
作成日時:2026年5月14日 11:30
監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 小野直人
金(ゴールド)相場は、複数の要因が交錯する中で上値の重さと下値の底堅さが同時に意識される状況が続いています。主要国の金融政策や需要動向に加え、地政学リスクや物価動向も相場に影響を与えており、市場は明確な方向感をつかみにくい展開です。本レポートでは、こうした環境下で押さえておきたいポイントを整理します。
金(ゴールド)の今後1週間の想定レンジ:4,500~4,900ドル
金(ゴールド)見通し:米利下げ期待の後退で上値は重いが、下値も崩れにくい
5月14日~5月21日の金相場は、米利下げ期待の大幅な後退とインドの需要鈍化観測が上値を抑える要因となる一方、中国を中心とする公的買いと金ETF(上場投資信託)への資金流入が下値を支える展開が想定されます。方向感を探りながらも、やや上値の重いレンジ相場になりやすいでしょう。
中東情勢と金相場:有事の金買いとインフレ懸念が交錯
中東情勢は、単純な「有事の金買い」だけでは説明しにくい局面です。米イラン戦争の長期化により、ホルムズ海峡周辺の供給不安が意識されれば、原油価格は高止まりしやすくなります。これは安全資産としての金需要を支える一方、米インフレ再燃や米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ期待の後ずれを連想させ、米金利上昇を通じて金の重しにもなります。
つまり、戦争の激化は金にとって必ずしも一方向の買い材料ではありません。地政学リスクは金を支える一方、原油高がインフレと金利上昇を招く場合には、上値を抑える要因にもなります。目先は「中東情勢が悪化すれば金高」と決め打ちするのではなく、原油、インフレ、米金利、ドルへの波及を確認することが重要です。
インド需要と金相場:関税引き上げで短期的には逆風
インドでは、金・銀の輸入関税が6%から15%へ引き上げられました。これにより国内価格が上昇し、宝飾品需要や小売需要には短期的な冷え込みが出やすい状況です。加えて、11月から続いてきた「婚礼シーズン(第1ピークは11月~2月、第2ピークは3月~5月)」が5月で終盤に向かうことも、目先の現物需要を抑える要因になります。
インドでは、結婚に際して金が「富の象徴」として重視され、花嫁側が金装飾品を持たせる慣習が残っているため、婚礼シーズンの有無が金需要に与える影響は小さくありません。
もっとも、インドの金需要は通貨安やインフレへの備えという面も強く、年間需要が一方的に崩れるとまでは言い切れません。短期的には需要の鈍化要因、中長期では資産防衛需要の残りやすさを分けて見る必要があります。
金ETFと投資需要:中国の公的買いと金ETF流入が下支え
金ETFについては、「資金流出が続いている」と見るのは適切ではありません。4月の金ETFは全地域で資金流入に転じ、世界全体の保有量も増加しました。加えて、ドルの保有リスクをヘッジし、外貨準備の多様化を図る狙いから中国人民銀行は4月も金準備を積み増し、18カ月連続の買い増しとなっています。
このため、米金利上昇やインド需要の鈍化が上値を抑える要因となる一方で、価格が下がった局面では金ETFや中国の公的買いが入りやすく、下値は一定程度支えられやすいと考えられます。
テクニカル見通し:4,600~4,740ドルを中心としたレンジを意識

テクニカル面では、金スポットは4,680ドル台で推移しており、25日移動平均線の4,700ドル付近、50日移動平均線の4,740ドル付近をやや下回っています。短期線が上値を抑える形となっており、現時点では上昇の勢いはまだ強いとは言えません。
RSI(14日)は48と中立圏にあり、買われすぎでも売られすぎでもない水準です。そのため、相場の方向感はまだはっきりせず、4,700ドル台を明確に回復できるかが目先の焦点になります。
上値はまず4,700ドル付近、次に50日移動平均線が位置する4,740ドル近辺が意識されます。ここを上抜けると、4,800~4,900ドル台への戻りを試す展開が考えられます。一方、下値は4,600ドル付近、さらに4,500~4,550ドル付近がサポートとして意識されます。
売買戦略としては、4,740ドル近辺を明確に上回るまでは戻り売りが出やすい一方、RSIが中立圏にあるため、下値では押し目買いも入りやすい状態です。目先は一方向に大きく傾けるより、4,600~4,740ドルを中心としたレンジを意識した対応が現実的です。
金(ゴールド)見通しまとめ:インド需要鈍化で金の本格的な反発は後ずれか
5月14日~5月21日の金相場は、米利下げ期待の後退、インド需要の鈍化、中東情勢を巡る原油高・インフレ懸念が上値を抑える要因になりやすい地合いです。一方で、中国の公的買い、金ETFへの資金流入、地政学リスクそのものは下値を支える材料になります。
短期的には、強い上昇トレンドというよりも、上値では戻り売り、下値では押し目買いが入りやすいレンジ相場を想定します。金価格が再び上方向を試し始める時期としては、インドで婚礼シーズンが本格化する11月頃を見据えた秋口が一つの候補になります。その頃に米インフレ指標の落ち着きや利下げ期待の再浮上が重なれば、金相場が再び上昇基調を強める環境が整いやすくなるでしょう。
重要イベントスケジュール
- 5月14日(木)21:30 米国 4月小売売上高
- 5月14日(木)21:30 米国 新規失業保険申請件数
- 5月20日(水)27:00 米国 FOMC議事要旨
- 5月21日(木)21:30 米国 新規失業保険申請件数
- 5月21日(木)21:30 米国 4月住宅着工件数・建設許可件数
- 5月21日(木)21:30 米国 5月フィラデルフィア連銀製造業景気指数
- 5月21日(木)22:45 米国 5月米製造業・サービス業PMI速報値
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小野 直人
株式会社DZHフィナンシャルリサーチでの情報配信業務、上田ハーロー株式会社での調査・市場部門を経て、2021年より外為どっとコム総合研究所へ参画。ニュースベンダーとFX会社で培った「情報の目利き力」と「市場実務の経験」を武器に、個人投資家へ有益な情報を発信している。ドル円などの主要通貨に加え、トルコリラ・メキシコペソなどの新興国通貨、日経平均・NYダウといった株価指数(CFD)まで、幅広い金融商品の分析を得意とするマーケットアナリスト。
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