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【2026年ドル円見通し】ドル円165円到達は近い?FOMC・日銀会合で円安加速の可能性|内田稔

2026年7月、FOMCと日銀金融政策決定会合という二大イベントを控え、為替市場は重要な局面を迎えている。元東京銀行(現三菱UFJ銀行)でマーケット業務や外国為替のチーフアナリストを歴任した高千穂大学教授・内田稔氏に、2026年のドル円相場見通しを聞いた。

【必見!】内田稔氏のドル円見通し動画

 

 

FOMCは据え置き濃厚も、記者会見はタカ派トーンに警戒

市場では利上げ確率を3割程度織り込む声もあるが、今回のFOMCは政策金利据え置きが有力とみられる。米国の景気は底堅く推移し、インフレ率は目標の2%を上回る状態が続いているため、FRB高官からはタカ派的な発言が目立つ。一方で6月の雇用統計や消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回ったことから、利上げは見送られる公算が大きい。

最近のFED高官発言はややホーキッシュ

ただし記者会見では、ウォーシュ議長がインフレファイターとしての姿勢を強調し、市場にやや意外感を与える可能性がある。事前にフォワードガイダンスを示すことに消極的な同議長のスタンスもあり、会見自体はタカ派寄りに受け止められ、ドル買い要因となる展開が想定される。

年内の利上げタイミングは12月が本命

OISのインプライド金利とドル指数

OIS市場では年内1.6回程度の利上げが織り込まれている。9月に利上げする場合は例年通りジャクソンホール会議での示唆が先行するはずだが、フォワードガイダンスに慎重な議長の姿勢を踏まえると、サプライズ利上げとなるシナリオも排除できない。
もっとも、11月の中間選挙への配慮や、インフレ・雇用双方が急いで動く必要のない水準にあることを踏まえれば、選挙後の12月に利上げを実施するというのがメインシナリオとなる。9月に利上げがあるかどうかは、8月分までの雇用統計の内容が鍵を握る。

日銀会合は据え置きも植田総裁のタカ派発言に注意

7月30〜31日開催の日銀会合も、政策金利は据え置きが妥当な見通しだ。ただし、これまでの緩和度合いの調整を継続する方針は明確に示すとみられる。1ドル164円に迫る円安進行を受け、インフレへの波及を警戒する日銀が、記者会見でタカ派的な発言を強める可能性は十分にある。4月会合では米国とイランの緊張を理由に利上げを見送った経緯があるが、今後は物価上振れリスクが顕在化すれば利上げに動く姿勢を示唆する可能性があり、株式市場が一時的に混乱するリスクも念頭に置く必要がある。

日銀利上げでも円安は止まらない構造的要因

実体経済やマーケットに重要なのは実質金利

日本の実質短期金利(政策金利からインフレ率を差し引いたもの)は依然マイナス圏にあり、これが円安の根本要因となっている。現在の政策金利1%が年内に1.25%まで引き上げられても、直近6月のCPIは前年比1.7%まで再加速しており、実質金利のマイナス解消には至らない見通しだ。実質金利がプラス転換に近づくのは、来年前半にインフレが落ち着き、日銀がさらに利上げ(政策金利1.5%程度)を実施した後になるとみられる。

長期金利上昇でも円高にならない理由

長期金利の決定要因と為替相場との関係

興味深いのは、実質長期金利はすでにプラス圏に転じているにもかかわらず、円安に歯止めがかかっていない点だ。長期金利上昇の中身が「期待潜在成長率」の高まりによるものであれば円高要因となるが、現状は「期待インフレ率」と「リスクプレミアム」の上昇が主因であり、これは通貨にとってネガティブに働く。

日本の長期金利とBEIおよびTP

このプレミアム上昇の背景には、日銀の国債買い入れ減額による需給悪化と、積極財政による国債増発観測がある。日本の財政破綻リスクを売買するCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)市場のスプレッドは大きく動いておらず、財政破綻懸念というよりも需給要因が金利上昇を主導している構図だ。高市政権が掲げる「期待潜在成長率」を引き上げる政策方針と、市場が注視するインフレ率や財政プレミアムとの間にはズレがあり、これが円安是正を妨げる一因となっている。

11月の米中間選挙、マーケットの警戒ポイント

歴史的に大統領支持率が45%を下回ると与党が中間選挙で議席を大きく失う傾向があり、現状の僅差の議会構成を踏まえると、上下両院で民主党が過半数を奪う「ねじれ議会」の可能性が高い。これが実現した場合、想定されるリスクは次の3点だ。

債務上限・政府閉鎖リスクの再燃。格付け機関による米国債格下げ観測に発展する可能性がある。
トランプ大統領による外交面での強硬姿勢。グリーンランド領有権主張などの動きが、大統領権限で実行可能な数少ない領域として先鋭化するリスクがある。
安全保障を理由とした関税発動。議会承認なしに大統領権限で発動できる関税措置が再燃する可能性がある。

米景気自体は底堅いため、混乱がなければ年末に向け株式相場はラリーする可能性もあるが、中間選挙後の政治的混乱には備えが必要となる。

2026年のドル円相場見通し 年末165円前後を想定

163円台への上昇は中東情勢の不安定化に伴う原油高・ドル高が主因だが、円が売られやすい根本要因は実質短期金利のマイナスにある。この状況が解消される見込みは薄く、年末に向けて円高トレンドに転じる可能性は低いとみられる。

ドル指数の推移

ドル指数(DXY)が節目の102を上抜けた場合、ドル円は165円を早期に突破し、170円接近もあり得る展開だ。一方で、160円突破が意識されれば日銀の10月利上げ観測が強まり、それが来年1〜3月の追加利上げ観測につながることで、年末にかけては165円前後で上昇が一服するとの見方が示された。

為替介入の効果は限定的、外貨準備にも制約

介入データ

2022年以降の介入データを分析すると、ドルが堅調な局面での介入効果は短命に終わる傾向がある。介入後に高値を回復するまでの期間は、最短でも13営業日、多くは32〜42営業日程度にとどまり、1〜2カ月で元の水準に戻ってしまうケースが目立つ。ドル安局面への転換と重ならなければ、介入は時間稼ぎの域を出ないのが実情だ。

外貨準備高は約170兆円とされるが、昨年の日米貿易交渉に伴う対米投資資金の確保にも外貨準備の一部が充当される見通しがあり、介入に無制限に使えるわけではない。日米間のスワップ取り決めやレポ取引を活用した資金調達の可能性も指摘されるが、公式文書上はあくまで国内金融システムへのドル供給が目的とされており、為替介入への転用が明記されているわけではない。1998年の日米協調介入のような事例はあるが、現在の米財務長官は「円安が問題なら日銀が利上げすればよい」とのスタンスであり、実弾を伴う協調介入のハードルは高いとみられる。

まとめ

2026年後半の為替市場は、FOMC・日銀会合という金融政策イベントに加え、米中間選挙という政治イベント、さらに日本の財政政策への市場の警戒という複数の要因が絡み合う展開が予想される。ドル円は年末にかけて165円前後で推移するとの見方が示された一方、政治・財政面での波乱要因も多く、ボラティリティの大きい相場展開への備えが求められる局面といえそうだ。

 

uchida.jpg 国際公認投資アナリスト
内田 稔(うちだ・みのり)氏
高千穂大学商学部教授。東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。マーケット業務を歴任し、2012年から2021年まで外国為替のチーフアナリスト。2022年4月から現職。J-money誌の東京外国為替市場調査では2013年より9年連続個人ランキング1位。現在、教育研究に加え、(株)CCIアセットパートナーズで為替アナリストの実務も継続。また自身のユーチューブチャンネル「内田稔教授のマーケットトーク」も主宰
kanda.jpg 外為どっとコム総合研究所 シニア為替アナリスト
神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。