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高市首相が率いる自由民主党は、2月8日に行われた第51回衆議院選挙で、議員定数の3分の2(310議席)を超える316議席を獲得しました。ひとつの政党が単独で衆議院の3分の2超の議席数を確保するのは戦後初めてです。安定政権の誕生に対する安心感からか、週明けの日経平均株価は5万7千円を突破して、「選挙は買い」というアノマリーを再認識させる展開となりました。市場では積極財政や成長投資への期待から「高市トレード」とも呼ばれる日本株物色が加速しています。
多くの投資家が今、一番気にしていることは、現在の株高が、一体いつまで続くのかということでしょう。実はその鍵を握っているのは、国内要因だけでなく、海を渡った米国でこの秋に実施される中間選挙なのです。日米両国で「選挙は買い」の「アノマリー」は起きるのでしょうか。日経平均株価とS&P500という日米の代表的な株価指数とドル/円相場を、「テクニカル」と「ファンダメンタルズ」の両面から分析し、その可能性を探ります。
「自民圧勝」の選挙結果と日経平均株価の関係
果たして本当に「選挙は買い」が機能したのでしょうか。自民党が単独で316議席を獲得、衆議院で3分の2超の議席を確保したことは、高市政権の政策運営の後押しするプラス材料として受け止められています。強固な政権基盤のもとで、積極財政や成長投資が実行されるとの期待が、現在の株価の押し上げ要因とされています。
事実、週明けの日経平均株価は5万7千円台まで上昇し、「選挙は買い」というアノマリーは再確認されました。果たして現在の株高が、期待先行による一時的なものか、それとも中期的なトレンドに発展するかは、今後、高市政権が選挙公約に掲げた政策をどの程度実行し、それを市場がどのように評価するかに委ねられています。
積極財政は「円高・ドル安」へと相場転換させるのか?
市場では「高市政権の積極財政や成長投資の実行性が高まった」との見方が広がっています。補正予算のみならず、防衛・DX関連投資が実行されると、関連企業の業績を押し上げ、株式市場の活発化を支援する材料になる可能性があります。
しかし、積極財政が実施されると、国債増発などが長期金利の上昇圧力になる可能性が高まります。市場では「景気刺激」と「金利上昇負担」の両面が、常に意識されることになるでしょう。
経済理論的には、日本の長期金利上昇は、日米金利差の縮小方向に働き、円高圧力が生じる可能性があります。これまで外国為替市場では円安トレンドが続いてきました。金利差縮小の局面では、相場トレンドの方向性が見直される可能性も否定できません。
投資家にとってドル/円相場は、単純な「金利差モデル」で判断するのではなく、「実際のトレンドが転換し始めているかどうか」を確認するフェーズに入りました。
移動平均線でドル/円相場を分析すると
現在のドル/円相場をテクニカルで分析してみます。下記は週足ベースのドル/円相場です。チャートは26週移動平均線を下抜けしており、中期トレンドの変化を示唆する動きが見られます。
ドル/円相場(週足チャート)

これまで押し目買いが機能してきた相場構造に変化が生じている可能性があります。上昇トレンドからレンジ相場、あるいは円高方向へとトレンドを転換させるシナリオが意識され始めています。
仮に週足ベースで26週線を明確に下回った状態が継続する場合、次の52週移動平均線の下抜けを試す展開となり、ドル/円相場は段階的に円高方向にシフトする可能性があります。中期的には、金利差縮小とチャート構造の変化が重なった場合、円安一辺倒だった相場の流れが転換する局面も想定されます。
円高方向への動きが強まる場合、輸出関連株には逆風ですが、内需株や輸入企業はコスト面で改善効果が期待されます。株式市場で投資対象を物色する行動に変化が起きる可能性があります。
今後はファンダメンタルズ分析とあわせて、移動平均線の位置関係、安値の切り下げ構造の有無などをテクニカル分析で確認しながら、円安トレンドの継続ではなく「円高転換シナリオ」を視野に入れるべきでしょう。
米国でも「選挙は買い」のアノマリーは通用するのか
続いて、株式市場について考えてみます。日本で広く知られる「選挙は買い」という相場のアノマリー同様に、米国にも「中間選挙」のアノマリーがあります。
それは以下のようなものです。
・選挙前は政治的不透明感から値動きが激しい
・選挙後は株価が上昇しやすい
実際、過去の中間選挙において、S&P500は秋以降に上昇基調を強めるケースが多く、投資家の多くに、「中間選挙のアノマリー」として意識されています。
もちろん、アノマリーは必ず機能するような法則ではありません。しかし、何度も観察されてきた傾向である以上、2026年において、株式市場のひとつのシナリオとして、注目する価値はありそうです。
その際、テクニカル分析の観点で重要になるのが現在のチャート構造です。
S&P500(週足チャート)

S&P500は足元で25週移動平均線をサポートにして推移しています。短期、中期、長期の移動平均線が順番に上向きに並ぶ、いわゆる「強気のパーフェクトオーダー」を維持しています。テクニカル面では上昇トレンド継続を示唆しています。
もしアノマリー通り、選挙後に株高基調が強まる展開だとすれば、現在のトレンドは、その動きを加速させる可能性があります。上昇トレンドが維持されている最中に、中間選挙を迎えるという点で、過去のパターンとも整合性が取れています。
ただ、大切なのは「米中間選挙だから買い」と単純化するのではなく、「アノマリーが意識されやすいタイミングで、テクニカルも上向き」という二重の条件が重なっている点です。仮に選挙前に米国株が一段高となれば、世界的なリスクオン環境が形成され、日本市場に大量の資金が流入する可能性があります。
日経平均株価6万円台は定着するのか?
現在の日経平均株価は、短期、中期、長期の3本の移動平均線が順番に上向きに並ぶ「強気のパーフェクトオーダー」を形成しています。
日経平均株価(週足チャート)

これはトレンドフォロー型の資金が流入しやすい典型的な上昇局面で、テクニカル分析では「上昇トレンド継続」を示唆します。
さらに、2月8日投開票の第51回衆議院選挙後の急伸局面で、ボリンジャーバンドの+2σラインを明確に上抜ける動きが見られます。相場のモメンタム(勢い)が加速しつつあることが確認できます。+2σのブレイクは、単なるレンジ相場ではなく、トレンドが発生・拡大する局面で、しばしば観察されるシグナルです。
もっとも+2σ上抜け後は、「短期的な過熱感」として意識されやすく、「押し目」と「スピード調整」を挟みながら、トレンドが継続するケースも少なくありません。そのため、移動平均線との乖離、出来高の推移を確認しながら、トレンドの「質」を見極める必要があります。
ただ、現在のようなテクニカル環境が維持される限り、日経平均は5万7千円台から6万円台へと水準を切り上げて、相場のレンジが上方にシフトするシナリオが、いよいよ現実味を帯びてきました。
見えてきた日経平均7万円
今回の選挙結果は、高市政権の政策実行力の強化という点で、市場に一定の安心感を与えています。強固な政権基盤のもと、積極財政や成長投資が進むという期待は、日本株の中・長期的な支援材料として意識されやすくなっています。
高市首相は安倍元首相と同じように、財政出動や成長分野への重点投資を通じて、経済を押し上げるのではないかという見方があります。市場の一部には、「アベノミクス」がスタートした直後のような「政策期待の再燃」を”期待”する向きもあります。
事実、「アベノミクス」が始まった翌年の2013年、日経平均株価は1年間で56.7%上昇しました。金融緩和と財政政策への期待から、同時に企業収益の改善と株式の評価切り上がりが進行した結果です。
2025年末の終値50,339円を基準にすると、日経平均株価が7万円に到達するには、約39%の上昇が必要となります。これは2024年の19.22%、2025年の26.18%を大きく上回る伸び率で、決して簡単なハードルではありません。しかし、政策期待と企業業績の拡大が同時に進む局面が再び訪れるならば、可能性がないわけではありません。
投資家は大相場にどのように向き合うべきか
もっとも、未知の領域である日経平均株価7万円までの道のりが、一直線になるとは限りません。為替相場や長期金利の動向、企業収益の進捗状況次第で、調整局面やスピード調整などを挟む可能性が十分にあります。投資家にとって重要なのは、どのシナリオが優勢になりつつあるのかを見極めることです。
2026年は日本の衆議院選挙を皮切りに、秋には米国で中間選挙が実施されることもあって、「イベント」主導で株式市場、外国為替市場の値動きが強まり、ボラティリティ拡大やトレンド転換が繰り返される可能性があります。こうした状況に直面したとき、投資家は個別企業の現物株式だけでなく、ドル/円相場の値動きからダイレクトに収益が得られるFX、日経平均・S&P500のような株価指数など、複数の金融商品を利用すると、リスクヘッジしながら、相場動向に柔軟に対応することができます。株価指数などを少額から売買できるCFDのような金融商品は、取引手段として有効かもしれません。
株価上昇を待つだけでなく、調整局面でもしっかりと利益を狙いましょう。為替相場の変動に目を配りながら、リスク管理も十分に行ってください。大相場を予感させる2026年は、リスク許容度と時間軸に応じた戦略を検討していくことが、投資家として重要になりそうです。
岩田仙吉(いわたせんきち)氏株式会社タートルズ代表/テクニカルアナリスト
2004年、東京工業大学から一橋大学へ編入学。専門は数理経済学。卒業後、FX会社のシステムトレードプロジェクトのリーダーになり、プラットフォーム開発および自動売買プログラムの開発に従事。その後、金融系ベンチャーの立ち上げに参画。より多くの人に金融のことを知ってほしいと思い金融教育コンテンツの制作に集中するために会社を創業。現在は、ハイリスク・ハイリターンの投資手法ではなく、初心者でも長く続けられるリスクを抑えた投資手法を研究中。
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