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ドル/円の5月見通し 「介入一過、焦点はイラン情勢に」

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ドル/円の5月見通し 「介入一過、焦点はイラン情勢に」

執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 シニア為替アナリスト 神田卓也

 

ドル/円 の基調と予想レンジ

基調
不安定

予想レンジ
151.500~159.500円

ドル/円4月の推移

4月のドル/円相場は155.562~160.727円のレンジで推移し、月間の終値ベースで約1.3%下落した(ドル安・円高)。米国とイランの和平協議をめぐり、悲観的な見方が強まればややドル高に振れる一方、楽観的な見方に傾けばややドル安に振れるなど、一進一退の展開が28日まで続いた。この間、8日と17日には戦争終結に向けた期待感を背景に158円台を割り込む場面もあったが、原油供給をめぐる懸念が拭えない中で円買いの動きは限定的だったことから下値は堅かった。一方、心理的節目であり日本政府・日銀の「防衛ライン」との見方もあった160円付近では円買い介入への警戒感が高まり伸び悩んだ。レンジ相場の様相が強まる中だったが、28日に日銀が利上げを見送り、29日に米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを見送ると160.73円前後まで上昇。2024年7月以来の高値を付けた。しかし、直後に政府・日銀の円買い介入が発動されたと見られ、一時5円あまり急落し155円台半ばまで下落。結果的に、この日の高値と安値がそのまま月間の高値と安値となった。

ドル/円 日足チャート

ドル/円4月の四本値

始値 158.766 高値 160.727 安値 155.562 終値 156.596

4月振り返り

日付 内容
2日 米国のトランプ大統領は(米国時間1日夜)、国民向けに演説を行い、イランへの軍事作戦の正当性を強調。その上で「中核的な戦略目標はまもなく達成される」「我々はイランを打ち負かし、完全に壊滅させた。彼らは軍事的に、経済的に、あらゆる面で壊滅状態にある」などと主張した。また、戦闘終結に向けたイランとの協議で合意が成立しなければ、「極めて激しい打撃を与える」「今後2-3週間のうちに、イランを石器時代へと逆戻りさせるつもりだ」と述べ、攻撃の激化を予告した。
3日 米3月雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比17.8万人増と市場予想(6.5万人増)を大幅に上回った上に、失業率が4.3%と前月から0.1%ポイント改善し市場予想(4.4%)を下回った。一方で、労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率は2021年11月以来の低水準となる61.9%に低下。平均時給も前年比+3.5%と2021年5月以来の低い伸びにとどまった。
8日 トランプ米大統領が対イラン戦争の停戦について再延長をSNSで発表。「イランがホルムズ海峡の完全かつ即時、安全な再開に同意することを条件に、イランへの爆撃と攻撃を2週間停止することに同意する。これは双方による停戦となる!」とした。また、「イランから10項目の提案を受け取っており、交渉の基盤として機能する」と説明した。その後、イランのアラグチ外相も声明で、「2週間の期間にわたり、ホルムズ海峡における安全な航行は、イラン軍との調整および技術的制約への十分な配慮の下で可能となる」と表明した。
10日 米3月消費者物価指数(CPI)は前年比+3.3%と市場予想(+3.4%)を下回ったものの、前月(+2.4%)から大幅に伸びが加速。イラン戦争を受けてガソリンなど自動車燃料の価格が大幅に上昇した。食品とエネルギーを除いたコアCPIは前年比+2.6%と予想(+2.7%)には届かなかったが、伸び率は前月(+2.5%)を上回った。その後、米4月ミシガン大消費者信頼感指数・速報値は47.6となり、統計開始以来最低を記録。一方で1年先インフレ期待は4.8%に急上昇した(予想4.2%、前月3.8%)。
13日 前週末の11日から12日にパキスタンの首都イスラマバードで行われた米国とイランの和平協議は合意に至らず終了した。バンス米副大統領は「米国にとってよりも、イランにとってはるかに悪いニュースだと思う」と述べ、「合意しないまま米国に戻ることになる。われわれのレッドラインが何であるかは明確に示した」と語った。その後、トランプ米大統領は、イランの港湾を出入りする船舶への封鎖を米東部時間4月13日午前10時に開始するとして、ホルムズ海峡を「逆封鎖」した。
17日 米メディアは「イランが濃縮ウランを放棄する見返りに、米国は200億ドルの資産凍結を解除する案を検討」「米国とイランによる次回の和平協議は19日にパキスタンで開催される見通し」と報じた。イランのアラグチ外相は、イスラエルとレバノンが10日間の停戦に合意したことを受けて「ホルムズ海峡を通過するすべての商船の航行は残りの停戦期間中、イランが指定した航路を通じて完全に開放される」と表明した。
21日 トランプ米大統領は「イランが統一した提案を提示できるまで攻撃を保留するようパキスタンから求められた」として「協議が何らかの形で決着するまでイランとの停戦を延長する」として停戦期限を再び延長した。
24日 パキスタンメディアは、イランのアラグチ外相が交渉団を率いて首都イスラマバードを訪れ、米国との2回目の和平協議を行う見通しだと報じた。その後、米メディアもトランプ大統領がウィトコフ特使とクシュナー氏をパキスタンへ派遣し、アラグチ外相との週末の協議に当たらせると報じた。また、米司法省は、連邦準備制度理事会(FRB)の本部改修をめぐるパウエル議長の不正疑惑に関する刑事捜査を取り下げる見通しだと米メディアが報じた。その後、米連邦地検のピロ検事正も捜査を打ち切ると明らかにした。
27日 トランプ米大統領は前週末26日、「イランの指導部では激しい内紛と混乱が起きており、彼ら自身も誰が責任者なのか分かっていない」とした上で「イラン側との会談のためにパキスタンに向かう予定だった代表団の派遣をキャンセルした」と発表した。一方、米ニュースサイトのアクシオスが「イランがパキスタンの仲介者を通じて、ホルムズ海峡再開に向け新たな提案を米国に提示」「核協議は今後の段階に先送り」と報じた。
28日 日銀は政策金利を0.75%に据え置いたが、3人の審議委員が利上げを主張して反対票を投じた。また、展望リポートで2026年のインフレ見通しを1月時点の+1.9%から+2.8%へ大幅に引き上げた上で、当面のリスク要因として、「今後の中東情勢の展開が、金融・為替市場やわが国の経済・物価に及ぼす影響を特に注視する必要がある」と指摘した。植田総裁はその後の会見で、日銀が重視する基調的な物価上昇率について、景気悪化に伴う下振れリスクもあるとしつつ「全体としては上振れリスクの方が大きい」との見解を示した。3人の委員が据え置きに反対したことについては、(自身を含む)据え置きを主張した残り6人も「物価の上振れリスクを気にしているが、現在ただちに利上げで対応するほどの緊急度はない」と判断したと説明した。
29日 米連邦公開市場委員会(FOMC)は政策金利を3.50-3.75%に据え置いた。声明では「目標の達成を妨げる可能性があるリスクが生じた場合、委員会は金融政策の姿勢を適切に調整する準備がある」との将来的な追加利下げを示唆する文言が維持された。これに対して「ハマック氏、カシュカリ氏、ローガン氏は政策金利の維持を支持したが、現時点で声明に緩和バイアスを盛り込むことには賛成しなかった」と明らかにした。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は会見で「現在の金融スタンスは(利上げ・利下げの)どの方向にも動ける非常に良い位置にある」とした上で「労働市場はまだ少しだけ冷え込んでいる。そのため、政策金利を大幅に引き締める根拠は弱いと思う」と述べた。また、「議長としての任期が5月15日に終了した後も、当面の間は理事として残る予定だ。理事としての活動は控えめにするつもりだ」として、FRB本部の改修をめぐる司法省の捜査が終了するまでFRBにとどまる考えを示した。
30日 片山財務相は「いよいよ断固たる措置を取るタイミングが近づいている」と述べて円買い介入を示唆。その後、三村財務官も「これは最後の退避勧告」と表明し、再び160円を超えて円安が進んだ市場の動きを強くけん制した。直後に特段の材料がないまま円が急伸。財務省はコメントを発表しなかったが、日本経済新聞はその後、政府関係者が「為替介入の実施を認めた」と報じた。

5月の注目イベント(日・米)

5月の注目イベント(日・米)
1日
米4月ISM製造業景況指数
17日  
2日   18日  
3日   19日
日本1-3月期GDP・一次速報
4日   20日
FOMC議事録
5日
米3月貿易収支
米4月ISM非製造業景況指数
米3月JOLTS求人件数
21日
日本4月貿易収支
米5月製造業・サービス業PMI
6日
米4月ADP全国雇用者数
22日
日本4月消費者物価指数
7日   23日  
8日
日本3月毎月勤労統計
米4月雇用統計
米5月ミシガン大消費者信頼感指数
24日  
9日   25日  
10日   26日
米5月消費者信頼感指数
11日
米4月中古住宅販売件数
27日  
12日
米4月消費者物価指数
28日
米4月PCEデフレーター
米1-3月期GDP・改定値
13日
日本3月経常収支/貿易収支
米4月生産者物価指数
29日
日本5月東京都区部消費者物価指数
日本外国為替平衡操作の実施状況
14日
米4月小売売上高
30日  
15日
米4月鉱工業生産
31日  
16日      

各市場 4月の推移

ドル/円の5月見通し

4月30日、2024年7月以来1年9か月ぶりにドル売り・円買い介入が実施された可能性が高く、その規模は5兆円前後と推測される。日本の外貨準備高は3月末時点で1兆3747億ドル(当時のレートで218兆円あまり)であり、そのうち比較的容易に使用が可能な外貨(証券と預金の合計)は1兆1618億ドル(184兆円あまり)。4月30日と同規模の介入であれば30回以上の追加実施が可能となる計算だ。当面は、1ドル160円の水準が日本政府・日銀の「防衛ライン」として意識される公算が大きい。なお、政府・日銀は5月6日にも比較的小規模な円買い介入を実施したと見られ、155円ちょうど付近まで下落する場面があった。こうした中で、ドル/円は4月30日に付けた160.73円前後の高値をすぐに更新するのは難しいだろう。ただし、為替介入には、貿易・デジタル収支の赤字や家計及び企業の積極的な対外投資など、根本的な円安要因を変える効力はないはずだ。その意味で、介入はあくまでも「対症療法」であって「時間稼ぎ」でしかないと考えられる。問題は、介入の効果が残るうちに新たなドル安・円高要因が浮上するかどうかであろう。例えば、イラン情勢に改善が見られ、ホルムズ海峡の再開が見通せる状況となれば、原油価格の反落を背景にドル安・円高の流れが加速することも考えられる。一方で、原油高が続くようなら米国のインフレ圧力が高まる上に、日本の交易条件に悪化圧力が高まることからドル高・円安への揺り戻しが強まる可能性もある。5月のドル/円相場の焦点としては、本邦の円買い介入をめぐる効力よりも、イラン情勢を受けた原油価格の動向が本命となりそうだ。

kanda.jpg 株式会社外為どっとコム総合研究所 シニア為替アナリスト
神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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