、発言
- 21:40 アメリカ リッチモンド連銀総裁、発言
- 8月14日(金)
- 08:50 日本 対外対内証券売買契約等の状況
- 15:45 フランス 7月消費者物価指数(CPI、改定値)
- 18:00 ユーロ 4-6月期四半期域内総生産(GDP、改定値)
- 18:00 ユーロ 6月貿易収支
- 21:30 アメリカ 7月小売売上高
- 23:00 アメリカ 6月企業在庫
- 23:00 アメリカ 8月ミシガン大学消費者態度指数・速報値
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