
作成日時:2026年5月28日 14:40
監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 小野直人
足元の金(ゴールド)相場は4,500ドルを下回って推移しているものの、買う理由と売る理由が同時に存在し、プロでも見方が分かれやすい局面です。だからこそ、「上がるか、下がるか」を一言で決めつけるよりも、どの材料を重く見るかを整理しながら、自分なりのシナリオを持つことが大切です。中東情勢を巡る不透明感、インフレ懸念や米利上げ警戒をご紹介しつつ、投資判断にお役立ていただけるように解説します。
金(ゴールド)の今後1週間の想定レンジ:4,100~4,600ドル
金(ゴールド)週間見通し:PCEと米金利の反応が最大の焦点
5月28日~6月4日の金相場は、米4月個人消費支出(PCE)デフレーター、米長期金利、ドル相場、中東情勢をにらみながら、4,400ドル台を中心に神経質な展開が想定されます。金スポットは一時3月下旬以来の安値圏まで下落しており、背景にはインフレ再燃と米金融引き締め観測への警戒があります。
今後1週間で最も重要なのは、米4月PCEデフレーターです。3月は前月比+0.7%、前年比+3.5%、食品・エネルギーを除くコアPCEは前月比+0.3%、前年比+3.2%でした。4月分は5月28日21時30分に発表される予定です。
PCEが市場予想を上回れば、米金利上昇・ドル高を通じて金は4,100ドルに向けた意識が高まりやすくなります。一方で、PCEが落ち着けば、利上げ警戒が和らぎ、4,500ドル台回復を試す買い戻しが入りやすくなるでしょう。数字そのものだけでなく、発表後の米金利とドルの反応まで確認したい局面です。
金(ゴールド)の現状:中東リスクでも素直に買われにくい
通常、地政学リスクが高まると、安全資産として金は買われやすくなります。しかし、今回の中東情勢では、ホルムズ海峡を巡る警戒や原油高がインフレ懸念を強め、米金利の高止まり観測につながっています。金は利息を生まない資産であるため、米金利が上昇する局面では買いが入りにくくなります。
そのため、足元の金相場は「中東不安だから金が買われる」という単純な話ではありません。むしろ、「中東不安による原油高、インフレ警戒、米利上げ観測」が上値を抑える形になっています。
もっとも、地政学リスクが完全に後退したわけでもありません。急落局面では、安全資産としての買いが入りやすい面もあります。売り材料と買い材料の両方があるため、強弱を決め打ちするより、材料の綱引きを見ながら考える局面といえます。
米FRBの読み方:利下げ期待よりも利上げ警戒が意識される局面
米FRB(連邦準備制度理事会)を巡っては、利下げ時期よりも、インフレ高止まりによる追加利上げの有無が意識されやすくなっています。4月FOMC議事要旨では、インフレが2%目標を上回り続ける場合、追加的な引き締めが必要になるとの見方が示されました。
また、ハト派寄りと見られるクックFRB理事も、現時点では金利据え置きを支持しつつ、インフレが鈍化しなければ利上げの可能性を排除しない姿勢を示しています。金相場にとっては、FRB高官発言が「利下げ再開」ではなく、「引き締め継続」に傾いている点が重しです。
PCEが強ければ金の戻り売り圧力が高まり、弱ければ米金利低下を通じて買い戻しが入りやすくなるでしょう。
金(ゴールド)テクニカル分析:主要線を下回り上値は重い、ただしRSIは売られすぎ圏

金スポットの日足チャートでは、価格が25日移動平均線の4,595ドル付近、50日移動平均線の4,630ドル付近を下回り、200日移動平均線も下回ってきています。ここを明確に割り込むと、4,100ドル近辺まで下値余地が広がる可能性があります。
RSI(14日)は26.8と、一般的に売られすぎとされる30を下回っています。短期的には自律反発が入ってもおかしくない一方、25日線や50日線を回復できなければ、戻り売りが出やすいでしょう。
金(ゴールド)まとめ:4,500ドル回復までは上値の重さを意識
金相場は、4,500ドル割れにより短期的な地合いが悪化しています。米PCEが強い結果となれば、米金利上昇とドル高を通じて4,100ドル方向への下落リスクが高まります。
一方で、RSIは売られすぎ圏に入っており、PCEが落ち着き、米金利が低下すれば、4,500ドル台回復から4,600ドル接近の反発シナリオも残ります。
目先は、4,395ドル前後で下げ止まり、4,500ドル台を回復できるかが分岐点です。強気に転じるには、少なくとも25日移動平均線の4,595ドル付近、できれば50日移動平均線の4,630ドル付近を上抜ける必要があるでしょう。
プロの視点と、ご自身のシナリオの組み立て方
私のベースシナリオとしては、現時点では戻り売り優勢とみています。4,500ドル台前半から25日移動平均線の4,595ドル付近にかけては、上値抵抗が意識されやすい水準です。さらに、50日移動平均線の4,630ドル付近を明確に上抜けるまでは、上昇基調に戻ったとは判断しにくいでしょう。
一方で、RSIは売られすぎ圏に入っています。200日移動平均線が支持体として機能すれば、短期的な買い戻しが入る可能性があります。
したがって、私の基本的な見方は、4,500~4,600ドル付近では戻り売りを意識しつつ、4,395ドル前後では下げ止まりを確認できるか、そこからさらに下落幅を広げるのかがポイントというものです。また、4,630ドルを明確に上抜けた場合は、弱気見通しをいったん修正する必要があります。
ただし、これはあくまで一つの見方です。実際に相場を見る際は、ご自身の時間軸、許容できる損失幅、重視する材料に合わせて戦略を組み立てることが重要です。短期の値動きを重視するのか、米金利の流れを重視するのか、あるいは中東情勢による安全資産需要を重く見るのかによって、同じチャートでも判断は変わります。
あなたの見通しは?
今回の金相場について、あなたはどのシナリオに近いと考えますか。
- PCEが強く、米金利上昇・ドル高を通じて、金は4,400ドル割れから4,100ドル方向を試す
- 200日移動平均線の4,395ドル付近で下げ止まり、短期的な買い戻しが入る
- PCEが落ち着き、米金利が低下し、4,500ドル台回復から4,600ドル接近を試す
どの選択肢を選んだとしても、大切なのは「なんとなく上がりそう、下がりそう」で終わらせないことです。PCE、米金利、ドル相場、中東情勢、テクニカルのどれを重く見るのかを自分なりに整理できれば、それだけで相場への向き合い方は一段深くなります。
相場に絶対の正解はありません。だからこそ、自分の見立てを持ち、その見立てが外れた場合にどこで修正するかまで考えることが、次の判断につながります。
今後の重要イベント
- 5月28日(木)米国 21:30 1~3月期GDP改定値
- 5月28日(木)米国 21:30 4月個人所得・個人消費支出(PCE)
- 5月28日(木)米国 21:30 4月耐久財受注
- 5月28日(木)米国 23:00 4月新築住宅販売件数
- 6月1日(月)米国 23:00 5月ISM製造業景況指数
- 6月2日(火)米国 23:00 4月JOLTS求人件数
- 6月3日(水)米国 21:15 5月ADP雇用統計
- 6月3日(水)米国 23:00 5月ISM非製造業景況指数
- 6月3日(水)米国 27:00 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
- 期間中随時 中東情勢、ホルムズ海峡、原油価格、米長期金利、ドル相場の動向
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小野 直人
株式会社DZHフィナンシャルリサーチでの情報配信業務、上田ハーロー株式会社での調査・市場部門を経て、2021年より外為どっとコム総合研究所へ参画。ニュースベンダーとFX会社で培った「情報の目利き力」と「市場実務の経験」を武器に、個人投資家へ有益な情報を発信している。ドル円などの主要通貨に加え、トルコリラ・メキシコペソなどの新興国通貨、日経平均・NYダウといった株価指数(CFD)まで、幅広い金融商品の分析を得意とするマーケットアナリスト。
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