
作成日時:2026年6月11日 11:00
監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 小野直人
6月11日から18日にかけての金(ゴールド)相場は、判断が難しい局面に入っています。主要線割れで弱気が強まる一方、売られ過ぎで反発余地も残るため、4,190ドルを回復できるかどうかが方向性を決める分岐点になります。
6月16〜17日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)は、ウォーシュ新議長の初会合でもあります。結果公表後の金利・ドル・株式市場の反応を見ながら、金相場の流れが変わり始めたのか、慎重に自分なりのシナリオを組み立てたい週です。
金(ゴールド)の今後1週間の想定レンジ:3,800ドル〜4,250ドル
金相場(XAU/USD)は金利上昇とドル高で半年ぶりの安値へ
直近の金相場は、これまでの上昇基調から一転して、調整色を強めています。
きっかけは、米5月雇用統計と米5月消費者物価指数(CPI)です。米5月雇用統計は市場予想を上回り、CPIでもインフレの根強さが確認されました。
この結果、米連邦準備制度理事会(FRB)が早期に利下げするとの期待は大きく後退しました。さらに、利上げ観測まで意識されるようになっています。
利息を生まない金にとって、米金利上昇は金を持つ魅力を相対的に低下させます。また、ドル高が進むと、ドル建てで取引される金には割高感が強まり、金への購買意欲が低下しやすくなります。
今回の金価格下落は、米金利上昇とドル高が重しになった面が大きいと考えられます。
地政学リスクが金相場を難解にさせる要因
もう一つ、金相場を見るうえで欠かせない材料は中東情勢の緊迫化です。
通常、地政学リスクが高まると、安全資産とされる金には買いが入りやすくなります。しかし、今回は少し事情が異なります。
足元では、中東情勢の緊迫化が原油高につながり、インフレ再燃への警戒を強めているためです。その結果、米金利上昇やドル高につながりやすく、短期的には金の重しになる場面も見られます。
つまり、地政学リスクは金を支える材料である一方、原油高やインフレ警戒を通じて金の上値を抑える材料にもなり得ます。この点が、今回の金相場を難しくしているところです。
米FOMCの金相場への影響:「据え置き」よりも「金利見通し」部分がより重要
以上のように金利やドルが金相場の短期的な方向性を左右する中で、目先の最大の注目材料は6月16〜17日に開催されるFOMCとなります。
メインシナリオは、政策金利の据え置きです。ただし、注目点は据え置きそのものではありません。
焦点は、声明文、政策金利見通し(ドットプロット)、ウォーシュ新議長の記者会見で、FRBがインフレをどこまで警戒するかです。
FRBがインフレ警戒を強め、年内の利下げ期待がさらに後退する場合、米金利上昇とドル高を通じて、金相場には下押し圧力がかかりやすくなります。
一方で、FOMCが市場の想定ほど利上げに前向きでなければ、金価格はいったん買い戻される可能性があります。
ただし、金が本格的な上昇トレンドに戻るには、米金利の低下やドル高の一服だけでは不十分かもしれません。株式市場への資金流入が続く間は、「守りの金」よりも「攻めの株」が選ばれやすいためです。
金が再び強く買われるには、株やドルへの不安が高まり、投資家が本当の意味で「守り」を意識する場面が必要になりそうです。
金ETFに変化の兆し?本格的な金離れとはまだ言えない
需給面でも、気になる変化があります。
世界金協会(WGC)によると、世界の金上場投資信託(ETF)は5月に20億ドル、円換算で約3,200億円の純流出となりました。短期投資家の間では、金離れの兆候が見られます。
ただし、年初来の累計では金ETFはまだ流入超です。5月の資金流出だけで、金市場から資金が本格的に離れ始めたと判断するのは早いでしょう。
各国中央銀行による金購入も、中長期的には金の下支え材料です。足元では下向きの動きが強まっていますが、金相場が本格的な弱気相場に入ったと決めつけるには、FOMC後の反応を確認したいところです。
金(ゴールド)テクニカル分析:主要移動平均線を下回る、ただし売られ過ぎ感も

金スポットの日足チャートでは、25日移動平均線(赤)が4,490ドル付近、200日移動平均線(緑)が4,440ドル付近、52週移動平均線に近い260日移動平均線(黒)が4,190ドル付近にあります。
金価格はこれらの移動平均線を下回っており、チャート上は下向きの流れが強まっています。特に、260日移動平均線の4,190ドル付近を下回ったことで、中長期の支えを失いつつある点には注意が必要です。
今後、4,190ドル付近を早めに回復できれば、いったん下げ止まりを探る展開も考えられる一方で、4,190ドル付近が上値の壁になるようなら、3,800ドル付近まで目線が下がる可能性があります。
ただし、相対力指数(RSI)は27.8まで低下しています。一般的にRSIが30を下回ると、売られ過ぎ感が意識されやすくなります。そのため、下向きの流れが続く中、安値を追いかけて売るより、戻りの強さを見極めた後に改めて売りを検討したい局面です。
プロの視点と、ご自身のシナリオの組み立て方
筆者のメインシナリオは、戻り売りを基本に考える見方です。
金価格は、チャート上は下向きの流れが強まっており、反発しても上値は重くなりやすい状況です。
特に反発期待には、4,190ドル付近を早めに回復できるかが必要になります。それでも上方向は、4,250ドル付近が戻りのメドになりそうです。
一方で、4,190ドル付近が上値の壁になるようなら、3,800ドル付近まで目線が下がる可能性があります。
大切なのは、「戻り売りが正解」と決めつけることではありません。FOMC後の米金利・ドル・株式市場の反応を見ながら、ご自身の見立てに合わせて戦略を組み立てたいところです。
【あなたの見通しは?】
今回の金相場について、ご自身の見通しに近いものはどれでしょうか。
- 4,250ドル付近まで戻しても上値は重く、再び下落する
- 4,190ドル付近を早めに回復し、短期的に下げ止まりを探る
- 4,190ドル付近が上値の壁となり、3,800ドル方向への下落を試す
今後の重要イベント
- 6月11日(木)21:30 米5月生産者物価指数(PPI)
- 6月12日(金)23:00 米6月ミシガン大学消費者態度指数・速報値
- 6月16日(火)21:30 米5月住宅着工件数・建設許可件数
- 6月17日(水)21:30 米5月小売売上高
- 6月17日(水)27:00 FOMC政策金利発表、声明文、ドットプロット
- 6月17日(水)27:30 ウォーシュFRB議長 記者会見
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小野 直人
株式会社DZHフィナンシャルリサーチでの情報配信業務、上田ハーロー株式会社での調査・市場部門を経て、2021年より外為どっとコム総合研究所へ参画。ニュースベンダーとFX会社で培った「情報の目利き力」と「市場実務の経験」を武器に、個人投資家へ有益な情報を発信している。ドル円などの主要通貨に加え、トルコリラ・メキシコペソなどの新興国通貨、日経平均・NYダウといった株価指数(CFD)まで、幅広い金融商品の分析を得意とするマーケットアナリスト。
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