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【市場概況】東京為替見通し=ドルは高市トレード期待感が支え、政策実現不透明感と米中貿易摩擦が重し

昨日の海外市場でドル円は、152.05円まで上昇後、貿易問題を巡る米中対立激化への懸念が高まり、リスク回避の円買い・ドル売りが優勢になり一時151.51円付近まで下押しした。ユーロドルは1.1577ドルまで弱含んだ後は1.1622ドルまで切り返した。

 本日の東京時間でのドル円も、「高市トレード」への期待で下値は支えられそうだが、高市政権の政策実現への不透明感と米中貿易摩擦懸念の高まりで上値も抑えられそうだ。

 第219臨時国会は12月17日まで開かれる。現時点では積極財政への期待があり、この期待が続く限りは日本株とドル円は支えられると思われる。ただ、高市政権の政策実現は、先週15日に自民・公明・立憲の3党税制調査会長が協議を行い、ガソリン減税の原案作成で合意しているが、ガソリン減税以外に早期の政策実現は高い壁がありそうだ。

 特に困難となるのは物価高対策のために歳出拡大や減税を行うためには、財源の確保を示すことが必須になることだ。「年収の壁」引き上げ、物価上昇に応じた所得税の「基礎控除」見直しなどを今国会中に着手するとしているが、財源確保の案が現時点では明らかになっていない。過去には赤字国債発行の可能性も示唆していた高市首相だが、公明党の連立離脱により自民党内で風当たりが強くなり、財政規律派とされる麻生自民党副総裁や鈴木自民党幹事長がどの程度まで積極財政を容認するかが注目される。積極財政がアドバルーンに留まった場合は、急速に「高市トレード」の巻き戻しになるリスクもあるだろう。

 臨時国会は会期期間が58日だが、今月末は26日に東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議、27-29日にトランプ米大統領来日予定(28日に日米首脳会談の可能性)、31日にアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議など国際的なイベントが相次ぐことで、当面は具体的な政策などが発表されることが難しいかもしれない。政策実現が進まないものの、与党内での混乱が表面化されない限りは、「高市トレード」の期待感だけが高まったままなことで、ドル円は底堅い動きになりそうだ。

 本日は本邦から対外対内証券投資が発表されるほか、韓国が政策金利公表とシンガポールの消費者物価指数(CPI)が発表される程度で、経済指標等でアジア時間に主要通貨が動意づくことは難しい。国内以外で市場を動意づけるのは、引き続き中国との貿易摩擦や米国の政府機関閉鎖の報道になる。

 昨日はトランプ政権が「米国製ソフトウェアを使用した製品の中国への輸出制限を検討中」と報じられている。ただ、トランプ政権がどれだけ圧力をかけようが、中国の経済に多少マイナスになる規制を掛けようが、中国政府は決して圧力に屈することはなく、いずれトランプ政権がTACO化(Trump Always Chicken Out=トランプはいつも尻込みして退く)する可能性が高い。また、21日にはトランプ米大統領が、APEC前後に行われるとされていた中国の習近平主席との首脳会談について「実現しないかもしれない」と発言していたが、本日日本時間早朝(現地時間22日)には「韓国で習近平・中国国家主席と長時間の会談予定」と発言。あまりにも日々変わるトランプ氏の発言をまともに受け取る市場参加者は減少しているが、オオカミ少年の逸話のように重要で核心を突いた発言も中にはあることで、引き続き警戒を怠らないようにはしておきたい。


(松井)

・提供 DZHフィナンシャルリサーチ