昨日の海外市場でドル円は、21時過ぎに153.32円まで本日安値を更新したが、積極的に下値を探る展開にはならなかった。NY時間に入ると153円台半ばでのもみ合いとなった。ユーロドルは1.1473ドルまで弱含んだ。ポンドは英国の財政悪化への不安が改めて意識される中でポンド売りが進んだ。対ドルでは1.3010ドルと4月以来の安値圏まで下押ししたほか、対円でも約1カ月ぶりに200円の大台を割り込んで199.88円まで値を下げた。
本日の東京時間でのドル円は、引き続き円安地合いが継続するか。アジア時間では本邦と中国から経済指標の発表が予定されているが、どの指標も市場を動意づけることは難しい。日銀金融政策決定会合の議事要旨も公表されるが、9月分ということもあり材料にはなりくそうだ。よって、本日も注目は本邦の国会や円安が進んだ場合の通貨当局の動向、更に米国の選挙や暗号資産の動きなどになるか。
12月17日まで行われる第219回臨時会だが、本日は国民民主の玉木代表、そして連立から離脱した公明の斎藤代表の代表質問が予定されている。今週7日から始まる衆院予算委員会を前に、どのような政策を高市首相が示すかが注目される。これまでは本邦の国会で市場が動意づくことは少なかったが、今回は物価高対策の内容と2025年度の補正予算案の規模や成立時期が市場を動意づける一因になりそうだ。なお、国民の注目度が高い衆院議員定数削減や外国人政策等は、高市政権の支持率の増減に影響を与えるだろうが、為替市場への影響は限られるか。
臨時会で注目されるのは、物価高対策でどの程度の財政拡大を示すかだろう。補正予算では経済財政政策と成長戦略を担当する内閣府特命担当大臣の城内氏は規模が重要ではないとしているが、昨年度補正予算の13兆9000億円を上回ることを市場は織り込んでいる。自民党の税制調査会メンバーに積極財政派が増えており、市場は大幅な予算拡大を期待しているが、一方で財政規律を無視したような規模まで拡大した場合は格下げリスクなども高まりそうだ。
高市首相は昨日、経済対策の重点項目は城内氏がまとめるように指示したと述べたが、城内氏は財政の信認が揺るがなければ国債の増発を厭わない積極財政派で知られている。昨日の英財務相の演説後に、英国の財政悪化への懸念からポンドが急落したように、積極財政(=財政悪化)を行う国の通貨は売られる傾向が止まらない。円についても同様で、市場が想定するよりも積極財政を進めることで、国民の支持率は得たとしても、金融市場や格付け機関等からは円売り・格下げが進行することになるだろう。
なお、先週末に続き昨日も片山財務相が円安についてのけん制発言(「一方的で急激な動きがみられる」「高い緊張感」)を行ったが、これまで通りの定例文であり、市場の反応は鈍かった。
高市政権になりトランプ米大統領をノーベル平和賞に推薦するなど、これまで以上に米国に気を使っている政権運営となっていることで、円安については米国の出方次第になるだろう。その円安けん制については、先週の日米財務相会談後に米財務省が為替について話し合ったことを明記している点や、為替報告書の公表がいつ行われるか分からない状況のため、円安の流れが急転するリスクには備えておきたい。
国内事情以外で市場を動意づける可能性があるのは、4日に行われた米国の選挙(ニューヨーク市、ニュージャージー州、バージニア州など)の結果が徐々に判明していること。来年の中間選挙の前哨戦とも位置付けられていることで、結果次第でトランプ政権の今後の政策に影響を与える可能性がある。また、今月に入りビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)が軒並み大きく下落しており、為替市場を含めて資金の流出入の変化にも注意したい。
(松井)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
