
執筆:外為どっとコム総合研究所 小野直人
執筆日時 2026年7月17日 17時20分
米国の関税政策や中東情勢、国内政治・日銀を巡る思惑によってドル円の値幅が広がる可能性があります。米インフレの鈍化で早期利上げ観測は後退した一方、インフレの高止まりを容認しないという米連邦準備制度理事会(FRB)の姿勢や原油高は、ドルを下支えしそうです。本稿では、160.50〜163.50円の予想レンジを前提に、163円台へ上昇する条件と、円高方向へ調整する際の分岐点を、ファンダメンタルズと日足チャートの両面から整理します。
予想レンジ:ドル円 160.50〜163.50円
ドル円、複数材料が交錯して161円半ばから162円半ばで上下動
2026年7月13日〜7月17日のドル円相場は概ね162円前半から半ばで推移しました。米消費者物価指数が市場予想を下回った場面では、ドル円は161.601円まで下落しました。しかし、米国がイランの軍事拠点への攻撃姿勢を維持したことで、原油供給への不安や原油高の長期化が意識され、米インフレ鈍化期待の広がりは限定的となり、ドル円の下値も限られました。その後は、日本の経済・財政運営に対する思惑やFRBのインフレ抑制姿勢を背景に、ドル円は162.549円まで上昇しました。ただ、明確な手掛かりに乏しい中、相場の方向感は限定され、結果的に狭い値幅での推移が続きました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
ドル円見通し:米関税の話題で163円突破も
2026年7月20日〜7月24日のドル円相場は、米金利が材料待ちで方向感を欠く中、162円前後での高止まりを基本としたレンジ展開が続くと見られます。ただし、このレンジ相場は複数の突発的な要因によってブレイクするリスクもあります。「骨太の方針」など財政運営の不透明感や、中東情勢の緊迫化に伴う原油価格の高騰は、実需のドル買いを促し、円安方向への動きを後押しする可能性があります。さらに、トランプ政権の「関税政策」が加わることで、相場には、ドル高・円安方向への上振れ圧力が高まることも考えられます。
関税強化は米国の輸入物価を押し上げ、インフレ再燃を通じてFRBの利上げ観測を再燃させます。また、日本の輸出企業への打撃や対米投資の増加に伴う実需のドル買いも、ドル円を押し上げる要因となります。なお、7月24日には通商法122条に基づく原則10%の輸入課徴金が期限を迎えます。同条は最大150日の時限措置で、大統領の判断だけでは延長できません。米通商代表部(USTR)は通商法301条に基づく追加関税案を提示しており、市場では122条による課徴金の代替候補として意識されています。実施が決まれば、関税措置が継続・強化される可能性があり、163円台へのブレイクアウトのきっかけとなり得ます。
反対に、代替措置が定まらないまま失効すれば、インフレ再燃観測は後退し、ドルの上値を抑える可能性があります。また、GPIFによる資産配分の観測報道や日銀の7月会合を控えた観測報道などが出れば、円安の巻き戻し(円高方向)が進む展開も考えられます。
筆者は、米国の早期利上げ観測が後退した後も、FRBがインフレの高止まりを容認しない姿勢を維持しているため、日米金利差は急速に縮小しにくいとみています。そのため、ドル円は162円台を中心に底堅く推移し、材料次第では163円台を試す可能性があります。
ただし、直近高値の162.84円付近では上値を抑えられており、ここを明確に超えるまではレンジ相場が続くと考えます。反対に、円買い材料が強まり、25日移動平均線を割り込んだ場合は、上昇シナリオをいったん見直す必要があります。
ドル円テクニカル分析:162.84円突破が上昇再開の条件
ドル円は、10日移動平均線の162.25円付近、25日移動平均線の161.80円付近、75日移動平均線の159.90円付近を上回り、中期的な上昇基調を保っています。
ただし、足元は直近高値の162.84円付近で上値を抑えられています。9日相対力指数(RSI)も54.0と中立圏にあり、買い優勢ながら方向感は強くありません。
上値は162.50〜162.84円が抵抗帯です。162.84円を日足終値で上回れば、163.00円を経て予想レンジ上限の163.50円が視野に入ります。
一方、下値は162.25円、次いで161.80円が支持です。161.80円を明確に割り込むと、161.00円から予想レンジ下限の160.50円まで調整が広がる可能性があります。
テクニカル面では、161.80円を維持する限り上向き、162.84円突破で上昇再開と考えます。
【ドル円チャート 日足】

2026年7月20日〜7月24日の重要経済指標・イベントスケジュール
- 7月20日(月)
- 18:00 ユーロ 5月建設支出
- 23:00 アメリカ 6月景気先行指標総合指数
- 7月21日(火)
- 15:00 イギリス 3〜5月失業率(ILO方式)
- 15:00 イギリス 6月失業保険申請件数
- 15:00 イギリス 6月失業率
- 18:00 ユーロ 7月ZEW景況感調査
- 7月22日(水)
- 08:50 日本 6月貿易統計(通関ベース、季調前)
- 15:00 イギリス 6月消費者物価指数(CPI)
- 7月23日(木)
- 21:15 ユーロ 欧州中央銀行(ECB)政策金利
- 21:30 アメリカ 新規失業保険申請件数
- 21:45 ユーロ ラガルドECB総裁、定例記者会見
- 23:00 ユーロ 7月消費者信頼感(速報値)
- 7月24日(金)
- 米国 通商法122条に基づく原則10%の輸入課徴金の期限
- 08:30 日本 6月全国消費者物価指数(CPI)
- 08:50 日本 対外対内証券売買契約等の状況
- 15:00 イギリス 6月小売売上高
- 17:00 ユーロ 7月製造業/サービス業PMI速報値
- 17:30 イギリス 7月製造業/サービス業PMI速報値
- 22:45 アメリカ 7月製造業/サービス業PMI速報値
- 23:00 アメリカ 6月新築住宅販売件数
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小野 直人
株式会社DZHフィナンシャルリサーチでの情報配信業務、上田ハーロー株式会社での調査・市場部門を経て、2021年より外為どっとコム総合研究所へ参画。ニュースベンダーとFX会社で培った「情報の目利き力」と「市場実務の経験」を武器に、個人投資家へ有益な情報を発信している。ドル円などの主要通貨に加え、トルコリラ・メキシコペソなどの新興国通貨、日経平均・NYダウといった株価指数(CFD)まで、幅広い金融商品の分析を得意とするマーケットアナリスト。
