
【地政学リスクでも上昇】トルコリラ円が底堅い要因
中東情勢の緊迫化やトルコ経済の成長鈍化懸念があるにもかかわらず、足元のトルコリラ/円(TRY/JPY)は3.53円~3.57円近辺で底堅く推移しています。現在、ドル/トルコリラは43.90台のリラ安水準にありますが、対「円」での下落が抑制されている背景には、主に以下の2つの要因が影響している模様です。
- 「悪い円安」によるリラ安圧力の相殺
日本もエネルギー輸入国であるため、中東情勢の緊迫化に伴う原油高が、日本の交易条件悪化を意識した「悪い円安」を招いています。これが結果的にリラ安圧力を相殺し、相場を下支えしています。 - パニック的なリラ売りの限定
トルコは中東の直接的な交戦国ではないため、市場はすでに地政学リスクをある程度織り込んでいます。そのため、パニック的なリラ売りは限定的なものにとどまっています。
【トルコ経済】景気は「勢い不足」、流動性低下にも注意
2日に発表された10-12月期GDP(前年比+3.4%)や2月製造業PMI(49.3)を見る限り、景気拡大は維持しているものの「勢い不足」は否めず、リラを力強く買い進めるにはもう一段の材料確認が必要な状況です。
また、外貨準備高の減少傾向(約60億ドル減少との観測報道も)が市場の不安材料となっています。トルコ当局による相場急変を防ぐための規制も導入されていますが、かえって市場の流動性が低下し、レートが不安定になる可能性がある点には注意が必要です。
【イラン情勢のリラへの影響】地政学とインフレ再燃の懸念
中東情勢の悪化に伴い、今後は以下の「リラ売りリスク」が顕在化する可能性に警戒が必要です。
- イラク国境の封鎖と物流寸断
主要な貿易相手国の一つであるイラクとの間で国境封鎖や物流寸断が起きた場合、輸出産業の停滞に直結し、外貨獲得能力が大きく低下する恐れがあります。 - インフレ再燃と欧米との対立懸念
原油高によるトルコ国内のインフレ再燃が懸念されます。さらに、トルコによる中東情勢への軍事介入が拡大した場合、欧米との対立や経済制裁を招く恐れがあります。これらが現実となれば、円安による下支え効果を上回る規模で、急速なリラ売りが加速するリスクが潜んでいます。
【政策金利と市場心理】物価高はなかなか収まらない?
3月3日には、2月分の消費者物価指数(CPI)が公表されます。1月分は前年同月比+30.65%と前月より鈍化したものの、食品価格の上昇などで事前予想を上回り、インフレの根強さが意識される結果となりました。
トルコ中銀は「足元のインフレ上昇は一時的であり、年末には15~21%程度へ緩やかに減速する」との見通しを示しています。しかし市場では「年末時点でも23〜25%程度にとどまる」との見方が根強く、中銀の見通しは甘いと指摘する声も聞かれます。
トルコ中銀は1月に政策金利を37%へ引き下げましたが、来週(3月12日)に次回会合を控えています。インフレ高止まりへの懸念から「追加利下げは行いにくい」との見方が広がっており、これが足元のリラの下支え要因となっています。さらにイラクとの物流悪化も加われば、インフレ再燃から、中銀の利下げ期待が大きく後退する可能性もあります。
【テクニカル分析】短期的な「買いシグナル」点灯中!V字回復なるか

日足チャートでは、直近高値(3.685円)から急落(3.460円)した後、現在は綺麗なV字回復(短期的な上昇トレンド)を描いています。すでに下落幅の半値戻し以上(3.578円付近)を達成する勢いです。
- 移動平均線(10日):過去10日間の平均価格を示す線(現在3.540〜3.564円付近)を現在の価格が上抜けており、線の向きも横ばいから上向きに転じています。短期的には「買い(強気)」のサインであり、今後はこの線が下値のサポートラインとして機能するかがポイントです。
- RSI(9日):現在は57.62付近と、強弱の分かれ目である50を上抜けており買いが優勢です。買われすぎの目安となる70まではまだ余裕があるため、もう一段上昇する余地が残されています。
【今後の見通しとシナリオ】本格回復か、再び下落か
ファンダメンタルズ(上値が重い経済状況)とテクニカル(短期的な上昇傾向)が綱引きとなる中、今週は以下のシナリオを想定しています。
メインシナリオ(強気・レンジ推移)
10日移動平均線(3.54〜3.56円付近)を下支えとしながら上昇を続け、まずは心理的節目である「3.60円」の突破を試す展開です。一時的な下落があっても、この線の上で反発できれば上昇トレンド継続と見なせます。ただし、国内のドル買い需要が上値を抑えやすい環境にあるため、一気に突き抜けるには時間がかかるかもしれません。
上振れシナリオ
3.60円を明確に突破した場合、下落前の水準である3.62〜3.64円を目指します。さらに直近高値の3.685円を上抜ければ、本格的な上昇トレンドへの転換が示唆されます。
下振れシナリオ(弱気・警戒)
外貨準備高の減少懸念や、地政学リスクを背景とした突発的な「円高」により、価格が10日移動平均線を再び下抜けた場合です。さらに前述した「イラク国境封鎖」や「原油高・軍事介入拡大に伴う制裁懸念」などのリラ安リスクが表面化すれば、今回の反発はいったん終了となります。その場合は、再び心理的節目の3.50円や、直近安値の3.460円方向へ大きく下落(下値試し)するリスクが高まります。
【今週の重要イベント】
- 3月3日:消費者物価指数(2月分)
- 3月4日:貿易収支(速報)
- 3月5日:外貨準備(週次)
- 3月10日:鉱工業生産(1月分)
- 3月12日:トルコ中銀(TCMB)政策金利決定 ※来週木曜
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