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2026年の為替相場を考えるうえで、重要なテーマは「円安が一時的な動きなのか、それとも構造的に続くのか」という点です。米国では景気の底堅さやインフレ再燃への警戒が残る一方、日本では日銀の利上げ余地が限られるとの見方もあり、ドル円は高止まりしやすい状況が続いています。
また、円安はドル円だけの問題ではありません。ユーロやポンドなど欧州通貨に対しても円は弱く、ユーロ円やスイスフラン円の上昇にも注目が集まっています。
本記事では、第一ライフ資産運用経済研究所・主席エコノミストの藤代宏一氏、ロンドン在住の個人投資家・松崎美子氏の見解をもとに、2026年のドル円相場、円安の構造、米国の物価動向、欧州通貨の見通しを整理します。
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論点①|円安は一時的か、構造的か?
藤代宏一氏の視点——日銀が利上げしても円高が進むとは限らない
藤代氏は、円安が単純に日米金利差だけで説明できる局面ではなくなっていると見ています。日銀が利上げを進めても、利上げの到達点、つまりターミナルレートが意識されれば、日本の金利上昇余地は限られます。その場合、円高圧力も市場が期待するほど強まらない可能性があります。
一方で、米国は景気が底堅く、物価上昇を価格転嫁しやすい構造を持っています。米インフレが再燃すれば、FRBの利下げ期待が後退するだけでなく、将来的な利上げ論が意識される可能性もあります。藤代氏は、こうした米国経済の強さがドル高・円安を支える要因になると分析しています。
松崎美子氏の視点——海外勢は円や日銀への関心を失いつつある
松崎氏は、円安の背景として、海外投資家の日銀や円に対する関心低下を指摘しています。かつては日銀の金融政策変更を巡って円を買う投資家もいましたが、足元では「結局やっていることは大きく変わらない」と見られ、円が積極的に買われにくくなっているといいます。
特にユーロ円では、円安に加えてユーロ高が重なることで上昇圧力が強まりやすくなっています。松崎氏は、ユーロドルが一段高となり、同時に円安が続けば、ユーロ円の上値余地も広がると分析しています。
論点②|ドル円の上値はどこまでか?
藤代宏一氏——160円前後には二重の抑止力
藤代氏は、ドル円の160円超えには一定の抑止力が働いていると見ています。一つは政策当局による為替介入への警戒、もう一つは「160円を超えると日銀が利上げに動くかもしれない」という市場の連想です。
ただし、これは円高トレンドへの転換を意味するわけではありません。日銀が利上げしても、米国の景気や物価が強く、FRBの利下げ期待が後退すれば、ドル円は高止まりしやすい構図が残ります。
つまり、160円前後では介入警戒や日銀の利上げへの思惑から上値が重くなりやすい一方、円高方向にも大きく崩れにくいという見方です。ドル円は、上にも下にも一方的に走りにくいものの、基調としてはドル高・円安バイアスが残りやすい局面といえます。
論点③|米インフレ・原油高はドル円にどう影響するか?
藤代宏一氏——円安と原油高の同時進行が日本には重い
藤代氏は、今回の局面では円安と原油高が同時に進んでいる点を注目しています。過去の原油高局面では、円高が輸入物価の上昇を和らげる場面もありましたが、今回は円安が重なっているため、日本経済にとっては負担が大きくなりやすい状況です。
一方、米国は産油国であり、原油高への耐性があります。原油高がインフレを押し上げ、FRBの利下げ期待を後退させるなら、ドル買い圧力が強まりやすくなります。藤代氏は、今回の「有事のドル買い」は単なるリスク回避ではなく、米国経済の強さを背景にしたドル買いでもあると見ています。
米国の物価が再び上振れすれば、FRBは利下げに動きにくくなります。その結果、米長期金利が高止まりし、ドル円の下値を支える要因になりやすいと考えられます。
論点④|欧州通貨は円安時代の受け皿になるか?
松崎美子氏——ユーロは構造的な買い材料を持つ
松崎氏は、ユーロについて「持っておいた方がいい通貨」と見ています。中東情勢がなければドルを積極的に買いたい投資家は多くなく、停戦観測やリスク選好の動きが出るたびに、ドルが売られる場面もあると指摘しています。
ユーロには、ドル離れ、欧州の政治変化、将来的な財政統合期待など、複数の買い材料があります。もちろん欧州政治にはリスクも大きく、一本調子の上昇とは限りませんが、長期的にはユーロが見直される可能性があると見ています。
ポンド円も円安の影響を受けやすい
松崎氏は、英国における物価上昇や生活コストの高さにも注目しています。エネルギー価格や食品価格の上昇は欧州全体のインフレ圧力につながりやすく、ポンド相場にも影響を与えます。
英国経済には弱さもありますが、円が構造的に買われにくい状況が続けば、ポンド円も高止まりしやすくなります。欧州通貨を見る際は、ユーロドルやポンドドルだけでなく、円の弱さを組み合わせて考える必要があります。
論点⑤|日銀利上げで円安は止まるのか?
藤代宏一氏——利上げの「回数」よりも「到達点」が重要
藤代氏は、日銀の利上げについて、単に利上げするかどうかではなく、どこまで利上げできるのかが重要だと見ています。市場が「日銀の利上げ余地は限られている」と判断すれば、一時的に円買いが入っても、円高の流れは長続きしにくくなります。
また、日本では利上げが景気や株価に与える影響も意識されやすく、日銀が大幅な利上げを続けるハードルは高いと考えられます。そのため、日銀の利上げだけで円安基調を大きく変えるのは難しい可能性があります。
松崎美子氏——海外投資家の関心が戻るかが焦点
松崎氏は、円が買われるためには、海外投資家が再び日銀や日本の金融政策に関心を持つ必要があると見ています。日銀が市場の想定を上回る政策変更を行えば円買いにつながる可能性はありますが、現状では「円を積極的に買う理由」が乏しいという見方です。
そのため、日銀の利上げそのものよりも、それが海外勢にとってサプライズとなるかどうかが重要です。市場がすでに織り込んでいる程度の利上げであれば、円安の流れを止める材料としては力不足になりやすいと考えられます。
2026年為替見通しの整理
藤代宏一氏:2026年後半もドル高・円安バイアス
藤代氏は、日銀が利上げしても円高が素直に進むとは限らないと見ています。米国の景気・物価が強く、FRBの利下げ期待が後退すれば、年後半もドル高・円安バイアスが残りやすいと分析しています。
ドル円の160円前後では、介入警戒や日銀利上げへの思惑が上値を抑えやすいものの、米国側の材料が強ければ、下値も限られやすい展開が想定されます。
松崎美子氏:ユーロ円・ポンド円にも上値余地
松崎氏は、円安に加えてユーロ高が重なれば、ユーロ円は一段高となる可能性があると見ています。海外投資家の円離れ、ドル離れ、欧州通貨への見直しがユーロを支える可能性を指摘しています。
また、ポンド円についても、円が買われにくい状況が続く限り、高止まりしやすいと考えられます。円安相場を考える際には、ドル円だけでなく、ユーロ円やポンド円にも目を向ける必要があります。
まとめ——個人投資家へのメッセージ
藤代氏と松崎氏の見解に共通しているのは、円安が単純な一時的現象ではなく、米国経済の強さ、日本の利上げ余地の限界、海外投資家の日本円離れといった複数の要因から生じているという点です。
藤代氏は、米国の景気・物価の強さとFRBの政策期待から、ドル高・円安バイアスが残りやすいと見ています。一方、松崎氏は、円安に加えてユーロ高・ポンド高が重なることで、欧州通貨に対する円安も続きやすいと分析しています。
個人投資家にとって重要なのは、ドル円だけを見て判断しないことです。米国の物価、FRBの金融政策、日銀の利上げ余地、欧州通貨の動き、そして海外投資家が円をどう見ているのかなども考慮に入れる必要があります。
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株式会社第一ライフ資産運用経済研究所経済調査部 主席エコノミスト
藤代 宏一(ふじしろ・こういち)
・2005年 第一生命保険入社
・2008年 みずほ証券出向
・2010年 第一生命経済研究所出向を経て、内閣府経済財政分析担当へ出向
2年間経済財政白書の執筆、月例経済報告の作成を担当
・2012年 第一生命経済研究所に帰任
その後、第一生命保険より転籍
早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)
・参議院予算委員会調査室客員調査員(2018年)
・日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)
元外銀ディーラー
松崎 美子(まつざき・よしこ)氏
1988年に渡英、ロンドンを拠点にスイス銀行・バークレイズ銀行・メリルリンチ証券で外国為替トレーダーとセールスを担当。現在は個人投資家として為替と株式指数を取引。ブログやセミナーを通して、”ロンドン直送”の情報を発信中。
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