
執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2026年5月15日 15時50分
来週(5月18日~5月22日)のユーロ円・ポンド円は、欧州・英国の物価指標と景気指標、英国政治不安、日銀の追加利上げ観測が焦点となります。ユーロはスタグフレーション懸念、ポンドは政局不安が重石となり、クロス円は上値の重い展開が想定されます。
ユーロ円・ポンド円、ドル高・英政治不安でじり安
5月11日週のユーロ円やポンド円はさえない展開。米国のインフレ懸念からドルが強含んだほか、英国のスターマー首相への辞任圧力が高まるなど、英労働党内での対立が強まったことで、ポンドがさえない動きとなったことが、クロス円にも波及しました。ユーロ円は184.60円付近、ポンド円は211.60円付近までじりじりと下げました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
来週のユーロの見通し:スタグフレーション懸念で上値は重い
来週(5月18日〜5月22日)のユーロ円は、ユーロ圏のスタグフレーション懸念と日本の追加利上げ期待が交錯し、週後半にかけて下落しやすい展開が予想されます。
ユーロサイドでは、21日の5月PMI速報値や22日のドイツIFO景況感指数が弱含んだ場合でも、エネルギー価格上昇に伴うインフレ観測からECBの6月利上げ期待は後退しづらいです。この場合、景気減速と利上げが同居するスタグフレーション懸念が強まり、ユーロが一方的に上値を広げる展開にはなりにくい見通しです。
週前半に米金利上昇からドル高が進めば、最終的にユーロ円の下押し要因となる可能性があります。こうした状況下で、日銀の利上げ期待が強まれば、相乗効果により円買いが一気に強まる可能性があります。
来週のポンドの見通し:政治不安は継続、ただ短期で一服も
来週(5月18日〜5月22日)のポンド円は、英国の政治不安や経済指標の弱含みに加え、日銀の正常化スタンスによる円買いが重なることで、クロス円の中でも特に上値の重い展開になると見込まれます。
英国では、スターマー政権が主要政策の停滞や党内対立を背景に求心力を低下させていると指摘されており、一部では首相交代の可能性を巡る観測も浮上しています。こうした政権運営への不透明感は、ポンド建て資産に対するリスクプレミアムを押し上げ、ポンドの重荷となりやすい状況です。
一方、経済指標では、19日(火)の雇用統計と20日(水)の消費者物価指数(CPI)が注目材料となります。労働市場の緩和が確認されれば、BOEの追加利上げ観測がやや後退し、ポンドの上値を抑える可能性があります。一方で、CPIが上振れすれば利上げ警戒が再び強まり、金利上昇と景気下押し懸念が同時に意識されやすくなります。
ただし、労働党の規約では、党首に挑戦するには所属下院議員(PLP)の20%、現在で約80人の推薦が必要とされています。現時点では、党内で名前が挙がる議員がこの人数を確保しているとの報道はなく、党首交代が直ちに現実味を帯びている状況ではありません。そのため、政治的不安はくすぶり続けるものの、短期的には“長考状態”となり、スターマー氏辞任の話題は一時的に進展待ちの状態となる可能性があります。このため、ポンドは戻りの鈍いながらも、下げ渋る展開となる余地も残されています。
ユーロ円テクニカル分析:25日線が上値抵抗、100日線維持が焦点
ユーロ円は現在、急落後の戻り局面にあるものの、ローソク足は184.58円付近で、25日線(185.80円付近)と100日線(184.30円付近)に挟まれた収束状態にあり、短期は弱気、中期は100日線が強気となり、トレンド判断が分かれています。
25日線はレジスタンスとして機能し、ここを上抜けない限り上昇トレンド復帰は難しい一方、100日線は過去の上昇を支えた重要ラインで、割り込むかどうかが最大のポイントとなります。今後は、25日線を回復できれば187円台や188円を目指す強気シナリオに復帰するものの、100日線を実体で割り込むと、182.05円への下落リスクが高まるとみられます。
ポンド円テクニカル分析:100日線割れで上値の重い展開
ポンド円は現在、ドル円やユーロ円よりも弱気色が強く、重要な転換点にあります。価格は211.50円付近で推移し、中期上昇を支えてきた100日移動平均線(212.20円付近)を割り込み始めており、トレンド変調を示唆しています。
25日移動平均線(214.27円付近)は急角度で下向きとなり、戻り売り優勢の状況になりつつあります。RSI(14日)は39.7まで低下しているものの、下げ過ぎと判断する30までには距離があるため、まだ下落余地を残しています。
100日線を回復できなければ、3月末の押し目レベルである209.50〜210.00円や、心理的節目となる208円台も視野に入ります。一方、212円台を早期に回復しても、10日線や213.50円が次の上値の壁として意識されやすいです。
【ユーロ円チャート 日足】

予想レンジ:EUR/JPY:182.00-187.00
【ポンド円チャート 日足】

予想レンジ:GBP/JPY:208.00-214.00
2026年5月18日~5月22日の重要経済指標・イベントスケジュール
- 5/18(月)
- --:-- 主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議(~5/19)
- 5/19(火)
- --:-- 主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議(前日より続き)
- 08:50 日本 1~3月期四半期実質国内総生産(GDP、速報値)
- 15:00 イギリス 3月失業率(ILO方式)
- 21:00 アメリカ ウォラーFRB理事、発言
- 5/20(水)
- 08:00 アメリカ フィラデルフィア連銀総裁、発言
- 15:00 イギリス 4月消費者物価指数(CPI)
- 18:00 ユーロ 4月消費者物価指数(HICP、改定値)
- 22:15 アメリカ バーFRB理事、発言
- 27:00 アメリカ 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨
- 5/21(木)
- --:-- 日本 日銀が債券市場参加者会合を開催(~5/22)
- 08:50 日本 4月貿易統計
- 08:50 日本 対外対内証券売買契約等の状況
- 10:30 日本 小枝日銀審議委員、発言
- 17:00 ユーロ 5月製造/サービス業PMI速報値
- 17:30 イギリス 5月製造/サービス業PMI速報値
- 18:00 ユーロ 3月建設支出
- 21:30 アメリカ 前週分新規失業保険申請件数
- 21:30 アメリカ 4月住宅着工件数
- 21:30 アメリカ 4月建設許可件数
- 22:45 アメリカ 5月製造/サービス業PMI速報値
- 23:00 ユーロ 5月消費者信頼感(速報値)
- 5/22(金)
- --:-- 日本 日銀が債券市場参加者会合を開催(前日より続き)
- 08:01 イギリス 5月GFK消費者信頼感調査
- 08:30 日本 4月全国消費者物価指数(CPI)
- 15:00 イギリス 4月小売売上高
- 15:00 ドイツ 1~3月期国内総生産(GDP、改定値)
- 17:00 ドイツ 5月IFO企業景況感指数
- 23:00 アメリカ ウォラーFRB理事、発言
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小野 直人
株式会社DZHフィナンシャルリサーチでの情報配信業務、上田ハーロー株式会社での調査・市場部門を経て、2021年より外為どっとコム総合研究所へ参画。ニュースベンダーとFX会社で培った「情報の目利き力」と「市場実務の経験」を武器に、個人投資家へ有益な情報を発信している。ドル円などの主要通貨に加え、トルコリラ・メキシコペソなどの新興国通貨、日経平均・NYダウといった株価指数(CFD)まで、幅広い金融商品の分析を得意とするマーケットアナリスト。
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