
作成日時:2026年7月16日 12:00
監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 小野直人
金相場は、中東情勢と原油高を受けて一時4,000ドルを割り込んだ後、米消費者物価指数(CPI)と米生産者物価指数(PPI)の鈍化を受けて4,050ドル台へ戻したものの、反発の勢いは2営業日と持たず、再び下押しへの警戒が強まっています。
金価格は「4,000ドルの攻防」が最大テーマです。本記事では、ETFから資金が流出するなか、このまま下値を広げるのか、4,000ドルを支える買い手はいるのか、中東情勢、米金融政策、金の需給、テクニカル上の分岐点などから解説します。
金(ゴールド)の今後1週間の想定レンジ:3,900〜4,200ドル
金(ゴールド)相場見通し|4,000ドルを挟んで上値の重い展開
7月16日〜23日の金相場は、4,000ドル近辺で下値を支えられる一方、反発局面では売りが出やすい展開を想定します。
米CPIとPPIの鈍化は金価格の支援材料です。ただし、原油高が続けば、インフレ再燃、米金利上昇、ドル高を通じて上値を抑える可能性があります。25日移動平均線の4,118ドルを上回るまでは、下落トレンド内の自律反発と位置づけたいところです。
ただし、25日移動平均線を上回れば、4,200ドルを試す芽も出てきます。
一方、4,000ドルを明確に割り込むと、3,950ドル、さらに重要安値の3,883ドル付近が視野に入ります。基本的な方向性は、下値への警戒を残した底固めです。
中東情勢と原油高|有事でも金相場が上がらない理由
金相場の上値を抑える要因は原油高と物価上昇の悪循環です。通常、地政学リスクは安全資産とされる金の買い材料ですが、足元では次の経路で金の上値抑制材料として意識されています。
- 中東情勢の緊迫
- 原油価格の上昇
- 米インフレ再燃への警戒
- 米金利とドルの上昇
- 金価格の上値を圧迫
つまり原油価格が80ドル前後から一段と上昇すれば、米国の利上げ観測が強まり、金相場は上値を抑えられた状態が続く可能性があります。
反対に、中東情勢が沈静化して原油が反落すれば、米長期金利とドルが低下し、金相場は回復傾向を強めることになります。
米インフレとFRBの金融政策|追加利上げリスクは残る
では米国のインフレ動向はどうなのか確認しておくと、6月の米CPIは前月比-0.4%低下、前年比+3.5%上昇でした。コアCPIも前月比横ばい、前年比+2.6%上昇へ鈍化しています。
米PPIも前月比-0.3%低下しました。しかしながら、PPIは前年比では+5.5%上昇し、食品・エネルギーを除く指数も前年比+4.7%上昇しています。つまり、物価の川上側ではインフレ圧力が消えたわけではありません。
こうした物価上昇への火種がくすぶるなか、原油高がさらにインフレ再加速を後押して、米追加利上げ観測が強まる可能性はあります。
ウォーシュ米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、半期に一度の議会証言で具体的な利上げ時期には踏み込みませんでしたが、物価安定の達成に引き続きコミットしています。
金の需給動向|ETF売りのなか、4,000ドルを支える買い手
中央銀行は金相場の構造的な買い手
ここからは、金相場を支える材料を整理します。主な支援要因としては、中央銀行による金購入、中国国内の需要、そしてETF投資が挙げられます。
まず、中国人民銀行(PBOC)は6月に15トンの金を追加購入しました。月間購入量としては2023年10月以来の大きさで、購入の増加は20カ月連続となっています。2026年上半期の累計購入量は40トンに達しており、継続的な買いが確認できます。
また、5月までの各国の購入状況を見ると、ポーランドが年初から64トン、ウズベキスタンが33トン、中国が25トン、カザフスタンが20トンを購入しています。中央銀行の買いは金価格を急騰させるほどのインパクトはありませんが、下落局面では相場の下値を支える重要な要因です。
さらに、中国国内の需要も堅調です。6月の上海黄金交易所における金の引き出し量は前月比36%増の87トンとなり、実需の強さが金相場の支えとなっています。
一方で、世界の現物裏付け型金ETFは6月に89億ドル(74トン)の純流出となり、需給面の不安材料となっています。短期的な価格形成に影響しやすいETFへの資金流入が戻らない状況が続いているため、金価格の持続的な上昇にはつながりにくいと考えられます。
金(スポット)のテクニカル分析|4,118ドル突破が反発継続の条件

金価格は25日線が75日線を下回っており、中期的な下落トレンドが続いています。
相対力指数(RSI、14日)は47.5と中立圏ですが、50をわずかに下回り、方向感はまだ下向きと言えそうです。
上方向の抵抗は25日線の4,118ドルです。日足終値で上回れば、4,180〜4,200ドルが次の目標になります。
とはいえ、75日移動平均線は4,436ドル付近にあります。4,200ドルの回復は少し遠いかもしれません。
下方向の最重要ポイントは4,000ドルです。
明確に割り込むと、3,950ドル、さらに重要安値の3,883.21ドルが視野に入ります。3,883ドル付近を割ると、下落トレンドが再び強まる危険があります。
金相場見通しの視点と、相場シナリオの組み立て方
筆者のメインシナリオは、中東情勢と原油高が上値を抑える一方、米インフレ鈍化と中央銀行買いが下値を支え、4,000ドル近辺で底固めを試す展開です。
4,000ドルを維持して4,118ドルを試しても、25日移動平均線付近では売りが出やすく、再び4,000ドル台前半へ押し戻されるとみます。
ただし、3,883ドル付近を割り込んだ場合は、底固めシナリオの見直しが必要です。
原油価格、米10年債利回り、ドル指数、ETF資金フローのどれを重視するかによって、戦略は変わります。
【あなたの金価格見通しは?】3つのシナリオ
A.4,000ドルを維持し、底固めが続く
米インフレ鈍化と中央銀行買いが下値を支え、4,000ドル台前半を中心に推移する。
B.原油反落で4,200ドル方向へ反発する
米長期金利とドルが低下し、4,118ドルを上抜けて4,180〜4,200ドルを試す。
C.原油高が続き、3,900ドル方向へ下落する
4,000ドルを割り込み、3,950ドルを経て3,900ドルまで下落する。
金相場を左右する今後の重要イベント
7月16日(木)21:30 米国 6月小売売上高、新規失業保険申請件数
7月17日(金)21:30 米国 6月住宅着工件数、6月建設許可件数
7月18日(土) 米連邦公開市場委員会(FOMC)ブラックアウト期間入り
7月23日(木)21:30 米国 新規失業保険申請件数
期間を通じて、米国とイランの関係、ホルムズ海峡、WTI原油、米10年債利回り、ドル指数の動向にも注意が必要です。
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小野 直人
株式会社DZHフィナンシャルリサーチでの情報配信業務、上田ハーロー株式会社での調査・市場部門を経て、2021年より外為どっとコム総合研究所へ参画。ニュースベンダーとFX会社で培った「情報の目利き力」と「市場実務の経験」を武器に、個人投資家へ有益な情報を発信している。ドル円などの主要通貨に加え、トルコリラ・メキシコペソなどの新興国通貨、日経平均・NYダウといった株価指数(CFD)まで、幅広い金融商品の分析を得意とするマーケットアナリスト。
