先週末の海外市場でドル円は、一時149.38円まで下落したものの、売り一巡後は底堅く推移した。NY市場では米10年債利回りが4.01%台まで上昇したことを受けて、150.64円まで上昇した。首相選挙で自民党の高市総裁が選出される可能性が高まったことも下値を支えた。ユーロドルは取引終盤には米格付け会社がフランスの格付けを引き下げたと伝わり、一時1.1651ドルと日通し安値を更新した。
本日の東京時間でのドル円は、ドル売り・円売り要因が複雑に絡まることで方向感がなく、神経質な値動きになると思われる。
公明党の連立離脱から始まった国内政治の混迷は、維新からは閣僚は出さず閣外協力という形に落ち着くことになりそうだ。本日は自民の高市早苗総裁と維新の吉村洋文代表が連立政権合意書に署名する予定で、明日の首相選挙で高市氏が首相に指名されることになる。自維の連立は「高市トレード」の復活を促し、株買い・ドル円買いを連想させ、ドル円の下値を支えることになるだろう。ただ、閣外協力の船出時は歓迎される相場になるだろうが、維新が求める国会議員定数削減だけを主眼に置いたものだけで、企業・団体献金の廃止などが遅々として進まない場合は政局が流動化する可能性も懸念される。また、今回の公明党離脱には、国民の支持を得ている高市氏だが、自民党内での求心力が弱まっていることで高市氏の求める政策ができない場合もあれば「高市トレード」に戻ることも難しいだろう。
国内政治の安定はドル円の支えになる反面、米国の政治・経済の混迷と、日銀の利上げ期待が継続していることはドル円の重しになる。先週末は低下していた米長期金利が持ち直したことで、ドル円は下値から切り返した。ただ、米政府閉鎖は4週目へと入ることが見込まれている。ベッセント米財務長官が「1日当たり最大150億ドルの損失をもたらす可能性があると考えている」と述べているように、閉鎖が長期化すればするほど経済的な影響は甚大になる。今週24日には連邦職員の給与が支払われる日だが、200万人を超える職員とその家族に大きな負担がかかってくる。民主党のケリー上院議員は「共和党が交渉に応じれば、今週中に閉鎖が終了する可能性がある」とは述べているが、現時点では歩み寄りも見えないことで経済的な損失に加え、失業問題も更に悪化する可能性がある。
また、米中貿易摩擦に関しても現時点では両国ともに強気姿勢を見せていることで、ドルの上値を抑える要因になる。ベッセント米財務長官が中国の副首相との会談を持つとの報道も週末に流れているが、どのように折り合いをつけるかが不明。トランプ政権は、中国からのレアアース獲得に赤信号が燈った時への対応として、ロシアとのウクライナ和平を再開し、ウクライナのレアアースを確保しようとの動きも見えてきている。いずれにしろ、早急な解決案が出ない限りは、ドルのネガティブ要因になる。
また、日銀の利上げ期待が再燃していることは円買い要素となる。先週は田村日銀審議委員、内田日銀副総裁が相次いでタカ派発言を行ったが、本日は前回の日銀金融政策決定会合で据え置きに反対した高田日銀審議委員が午後に中国経済連合会で講演を行う。首相選挙が行われる今月の利上げは難しいだろうが、年末の利上げは濃厚で、米連邦準備理事会(FRB)の利下げが確実視されている中で日米の金融政策の方向性の違いで金利差が縮小することが、ドル円の売り要因としてのしかかりそうだ。
なお、本日は中国から7-9月期国内総生産(GDP)をはじめ複数の経済指標が発表される。市場の反応は限られるだろうが、米中貿易摩擦開始後のデータとなることで、どのような結果になるかは注目したい。
(松井)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
