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【ドル円見通し総まとめ】160円突破で再び為替介入あるか?2人のプロが予想する円安継続シナリオとリスク

※登壇者の発言は収録時点の情報に基づいた見解となります。

外為どっとコムでは、経済・金融の第一線で活躍されている有識者をお招きし、今後のマーケット展望についてお話を伺っています。

今回は、経済アナリスト・朝倉慶氏(2026年5月公開)とエコノミスト・エミン・ユルマズ氏(2026年6月公開)、それぞれの最新見解を比較しながら、2026年後半のドル円相場・インフレ率の動向・日本株の今後の行方を整理します。

●この記事のサマリー

2人のプロに共通する見立ては「円安継続」。ただし、そのリスクシナリオと注目する変数が異なります。

・朝倉氏は構造的な供給制約・財政拡張・実需のドル買いを円安の主因と分析し、ドル円170円方向を予想
・エミン氏は円安トレンドが続くと予想するも、162〜163円台での介入リスクや、AIバブル崩壊・中東情勢を2026年後半の最大のリスクとして警戒
・両者ともに「現金のまま保有するリスク」を指摘し、投資の重要性を指摘している

朝倉慶氏の見解|インフレ長期化と円安170円シナリオ

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インフレが続く本当の理由は「供給制約」

朝倉氏が一貫して強調するのは、現在の物価上昇が需要の過熱ではなく、日本経済の供給不足から来ているという点です。

建設資材の不足、人手不足、物流制約——これらは政治で解消できる問題ではなく、少子高齢化と人口減少が絡んだ構造的な問題です。特に建設業界では、「団塊の世代」の引退が進む一方で若手の担い手が不足しており、職人不足が深刻です。

政府の補助金は短期的な家計支援には有効ですが、財源が赤字国債であれば長期的には通貨価値の低下につながり、インフレをかえって助長するリスクがあるというのが朝倉氏の見方です。

日銀の利上げはインフレに追いついていない

日銀が金融政策の正常化を進めていることは事実ですが、朝倉氏はその対応を「後手に回っている」と指摘します。

インフレ局面では企業が原材料調達・在庫確保・設備投資のために多くの資金を必要とします。そのため金利が多少上がっても資金需要は減らず、むしろ増える可能性があります。デフレ時代の「利上げ=需要減少」という教科書的な常識が、そのまま通用しない局面に入っていると分析しています。

円安が続く3つの理由

朝倉氏は2026年も円安継続シナリオを維持しており、その背景として3点を挙げます。

①金利差:日米の金利差が続く限り、資金は高金利のドルへ向かいやすくなります。

②財政拡張:補助金や財政支出の拡大は通貨供給量を増やし、長期的に日本円の価値を押し下げます。

③実需のドル買い:日本はエネルギー・資源を輸入に頼っており、円売り・ドル買い需要が構造的に発生し続けます。

この3つが重なる限り、為替介入で一時的に円高へ動く場面があっても、円安トレンドそのものを転換させるのは難しいというのが朝倉氏の見立てです。

日本株上昇の背景|AI需要とインフレが牽引

朝倉氏は日本株の上昇を「インフレ時代の株高」と捉えています。物価が上がり現金の価値が下がる局面では、株式・不動産・金などの実物資産に資金が向かいやすくなります。

加えて、半導体・電子部品・データセンターなどAI関連需要が急増しており、これらに関連する銘柄を多く含む日経平均がTOPIXを上回る展開(NT倍率の上昇)が続いています。今後は、AI関連から銀行・建設・不動産などへ物色が広がるかどうかが注目点です。

ただし「株高=全員が豊かになる」わけではなく、資産を保有する人とそうでない人との間で格差が拡大する可能性があることも朝倉氏は指摘しています。

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エミン・ユルマズ氏の見解|介入警戒と2026年後半のリスク

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長期金利上昇が示すもの

エミン氏が注目するのは、世界的な長期金利の上昇です。日本の30年債利回りは歴史的な高水準へ、米国の30年債利回りも5%を超える場面がありました。

市場が長期金利を通じて織り込んでいるのはインフレ再燃リスク。背景には中東情勢の悪化があり、原油・天然ガスだけでなくナフサや肥料原料など幅広い資源価格が上昇しています。こうした供給ショックによる物価上昇圧力を、市場は長期金利の上昇という形で先回りしています。

日銀のジレンマ:利上げすれば景気を冷やすリスクあり

エミン氏もまた、現在のインフレをコストプッシュ型と分析します。日銀が利上げを進めれば景気を冷ますリスクがあり、物価上昇と景気悪化が同時進行するスタグフレーションに陥る可能性があります。金融政策の運営は極めて難しい局面です。

ドル円の見通しと介入ライン

エミン氏も円安基調の継続を見込みますが、160円台後半では政府・日銀による為替介入への警戒が必要だと指摘します。

162〜163円台へ上昇した場合、介入警戒感から相場が急変動するリスクがあります。円安トレンドを前提としながらも、一方向への過度なポジション形成には注意が必要な局面とみています。

円安の構造的背景

エミン氏が着目する円安の構造的要因が日本の貿易構造です。日本は経常収支黒字国である一方、エネルギー輸入依存度が高く貿易収支が赤字に転落しやすい。東日本大震災以降は原発停止に伴うエネルギー輸入増加が続いており、円安圧力の一因となっています。

構造的な円安の改善には、高付加価値産業の育成やエネルギー政策の見直しなど中長期的な取り組みが必要で、短期的には160円台の円安が続くと分析しています。

日本株:AI・半導体関連への集中には過熱感も

日本株については、AI向け半導体需要を背景にキオクシアや東京エレクトロンなどへの資金集中が続いているとエミン氏は見ています。ただし上昇スピードは速く、バブル的な要素も否定できないと警戒感も示しています。

一方で防衛関連・鉄鋼・精密機器など基盤産業にも資金流入が続いており、コーポレートガバナンス改革を背景に海外投資家からの評価は依然高い状況です。

2026年後半の最大リスク

エミン氏が挙げる2大リスクは次の2点です。

①イラン情勢:エネルギーの供給制約が長期化すれば、原油価格の高騰を通じて世界経済に大きな影響を与えます。

②米国の中間選挙:AIによる雇用不安が政治テーマとして浮上しており、AI規制強化・課税強化の議論が進む可能性があります。AI関連産業への逆風が強まれば、現在の「AIストーリー」による株高が逆回転するリスクがあります。

また、AI関連スタートアップ等が利用するプライベートクレジットにも注意が必要です。金利上昇が続けば返済負担が増加し、AIの収益性への疑念が広がると大きな調整局面を迎える可能性があります。韓国株の急落がAIバブル崩壊の引き金となるリスクも、念頭に置く必要があります。

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2人の見解を比較する

ドル円見通し
朝倉慶氏:円安加速で170円方向へ
エミン・ユルマズ氏:円安トレンド継続も160円台後半は介入警戒

日銀の利上げ
朝倉慶氏:後手に回っている
エミン・ユルマズ氏:ジレンマに陥っている

日本株
朝倉慶氏:AI需要とインフレで今後も強い
エミン・ユルマズ氏:強いが、AI関連への集中に過熱感も

主要リスク
朝倉慶氏:財政拡張による円安・インフレの進行
エミン・ユルマズ氏:中東情勢、米中間選挙、AIバブル崩壊

まとめ|個人投資家へのメッセージ

2人の見解には相違点もありますが、共通するメッセージは明確です。

円安は一時的な現象ではなく、構造的な動きとして捉えるべきだということ。そしてデフレ時代の感覚で現金を持ち続けることは、インフレ時代にはリスクになり得るということです。

2026年後半は、円安・インフレ・AI相場・地政学リスクという複数のテーマが交錯します。短期的な値動きを追うだけでなく、金利や為替、政治動向など総合的に捉える視点がこれまで以上に重要となるでしょう。

外為どっとコム マネ育チャンネルでは、引き続き経済の第一線で活躍されている有識者をお招きし、最新のドル円相場見通しをお届けしていきます。ぜひ動画・記事もあわせてご覧ください。

 

asakura.jpg 経済アナリスト
朝倉慶(あさくら・けい)
1954年、埼玉県生まれ。1977年、明治大学政治経済学部卒業後、証券会社に勤務するも3年で独立。顧客向けに発行するレポートが、この数年の経済予測をことごとく的中させる。船井幸雄氏が著書のなかで「経済予測の超プロ・K氏」として紹介し、一躍注目される。 2008年に初めて著書を出版し、以降、ベストセラーとなる本を次々と出版。
f:id:gaitamesk:20191205123319p:plainエミン・ユルマズ氏
エコノミスト、グローバルストラテジスト
トルコ・イスタンブール出身。1996年に国際生物学オリンピック優勝。
97年に日本に留学し東京大学理科一類合格、工学部卒業。同大学大学院にて生命工学修士取得。
2006年野村證券に入社し、M&Aアドバイザリー業務に関わる。
2024年にレディーバードキャピタルを設立し、代表を務める。
現在各種メディアに出演しているほか、全国のセミナーに登壇。文筆活動、SNSでの情報発信も積極的に行っている。
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