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ドル円見通し|為替介入観測でドル円急落も円安は継続?内田稔氏がジャクソンホール・米CPI・雇用統計の注目ポイントを徹底解説

8月のドル円相場は、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策を占う重要イベントが相次ぐことから、大きな値動きとなる可能性がある。

特に、市場が注目するのは米7月雇用統計米7月消費者物価指数(CPI)、そして8月下旬に開催されるジャクソンホール会議だ。これらの結果次第では、FRBの追加利上げ観測が一段と高まり、ドル高・円安が進む可能性がある。

本記事では、高千穂大学商学部教授の内田稔氏へのインタビューをもとに、8月のドル円相場の注目ポイントを整理する。

【必見!】内田稔氏8月のドル円見通し動画

 

 

ジャクソンホール会議がFRBの金融政策を占う重要イベントに

8月下旬に開催されるジャクソンホール会議は、本来、各国中央銀行関係者や経済学者が金融政策について議論する国際会議である。

しかし近年は、FRB議長が今後の金融政策の方向性を示唆する場として、市場から高い注目を集めている。

現在、市場では年内1~2回程度の追加利上げが織り込まれており、仮に9月利上げを視野に入れているのであれば、ウォーシュ議長がジャクソンホール会議で市場との対話を始める可能性がある。もっとも、ウォーシュ議長は市場との対話において政策の方向性を事前に示し過ぎることを避ける傾向があり、今回も明確なシグナルを発しない可能性がある。

そのため、8月のジャクソンホール会議では「何を語るか」だけでなく、「何を語らないか」にも市場の関心が集まるだろう。

米CPIと雇用統計が9月利上げ観測を左右

ジャクソンホール会議に先立ち、市場では米7月雇用統計米7月CPIが最大の注目材料となる。6月分はいずれも市場予想を下回ったことで、FRBには利上げを急ぐ必要はないとの見方が広がった。

WTI原油(日足チャート) 外為どっとコム「CFDネクスト」

WTI原油(日足チャート) 外為どっとコム「CFDネクスト」

しかし、7月は原油価格が急反発しており、エネルギー価格の上昇がインフレ率を押し上げる可能性もある。

内田氏は、ウォーシュ議長がインフレとの戦いは終わっていないとの姿勢を一貫して示している点を指摘する。仮にCPIが市場予想を上回り、雇用市場の底堅さも確認されれば、市場では9月利上げ観測が再び強まり、ドル買いが加速する可能性がある。

一方で、両指標が市場予想並み、あるいは弱い内容となれば、追加利上げは12月のみとの見方が維持される可能性が高い。

ドル円は165円を試すシナリオも視野

足元のドル円相場は、円安というよりも「ドル高」が主導している。

背景には、米景気の底堅さ中東情勢の緊迫化による原油価格の上昇に加え、FRBの追加利上げ観測の高まりがある。

実質金利(政策金利-インフレ率)は依然としてマイナス圏にある

日本側では依然として実質金利がマイナス圏にあることから、ドル高局面では円が売られやすい環境が続いている。

ドル指数の推移

内田氏は、米雇用統計やCPIが市場予想を上回り、ドル指数(DXY)が102を上抜けるような展開となれば、ドル円は165円を試す可能性が十分にあるとの見方を示した。

米国による円安けん制もドル円のリスク要因

為替介入を巡っては、日本政府による単独介入だけでなく、米国側の対応にも注目したい。日本がドル売り・円買い介入を実施する場合、保有するドル資産や米国債を活用して介入資金を確保することになる。

介入規模は米国債市場全体からみれば影響は限定的とみられるものの、米国側が日本による継続的な米国債売却を容認するとは考えにくい。そのため、米国が実際の協調介入に加わる可能性は低いとしても、レートチェックや当局者の発言を通じて、ドル円の上昇をけん制する可能性はある。

8月は、日本政府・日銀による為替介入に加え、米国当局から円安・ドル高をけん制する発言が出る可能性も、リスク要因として意識しておきたい。

ユーロドルがドル高・ドル安の判断材料に

内田氏は、ドル円だけでなくユーロドルの動向にも注目すべきだと指摘する。

ユーロ/ドル(日足チャート) 外為どっとコム「外貨ネクストネオ」

ユーロドルは世界で最も取引量が多い通貨ペアであり、その動きがドル全体の強弱に大きな影響を与える。

例えば、ユーロドルが下落し、ユーロ安・ドル高が進めば、ドル指数の上昇を通じてドル円にも上昇圧力がかかりやすい。

現在のユーロドルが1.14付近から1.13方向へ下落し、さらに1.13を割り込む展開となれば、ドル指数が102を上抜け、ドル円が165円方向へ上昇するシナリオも現実味を増す。

反対に、ユーロドルが1.15方向へ上昇すれば、ドル安要因となり、ドル円の上値を抑える可能性がある。

ドル円・ユーロ円・ユーロドルをセットで確認

ドル円の値動きがドル主導なのか、円主導なのかを判断するためには、ドル円だけを見るのでは不十分だ。ドル円、ユーロ円、ユーロドルの3通貨ペアをあわせて確認することで、相場の動きを把握しやすくなる。

ドル円とユーロ円がともに上昇する一方で、ユーロドルが横ばい圏で推移している場合は、円安が相場を主導していると考えられる。一方、ドル円の上昇とユーロドルの下落が同時に進んでいる場合は、ドル高が相場全体をけん引している可能性が高い。

メキシコペソ円は10円が次のターゲット

ドル円以外では、メキシコペソ円にも注目が集まる。

メキシコペソ/円(月足チャート) 外為どっとコム「外貨ネクストネオ」

メキシコペソ円は2024年夏に9.45円付近まで上昇した後、約3割下落したものの、足元では再び当時の高値に迫っている。9.45円を明確に上抜ければ、心理的節目となる10円を意識する展開も考えられる。

背景には、メキシコと日本の金利差を利用したキャリートレードへの需要や、円安基調の継続がある。

相場では過去の高値を上抜けた銘柄や通貨が買われやすくなることがあり、9.45円を突破した場合には、上昇に弾みがつく可能性もある。

USMCA見直しとトランプ政権の関税政策に注意

もっとも、メキシコペソ円には複数のリスク要因もある。

特に注意したいのが、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の見直しと、トランプ政権による関税政策だ。

通商政策を巡る不透明感が高まれば、メキシコへの投資を控える動きが広がり、メキシコペソの下落要因となる可能性がある。

また、新興国通貨は主要通貨と比べて値動きが大きく、短期間で急落することもある。メキシコペソ円の上昇余地に注目する一方、高いボラティリティには十分な注意が必要だ。

8月のドル円見通しまとめ

8月相場では、米7月雇用統計米7月CPIジャクソンホール会議が、ドル円の方向性を決める重要イベントとなる。

米国経済の底堅さが確認され、FRBの9月利上げ観測が高まれば、ドル高が進み、ドル円は165円を試す可能性がある。

また、ドル円の先行きを判断するうえでは、ユーロドルの1.13~1.15の方向性や、メキシコペソ円が9.45円を上抜けるかどうかも重要な手掛かりとなる。

8月は米経済指標とFRBの政策姿勢、為替介入リスクが交錯する、値動きの大きい相場となりそうだ。

www.gaitame.com

 

uchida.jpg 国際公認投資アナリスト
内田 稔(うちだ・みのり)氏
高千穂大学商学部教授。東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。マーケット業務を歴任し、2012年から2021年まで外国為替のチーフアナリスト。2022年4月から現職。J-money誌の東京外国為替市場調査では2013年より9年連続個人ランキング1位。現在、教育研究に加え、(株)CCIアセットパートナーズで為替アナリストの実務も継続。また自身のユーチューブチャンネル「内田稔教授のマーケットトーク」も主宰
nakamura.jpg 外為どっとコム総合研究所 情報企画部 為替アナリスト
中村 勉(なかむら・つとむ)
米国の大学で学び、帰国後に上田ハーロー(株)へ入社。 8年間カバーディーラーに従事し、顧客サービス開発にも携わる。 2021年10月から(株)外為どっとコム総合研究所へ入社。 優れた英語力とカバーディーラー時代の経験を活かし、レポート、X(Twitter)を通してFX個人投資家向けの情報発信を担当している。
経済番組専門放送局ストックボイスTV『東京マーケットワイド』、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。