
更新日時:2026年7月3日 16時59分(データを更新)
執筆日時:2026年6月29日 18時40分
執筆者 :株式会社外為どっとコム総合研究所 小野 直人
2026年7月2日に発表される米6月雇用統計は、9月以降のFRB利上げ観測を支えられるかを見極める重要イベントです。NFPの市場予想には7万人台から17万人程度まで開きがあり、結果次第で米長期金利、ドルインデックス(DXY)、ドル円、株式、金相場の反応が分かれそうです。本稿では、前回結果と今回の注目点、日銀の金融政策や為替介入リスクも踏まえた市場見通しを整理します。
米6月雇用統計、9月利上げ観測を一段と高める材料となるかが重要
2026年7月2日 21時30分に6月分の米雇用統計が発表されます。今月は、7月3日が米国市場が休場となるため、2日に前倒しされます。金曜日ではなく木曜日の発表ですので、ご注意ください。
今回の米6月雇用統計で市場が確認したいのは、7月利上げを前倒しするほど強い内容かどうかではなく、まずは9月以降の利上げ観測を正当化できるかどうかです。
米雇用は、春先にいったん減速懸念が強まったものの、足元では持ち直しを試しています。前回の5月雇用統計では、非農業部門雇用者数(NFP)が市場予想を上回り、労働市場が急速に悪化しているとの見方は大きく後退しました。ただし、雇用増の広がりや企業の採用意欲にはなお弱さも残っており、「完全に底堅さを取り戻した」とまでは言い切れない状況です。まずは前回分の振り返りから確認していきましょう。
米5月雇用統計(NFP)の結果とドル円相場の反応
2026年5月分の米国雇用統計は、労働市場の底堅さを改めて示す内容となりました。非農業部門雇用者数(NFP)は前月比17.2万人増と、市場予想の8.5万人増を大きく上回り、米経済の底堅さを意識させる結果となりました。失業率は4.3%と前月から横ばいで、低水準を維持しました。
また、平均時給は前月比0.3%、前年同月比3.4%上昇し、賃金インフレ圧力が一定程度残っていることも確認されました。これらの結果を受け、市場では年内利上げを見込む動きが強まり、CMEのFedWatchツールでは12月までの利上げ確率が7割台へ上昇しました。
図表1.分野別新規雇用者数(千人)※出所:米国労働省、最新値
| 産業別 | 2025年5月 | 2026年3月 | 2026年4月 | 2026年5月 |
|---|---|---|---|---|
| 全体 | 13 | 214 | 179 | 172 |
| 財生産部門 | -17 | 33 | 14 | 28 |
| 鉱業・林業 | -4 | 3 | 5 | 4 |
| 建設業 | -2 | 15 | 9 | 17 |
| 製造 | -11 | 15 | 0 | 7 |
| 民間サービス部門 | 37 | 169 | 163 | 92 |
| 卸売 | 0.8 | -1.7 | -1.8 | -3.7 |
| 小売 | -21.6 | 9.6 | 23.5 | -1.1 |
| 運輸 | 0.1 | 25.1 | 39.3 | 0.6 |
| 公益(電気・ガス・水道) | 2.6 | -0.5 | 1 | 1.4 |
| 情報 | -1 | 1 | -8 | -2 |
| 金融・保険 | 6 | -17 | -6 | -22 |
| 専門・企業向け | -20 | 28 | 22 | 6 |
| 民間教育・医療サービス | 60 | 95 | 54 | 40 |
| 娯楽・接客 | 3 | 44 | 30 | 70 |
| その他のサービス | 7 | -14 | 9 | 3 |
| 政府分野 | -7 | 12 | 2 | 52 |
各市場の反応
【為替市場】
結果を受けて、ドル円は160.343円まで上昇しました。ただ、日本の通貨当局による介入リスクが意識される中、週末前のポジション調整から、上昇一巡後は伸び悩みました。
【株式市場】
米国の金利先高観による警戒心から、株価には調整圧力がかかりAI関連を中心に下落しました。
- ダウ平均 前日比:-1.35%(-695.15ドル)の50,866.78ドル
- ナスダック総合 前日比:-4.18%(-1,121.53ポイント)の25,709.43ポイント
- S&P500 前日比:-2.64%(-200.57ポイント)の7,383.74ポイント
【金市場】
5月の米雇用統計を受けて、米10年債利回りが4.55%台まで上昇したことが重しとなり、4,300ドル台半ばまで下落しました。
図表2.前回発表前後のドル円の動き
ドル円 5分足
出所:外為どっとコム「ネオチャート」
米6月雇用統計、賃金動向に注目集まる
米雇用の持ち直しは本物か、平均時給がFRBの次の一手の先駆けに
6月雇用統計が多少強い程度では、7月利上げ前倒しに直結する可能性は高くないでしょう。市場では年後半の利上げ観測が強まっているものの、現時点では9月以降の利上げが中心シナリオとみられ、7月利上げを意識させるには、NFPの大幅な上振れに加え、平均時給の再加速、失業率の低下、雇用増の業種の広がりがそろう必要があります。
今回、最も注目したいのは平均時給の伸びです。FRBが警戒しているのは、雇用者数そのものよりも、賃金を通じたインフレ圧力の粘りです。平均時給が落ち着いていれば、NFPが予想前後、あるいはやや強めに出ても、9月利上げ観測の維持にとどまりやすいです。一方で、賃金が再び加速すれば、インフレ再燃への警戒が強まり、利上げ観測を後押しする材料になります。
図表3.雇用者数変化に関連するデータ
| 項目 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 |
|---|---|---|---|---|---|
| NFP 万人 | -13.3 | 21.4 | 14.8 | 12.9 | 5.7 |
| ADP民間雇用者数 万人 | 6.6 | 6.1 | 10.5 | 12.2 | 9.8 |
| ISM製造業雇用指数 | 48.8 | 48.7 | 46.4 | 48.6 | 49.7 |
| ISM非製造業雇用指数 | 51.8 | 45.2 | 48.0 | 47.9 | - |
| JOLTS求人件数 万件 | 692.2 | 688.7 | 758.5 | 759.4 | - |
| 新規失業保険申請件数 万件 | 20.8 | 20.5 | 21.4 | 21.0 | 22.7 |
| 失業保険継続受給者数 万人 | 182.2 | 181.6 | 180.8 | 178.5 | 182.1 |
出所:各種公表データを基に外為総研が作成
※データは最新値
※失業保険データは、雇用統計調査週の分
次に確認したいのは、NFPの水準と過去分の改定です。NFPが市場予想を上回っても、過去分が下方修正されれば、雇用の持ち直しには慎重な見方が残ります。反対に、NFPが強く、過去分も上方修正されれば、労働市場の底堅さを確認する材料になります。
また、失業率は労働参加率とセットで見たいです。失業率が低下しても、労働参加率も下がっていれば、働く人が労働市場から退出したことで失業率が低く見えている可能性があります。労働参加率が安定、または上昇する中で失業率が低下するなら、より健全な雇用改善と評価できます。
加えて、雇用増の業種の広がりも重要です。前回は一部のサービス業や政府部門に支えられた面もあり、雇用の強さが民間全体に広がっているとは言い切れませんでした。今回、雇用増が幅広い業種に広がるかどうかで、米雇用の持ち直しが本物かを見極めたいです。
図表4.消費者信頼感指数(コンファレンスボード)
| 項目 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 |
|---|---|---|---|---|---|
| 消費者信頼感指数 | 91.0 | 92.2 | 93.8 | 93.1 | 91.2 |
| 現況 | 118.7 | 124.1 | 124.4 | 121.2 | 116.4 |
| 期待 | 72.6 | 71.0 | 73.4 | 74.4 | 74.4 |
| 雇用が十分 | 26.7 | 27.4 | 26.9 | 25.5 | 24.9 |
| 就職が困難 | 21.0 | 21.3 | 19.4 | 18.6 | 22.5 |
出所:公表データを基に外為総研が作成
ドル円戦略|7月より9月が焦点、米雇用統計で利上げ観測は高まるか
今回の6月分の米雇用統計は、9月以降の利上げ観測を支えられるかどうかを確認するイベントと考えています。ブルームバーグ調査によれば、NFPの市場予想は7万人台から17万人程度まで見方に開きがあり、結果そのものだけでなく、発表後に米長期金利とドルインデックス(DXY)がどう反応するかが重要になります。
メインシナリオとしては、雇用が大きく崩れず、賃金も極端には加速しない結果となり、高金利据え置きの長期化シナリオが維持される展開を想定しています。この場合、ドル円は日米金利差が下支えとなる一方、日銀の金融政策正常化への思惑や162円台での為替介入警戒が上値を抑えやすく、160円台を中心としたレンジ推移が続きやすいと見ています。
- 雇用・賃金が強い:米長期金利上昇とDXY上昇を通じてドル買いが強まり、ドル円は162円台を試す可能性。ただし、為替介入への警戒感も強まり、ボラティリティは高まりやすい。株式は金利上昇を嫌気しやすく、金には下押し圧力。
- 雇用は底堅く、賃金は落ち着く:高金利据え置き観測が維持され、ドル円はレンジ戦略が中心。過度な景気後退懸念が和らげばリスクオンに傾きやすく、株式は底堅さを探り、金は下げ渋りやすい。
- 雇用・賃金が弱い:利上げ観測の巻き戻しから米長期金利低下、DXY下落、ドル売りが意識される。ドル円は調整含みとなり、株式は景気減速懸念からリスクオフ、金は金利低下を支えに底堅さを探る展開。
重要なのは、雇用の強さが景気の底堅さにとどまるのか、それとも賃金インフレの再加速を通じて追加利上げ観測まで呼び込むのかです。
図表5.ドル円チャート

ドル円 日足
出所:外為どっとコム「ネオチャート」
米雇用統計の実績・市場予想と関連経済指標データ
図表6.[雇用統計の実績と予想]
| 年月 | 非農業雇用者数変化(万人) | 失業率(%) | ||
| 予想値 | 初回結果 | 予想値 | 初回結果 | |
| 2026年06月 | 11.3 | 5.7 | 4.3 | 4.2 |
| 2026年05月 | 8.5 | 17.2 | 4.3 | 4.3 |
| 2026年04月 | 6.2 | 11.5 | 4.3 | 4.3 |
| 2026年03月 | 6.5 | 17.8 | 4.4 | 4.3 |
| 2026年02月 | 5.5 | -13.3 | 4.3 | 4.4 |
| 2026年01月 | 7.0 | 13.0 | 4.4 | 4.3 |
| 年月 | 平均時給/前月比(%) | 労働参加率(%) | |
| 予想値 | 初回結果 | 初回結果 | |
| 2026年06月 | 0.3 | 0.3 | 61.5 |
| 2026年05月 | 0.3 | 0.3 | 61.8 |
| 2026年04月 | 0.3 | 0.2 | 61.8 |
| 2026年03月 | 0.3 | 0.2 | 61.9 |
| 2026年02月 | 0.3 | 0.4 | 62.0 |
| 2026年01月 | 0.3 | 0.4 | 62.5 |
◇関連の経済データ実績
| 年月 | ISM製造業雇用指数 | ISM非製造業雇用指数 |
| 2026年06月 | 49.7 | - |
| 2026年05月 | 48.6 | 47.9 |
| 2026年04月 | 46.4 | 48.0 |
| 2026年03月 | 48.7 | 45.2 |
| 2026年02月 | 48.8 | 51.8 |
| 2026年01月 | 48.1 | 50.3 |
出所:Bloomberg、外為どっとコム「経済指標カレンダー」
市場予想は弊社経済カレンダーより、2026年6月29日 現在
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小野 直人
株式会社DZHフィナンシャルリサーチでの情報配信業務、上田ハーロー株式会社での調査・市場部門を経て、2021年より外為どっとコム総合研究所へ参画。ニュースベンダーとFX会社で培った「情報の目利き力」と「市場実務の経験」を武器に、個人投資家へ有益な情報を発信している。ドル円などの主要通貨に加え、トルコリラ・メキシコペソなどの新興国通貨、日経平均・NYダウといった株価指数(CFD)まで、幅広い金融商品の分析を得意とするマーケットアナリスト。
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