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円安は悪?日本は借金大国?森永康平氏が語る経済と資産運用の真相 2026年7月17日

経済アナリストの森永康平氏に、世間で当たり前とされている経済や投資の「常識」についてご見解を伺いました。円安の善悪から日本経済の将来性、資産運用の考え方、財政問題まで、SNSやニュースで語られがちな言説を一つずつ検証していきます。

【必見!】森永康平氏の解説動画

 

 

円安は本当に「悪」なのか?

ドル円が160円台に達し、円安を懸念する声が強まっています。しかし森永氏は「円安=悪」という見方に疑問を呈します。

輸出企業には追い風となる一方、輸入コストの増加は家計を圧迫します。立場によって評価が分かれるため、一律に善悪を語ることはできないといいます。実際、日本株が堅調に推移している事実は、円安が経済全体を単純に押し下げているわけではないことを意味しています。

注意すべきは水準そのものよりも変動のスピードだと森永氏は指摘します。急激な為替変動は企業の為替ヘッジを困難にし、経済へのインパクトを大きくします。緩やかな動きであれば先物取引などで対応できますが、急変動には対応しづらいのが実情です。

なお、直近の物価高の主因を円安だけに求める論調にも慎重な立場を示しています。中東情勢やロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格上昇が世界的なインフレを引き起こしており、為替だけを理由に金融政策を動かすべきではないとの見解です。

投資家にとっての対策としては、給与収入が円建てである以上、資産が自然と円に偏りやすい点を踏まえ、新NISAなどを活用して外貨建て資産に意図的に配分することが挙げられます。

「日本はもう終わり」論は正しいのか?

SNSやメディアで頻繁に見かける「日本終了論」について、森永氏は明確に否定します。

背景にあるのはメディアの構造だといいます。極端なヘッドラインの方がPV数を稼ぎやすく、冷静な分析ほど賛否両論の煽り記事に埋もれてしまいます。その結果、悲観的な論調ばかりが目立って見えるだけで、実態を正確に反映しているわけではないと指摘します。

人口減少という事実はあるものの、それだけで経済の衰退を意味するわけではありません。人口規模が小さくても経済的地位を保つ国は存在します。むしろ日本は、AIとロボットが融合した「フィジカルAI」の分野で強みを発揮できる可能性があるといいます。人口減少が進んでいるからこそ雇用喪失への反発が起きにくく、新技術の導入がスムーズに進むという優位性があるとの見方です。

森永氏は「自己実現的予言」という言葉を用い、悲観的な思い込みが実際に悪い結果を招くリスクを指摘します。課題を課題として認識しつつ、必要以上に悲観する姿勢には距離を置くべきだという主張です。

政府が掲げる成長戦略分野への官民投資については、上限を定めない大型投資という点を評価しつつ、投資先を見極める「目利き」の担い手が政府側にいるかどうかを今後の課題として挙げています。

「長期・積立・分散」は今でも正解なのか?

新NISA以降、定番の投資戦略とされる長期・積立・分散について、森永氏は「理論上の最適解ではないかもしれないが、実践的にはベストに近い」と評価します。

短期的な値動きを予測して売買のタイミングを計ることは事実上不可能に近いといいます。だからこそ感情を排して機械的に積み立て続けることが有効になります。

一方で、ここ数年の株高局面では「分散不要論」が広がっています。米国株一本に集中投資していれば圧倒的なリターンを得られたのは事実ですが、これは結果論に過ぎないと森永氏は指摘します。過去にはリーマンショックや欧州債務危機など、株価が半減するような暴落を何度も経験しており、そうした局面でこそ分散投資の効果が発揮されます。

年齢に応じた資産配分の見直しも重要なポイントです。若年層は株式比率を高めに、リタイアが近づくにつれて債券や現預金の比率を高めていく調整が必要になります。自身での調整が難しい場合は、年齢に応じて自動的に配分を変えるターゲットイヤーファンドの活用も選択肢の一つだといいます。

日本企業がAI時代にどう生き残る?

米中がしのぎを削るAI開発競争について、森永氏は「日本が本丸で勝負を挑む必要はない」との立場を取ります。

参考になるのはゴールドラッシュ時代のビジネスモデルです。金脈を掘り当てようとした鉱夫の多くは失敗しましたが、彼らにつるはしなど道具を売った商人はほぼ確実に利益を得ました。日本企業も、AI開発競争の周辺領域―半導体製造装置データセンターの冷却設備電力インフラなど―で存在感を発揮する方が現実的な勝ち筋になるといいます。

政治の世界で語られる「ミドルパワー」という概念とも重なる発想であり、米中の二極対立に無理に参入するのではなく、周辺で確実に稼ぐポジションを取ることが日本の強みを活かす道だと森永氏は語ります。

日本は本当に「借金大国」なのか?

国債発行残高の多さを理由に語られる「借金大国」論についても、森永氏は慎重な見方を示します。

近年の金利上昇は日本固有の財政問題によるものだけではなく、日銀の利上げスタンスや物価上昇、経済成長への期待など複数の要因が絡んでいると指摘します。米国の金利水準と比較しても日本の水準は依然として低く、財政悪化懸念だけが市場で強く意識されているのであれば、国債金利や株価にもっと明確な形で表れるはずだといいます。

過去20年間の国債発行残高の推移で見ても、日本の増加ペースは米国や英国、カナダなど他の先進国と比べて緩やかだと森永氏は説明します。必要な場面での財政出動を避けることが、かえって国内の供給能力を毀損し、長期的な財政悪化を招くリスクがあるとの見解です。

老後2000万円問題は「古い」のか?

2019年に話題となった老後2000万円問題は、物価上昇を踏まえるとすでに実態に合わなくなっていると森永氏は指摘します。

年3%程度の物価上昇が続くと仮定した場合、現預金の実質価値は20〜30年で大きく目減りします。貯金だけに頼る資産形成はインフレ環境下ではリスクとなり得るというのが森永氏の考えです。

対策としては、貯蓄に加えて運用による複利効果を組み込んだ資産設計が必要になります。特に50代以降はリタイア時期が近づくため、株式に偏ったポートフォリオから債券比率を高めた構成へと徐々に移行することが重要になります。また、リタイア後も運用を完全にやめるのではなく、資産を段階的に取り崩しながら運用を継続する姿勢が求められるといいます。

政府は経済を変えられるのか?

最後のテーマは、政府の経済政策がどこまで経済に影響を与えられるかという問いです。

森永氏は、インフラ整備や治安維持など、民間では担いきれない領域は政府の役割だとしつつ、それ以外の経済活動にどこまで政府が介入すべきかは国民の志向次第だと語ります。北欧型の高い税負担・高福祉モデルと、自由主義的な小さな政府モデルのどちらを選ぶかという二択に近い構図です。

NISAやiDeCoに設けられている非課税制度は、増税傾向にある政府による異例の優遇措置ともいえ、公的年金だけに頼るのではなく、自助努力による資産形成の重要性を国民に促すメッセージとして受け止めることができるといいます。

また、消費減税を巡る議論が政権内で紛糾する様子を踏まえ、どのような政策を打ち出しても批判が避けられない状況の中で、規制や税負担を最小限に抑えて民間の自由な活動に委ねる方向性が、結果的に国民の志向に合っているのではないかとの見方も示されました。

まとめ

円安、日本経済の先行き、資産運用の常識、財政問題――いずれのテーマにも共通するのは、単純な二元論では語れないという点です。メディアやSNSで流布する極端な言説に流されず、データやファクトを踏まえて冷静に判断する姿勢が、これからの時代を生き抜くうえで欠かせない視点と言えるでしょう。

 

株式会社マネネCEO/経済アナリスト
森永 康平(もりなが・こうへい)
証券会社、運用会社にてアナリストとして株式市場や経済のリサーチ業務に従事。その後、業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾などアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、事業責任者やCEOを歴任。2018年6月、金融教育ベンチャーのマネネを創業。現在は国内外のベンチャー企業の経営にも参画している。著書は『スタグフレーションの時代』(宝島社新書)や『親子ゼニ問答』(角川新書)など多数。