
豪ドル円は、豪6月雇用統計が強い結果となれば、豪準備銀行(RBA)の追加利上げ観測を背景に上昇しやすい展開が予想される。一方、雇用の鈍化や失業率の上昇が確認されれば、利上げ観測が後退し、豪ドル売りが強まる可能性がある。7月20日週は23日の豪雇用統計を最大の焦点に、豪ドル円が115円台を試すかが注目される。
【必見】中村アナリストの豪ドル/円相場見通し
豪ドル円は113円台後半まで上昇
前週の豪ドル円は112.32円前後で取引を開始した後、113.88円前後まで上昇した。
前週は豪州国内に目立った経済指標がなく、米国のインフレ指標や中東情勢、原油価格などの外部要因が豪ドル円の値動きを左右した。
14日に発表された米6月消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回る伸びとなったことで、米連邦準備制度理事会(FRB)が早期に追加利上げへ動くとの見方が後退した。米金利と米ドルに低下圧力がかかるなか、豪ドルは対米ドルで買い戻され、豪ドル円の上昇につながった。
加えて、中東情勢の混乱を背景に原油価格が高止まりしたことも、資源国通貨である豪ドルの支援材料となった。
前週までの豪ドル円は、米ドル高によって豪ドルの上値が抑えられる場面が目立っていた。しかし、米CPIの下振れを受けて米ドル高が一服したことで、豪ドルは上値を試しやすい環境へ変化している。
今週最大の焦点は豪6月雇用統計
7月20日週の最大の注目材料は、23日に発表される豪6月雇用統計である。
豪州の雇用統計では、新規雇用者数と失業率が発表される。単純に雇用者数が増えたかどうかだけでなく、雇用の内訳や労働市場全体の需給を確認する必要がある。

前回5月分の雇用統計では、雇用者数が大幅に増加したものの、非常勤雇用の増加が中心だった。そのため、数字の見た目ほど労働市場が強いとは受け止められず、RBAの追加利上げ観測を大きく高めるには至らなかった。
今回の6月雇用統計では、雇用者数の増加に加え、正規雇用が伸びているかが重要となる。
正規雇用を中心に雇用者数が増加し、失業率が低下すれば、豪州の労働市場は依然として逼迫していると判断されやすい。その場合、賃金上昇やサービス価格の上昇が続くとの警戒が強まり、RBAの追加利上げ観測を後押しする可能性がある。
一方、雇用者数が市場予想を下回り、失業率が上昇した場合は、労働市場の減速が意識される。
RBAの追加利上げ観測が後退し、豪ドル円には下押し圧力がかかる可能性がある。
正規雇用の伸びが重要
豪雇用統計を見る際は、雇用者数、雇用の内訳、失業率の3点を確認したい。
最も注目されやすいのは新規雇用者数だ。市場予想を上回る増加となれば、豪州経済の底堅さが意識され、豪ドル買いにつながりやすい。ただし、前回のように非常勤雇用の増加が中心だった場合、数字の強さをそのまま労働市場の逼迫と判断することはできない。
安定した所得や個人消費につながりやすい正規雇用が増えているかが重要となる。

失業率も、RBAの金融政策を考えるうえで欠かせない。
失業率が低下すれば、企業の人手不足が続き、賃金上昇圧力が残っていると判断されやすい。
雇用者数の増加、正規雇用の拡大、失業率の低下がそろえば、RBAがインフレ抑制のために追加利上げへ動くとの見方が強まり、豪ドル円の上昇材料になるだろう。反対に、雇用者数が減少し、正規雇用が伸びず、失業率も上昇する場合は、豪ドル売りが強まりやすい。
RBAの追加利上げ観測は強まるか
豪州では、インフレ圧力が完全に沈静化したとは言い切れない。
労働市場が堅調な状態を維持すれば、賃金の上昇を通じてサービス価格の伸びが続く可能性がある。RBAにとって、労働市場の強さは、インフレが長期化するリスクを判断する重要な材料となる。そのため、今回の雇用統計が強い内容となれば、市場ではRBAの追加利上げ観測が高まりやすい。
RBAの利上げ観測が強まれば、豪州の金利が高止まりするとの見方から、豪ドルの支援材料となる。
もっとも、雇用統計が強い結果となっただけで、RBAの追加利上げが確実になるわけではない。RBAは今後発表される消費者物価指数や賃金関連指標、個人消費の動向なども確認しながら、金融政策を判断するとみられる。
今後の物価指標でもインフレの粘着性が確認されれば、雇用統計の強さと合わせて、追加利上げ観測が一段と高まる可能性がある。
中国景気の減速は豪ドルのリスク要因
豪ドルを見るうえでは、中国経済の動向も引き続き重要である。
中国は豪州最大の輸出先であり、豪州が輸出する鉄鉱石や石炭などの主要な需要国でもある。そのため、中国景気が減速すると、豪州の資源輸出や交易条件が悪化するとの見方から、豪ドルが売られやすくなる。
前週は中国の4-6月期GDP、小売売上高、鉱工業生産などの経済指標が発表された。
重要イベントを通過したことで、目先の警戒感はやや後退したものの、中国経済の力強い回復が確認されたとは言いにくい。特に中国では、不動産市場の低迷や個人消費の弱さが引き続き懸念材料となっている。
今後、中国景気の減速が一段と意識されれば、鉄鉱石などの資源需要が弱まるとの見方から、豪ドルの上値が抑えられる可能性がある。一方、中国政府による景気支援策への期待が高まった場合や、消費・生産関連の指標に改善が見られた場合は、豪ドルの支援材料となる。
豪ドル円が115円台へ上昇するためには、豪州の雇用統計だけでなく、中国景気に対する過度な懸念が後退することも必要となりそうだ。
原油高は豪ドルを支える一方、リスク回避には注意
中東情勢を背景とした原油価格の高止まりも、豪ドル相場を左右する。
豪州は鉄鉱石や石炭、液化天然ガスなどを輸出する資源国である。原油を含む商品価格が上昇する局面では、豪州の輸出収入や交易条件が改善するとの期待から、豪ドルが買われやすい。前週も原油価格の高止まりが豪ドルを支え、豪ドル円の上昇要因となった。
ただし、中東情勢がさらに悪化した場合は注意が必要だ。
地政学リスクが高まり、市場全体が強いリスク回避に傾けば、投資家は豪ドルなどのリスクオン通貨を売る可能性がある。原油高は資源国通貨である豪ドルの支援材料となる一方、中東情勢悪化によるリスク回避は豪ドルの売り材料となる。
今後も原油価格の上昇だけでなく、その背景にある中東情勢や市場心理を確認する必要がある。
豪ドル円の見通し:豪雇用統計で115円台を試すか

7月20日週の豪ドル円は、豪6月雇用統計の結果を受けて、値動きが大きくなる可能性がある。
正規雇用を中心に雇用者数が増加し、失業率が低下すれば、豪州の労働市場は依然として堅調だと判断されやすい。
賃金やサービス価格の上昇が長引くとの見方から、RBAの追加利上げ観測が強まり、豪ドル円は114円台から115円台を試す展開が予想される。一方、雇用者数が市場予想を下回り、失業率が上昇した場合は、労働市場の減速が意識される。RBAの追加利上げ観測が後退し、豪ドル円には下押し圧力がかかる可能性がある。
中国経済の減速懸念も、豪ドルの上値を抑える要因となる。
中国の不動産市場や個人消費の低迷が続き、鉄鉱石などの資源需要が弱まるとの見方が強まれば、豪ドルは買われにくくなるだろう。
また、中東情勢の悪化にも注意したい。
資源価格の上昇は豪ドルの支援材料となる一方、市場全体でリスク回避の動きが強まれば、豪ドル売りにつながる可能性がある。
前週の豪ドル円は、米CPIの下振れによる米ドル高の一服や、原油価格の高止まりを背景に113円台後半まで上昇した。今週は豪6月雇用統計が、この上昇基調を維持できるかを左右する。
雇用者数だけでなく、正規雇用の伸びと失業率を確認し、RBAの追加利上げ観測が強まるかを見極めたい。
強い結果がそろえば、豪ドル円が115円台を試す可能性は高まりそうだ。
