
トルコリラ円を保有していると、急落のニュースを見るだけで不安が強くなることがあります。そうした局面で支えになるのは、「どこまで下落し得るのか」「そのとき自分のポジションは耐えられるのか」を数字で把握しておくことだと思われます。
この記事では、急落時に起こり得る値動き、評価損、ロスカットの発生条件、そして長期保有を続けるための数量管理の考え方を順に整理します。
円買い介入でトルコリラ円は3.30円へ、3円割れまでの下落率は約9%
先週までトルコリラ円は3.40円前後で推移していましたが、円買い介入を受けて足元は3.30円前後となっています。3円までは0.30円、率にして約9.1%です。
先月末の海外市場でも円買いが急速に進み、トルコリラ円は約4.5%下落しました。一日の値動きが4%を超える場面と、残された9%という距離を並べると、この距離の見え方は変わってきます。
この距離がどのように縮まるのかを見るため、まずトルコリラ円の価格形成から確認します。
トルコリラ円のレートはドル円とドル/トルコリラの複合変動で決まる
トルコリラ円の水準は、概ね次の式で決まります。
TRY/JPY = USD/JPY ÷ USD/TRY
つまり、円高単独でもリラ安単独でも下落しますが、片方だけで3円に届くには相応の変動幅が必要になります。
ドル円・ドル/トルコリラ別に見る、トルコリラ円3円到達シナリオ
| シナリオ | ドル円 | ドル/トルコリラ | トルコリラ円 |
|---|---|---|---|
| 現状の概算 | 157円 | 47.6リラ | 3.30円 |
| 円高だけで下落 | 143円 | 47.6リラ | 3.00円 |
| リラ安だけで下落 | 157円 | 52.3リラ | 3.00円 |
| 円高+小幅なリラ安 | 150円 | 50.0リラ | 3.00円 |
| 世界的リスクオフ | 145円 | 50.0リラ | 2.90円 |
※表は横にスクロールできます
円高だけ、リラ安だけで3円に届くには9~10%の変動が必要
円高だけで3円に届くには、ドル円が157円から143円まで約9%下落する必要があります。リラ安だけなら、ドル/トルコリラが47.6リラから52.3リラまで約10%上昇しなければなりません。
円高とリラ安が重なれば、それぞれ5%前後の変動で3円割れが視野に入る
一方で、表の「円高+小幅なリラ安」の行では、ドル円150円・ドル/トルコリラ50リラでトルコリラ円は3円に到達します。ドル円は約4.5%、ドル/トルコリラは約5%の変動です。
円高とリラ安が同時に進めば、単独変動の半分程度の動きで3円に届く、ということになります。介入後の相場は方向感が定まりにくく、両者がそろう局面には注意が必要とみられます。
さらに円高が進み、ドル円145円・ドル/トルコリラ50リラとなれば、トルコリラ円は2.90円です。世界的なリスクオフでは、3円が下値のめどとして機能しない可能性もあるとみられます。
3円割れに相当するトルコリラ円の急落は、過去19年で21波以上
こうした複合変動がどの程度の頻度で起きてきたのかを、過去データから確認します。
ロスカット級の急落を10営業日の下落率で区切って集計
本稿は、呼び方ではなく下落率で区切りました。公開されている日足データから、ある日の高値と10営業日以内の安値の下落率を計算し、重複する期間は一つの急落としてまとめています。
| 10営業日以内の下落率 | 確認された急落の波 | 平均的な発生間隔 |
|---|---|---|
| 10%以上3円割れに相当する約9.1%に最も近い区分 | 21波 | 約11カ月に1回 |
| 11.76%以上 | 15波 | 約1年3カ月に1回 |
| 15%以上 | 7波 | 約2年9カ月に1回 |
| 20%以上 | 3波 | 約6年5カ月に1回 |
※表は横にスクロールできます
集計期間は2007年4月から2026年7月まで。
3.30円から3円までの約9.1%は、集計区分では「10%以上」をやや下回ります。その10%以上の下落だけで21波、単純平均で約11カ月に1回です。9.1%以上で区切れば、波数はこれを上回るとみられます。
急落は等間隔では起きず、一つの危機のなかに集中する
ただし、急落は等間隔では起きません。数年間発生しない時期がある一方、2008~2009年、2018年、2021年のように、一つの危機の中で集中することもあります。「次は11カ月後」と読む数字ではなく、長く保有する間にどこかで遭遇し得る変動と捉える性質の数値です。
2019年1月のフラッシュクラッシュでは、買いポジションが約24%減少
代表例が2019年1月3日のフラッシュクラッシュです。日本の正月休みで参加者が少ない早朝に円買いが急速に進み、トルコリラ円は高値20.84円から安値18.27円まで下落しました。下落率は約12.3%です。
この日、外為どっとコムの顧客が保有するトルコリラ円の買いポジションは、前日から約24%減少しました。短時間の急落に耐えられず、ロスカットとなったポジションが多かった可能性があります。[外為どっとコムの検証]
トルコ中銀総裁の解任と通貨安容認発言でも、約11%の急落が発生
2021年3月には、トルコ中銀総裁の突然の解任を受けて窓を開けて下落し、週の変動率は11.73%に達しました。同年11月23日には、エルドアン大統領の通貨安容認発言を受け、前日比11.4%の下落となっています。
いずれも、現在の3.30円から3円までの約9.1%を上回る規模です。90日移動平均線を30%以上下回るような歴史的暴落でなくても、3円割れを引き起こす値動きは繰り返されてきた、ということになります。
ロスカットの判定基準は終値ではなく、取引時間中に付けた価格
相場急変時には流動性が低下し、スプレッドも拡大します。そこへロスカットの売りが重なれば、下落はさらに増幅されかねません。
終値でロスカットにならないレートに回復したとしても、取引時間中にロスカット水準に達すれば、ポジションは決済されます。相場が戻っても、失われたポジションは戻りません。スワップポイントを受け取るために積み上げてきた時間も、そこで途切れます。
急落を持ちこたえた方にとって確認しておく意味があるのは、この点だと思われます。次に、自分のポジションが3円でどれだけの評価損になるのかを見ていきます。
トルコリラ円の必要保証金は1Lot140円、3円までの評価損は約300円
トルコリラ円は価格水準が低いため、必要保証金も小さくなります。直近時点で、1Lot(1,000通貨)あたり140円です。[取引通貨ペア別の保証金一覧]
スワップポイントは数量に比例するため、積み増しの動機も働きます。
その距離を金額に置き換えます。3.30円から3円までは0.30円。1Lotあたりの評価損は約300円で、必要保証金140円の約2.1倍にあたります。
保有Lot数別に見る、必要保証金と3円到達時の評価損
| 保有数量 | 必要保証金 | 3円までの評価損(概算) |
|---|---|---|
| 10Lot(1万通貨) | 1,400円 | 約3,000円 |
| 100Lot(10万通貨) | 1万4,000円 | 約3万円 |
| 1,000Lot(100万通貨) | 14万円 | 約30万円 |
※表は横にスクロールできます
必要保証金を基準に数量を決めると、3円割れの手前で余力が尽きやすい構造になります。距離が0.40円から0.30円に縮まったぶん、評価損の絶対額は小さくなりましたが、そこに到達するまでの値幅も同じだけ短くなっています。
実際のロスカットは口座全体の維持率で判定されますので、どこまで耐えられるかはご自身の口座でご確認ください。保証金額も相場水準に応じて見直されるため、140円はその時点の数字です。
ポジション量は相場観と切り離して、長期保有の前提から決められる
約9.1%という数字は、遠さの根拠にも、近さの根拠にもなります。単独の変動としては9~10%が必要で、重なった変動としてはそれぞれ5%前後で足りる。21波という頻度も、「めったに起きない」とも「長く持てば出会う」とも読めます。
3円割れは筆者のメインシナリオではありません。一方で、介入後の値動きと過去の急変動を並べれば、想定しなくてよいほど遠い水準でもないとみられます。
発生時期は予測できなくても、3円割れに相当する約9%以上の急落が繰り返されてきたことは、過去の事実から確認できます。
高いスワップポイントを長く受け取り続けるうえで効いてくるのは、3円割れを当てることではありません。一時的に割り込んでも決済されず、相場が落ち着くまで持ちこたえられる数量にしておくことです。数量を抑えればスワップも減ります。ただし途中で退場すれば、受け取り自体が終わります。どちらの相場観に立っても困らない数量に整えておくことは、予想とは別に決められる部分とみられます。
いま口座で確認しておきたい4つのチェック項目
- 保有Lot数を確認する
- 3円まで下がった場合の評価損を計算する
- 口座の余力と維持率を確認する
- ロスカット水準を把握する
外為どっとコムの「外貨ネクストネオ」には、ロスカット水準を試算できるロスカットシミュレータがあります。現在の保有数量と保証金の状況を入力すれば、どの価格帯でロスカットが発生するかを確認できます。記事で整理した数字を、一度ご自身の口座で当てはめてみてはいかがでしょうか。
※評価損の概算は、スワップポイントや手数料を含まない単純計算です。
