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【市場概況】東京為替見通し=焦るトランプ政権でドル売り、高市トレード停滞で円買い継続か

昨日の海外市場でドル円は、米中の貿易摩擦が激化しかねないとの懸念や米地銀の融資を巡る懸念から、高く始まった米国株相場が失速し軟調な動き。また、米長期金利の指標となる米10年債利回りも一時3.9669%前後と4月7日以来約半年ぶりの低水準を付けたことも相場の重しとなり、150.21円まで弱含んだ。ユーロドルは米経済指標の下振れや米長期金利の低下を手掛かりにユーロ買い・ドル売りが優勢になると、一時1.1694ドルまで上値を伸ばした。

 本日の東京時間でのドル円は、引き続き上値が重くなりそうだ。ただ、週末を前に来週行われると予想される首相選挙をめぐり、与野党の間で様々な話し合いが持たれることで、政局の動向で相場が一変するリスクには備えておきたい。
 
 ここ最近のドル円は、ドル売りと円買いという二つの要因が重なっていることで上値の重い展開が継続している。中国商務省が、米国が北京の希土類(レアアース)輸出規制をめぐって「パニック」を引き起こしていると非難しているように、トランプ政権が仕掛けている米中貿易摩擦の再燃がドル売り要因として重くのしかかっている。更に、4週目に突入する可能性が高まっている米政府機関の閉鎖も引き続きドル売りを促している。

 米中ともにレアアースをめぐり協議を行うことを否定していないが、一時的な規制緩和が決定した場合でも、トランプ政権が関税強化を継続している限りは抜本的な解決には結びつかないだろう。中国は米国が保護主義に傾いていることで、インド・ロシアや中東・アフリカ諸国など多岐にわたり新たな通商パートナーを拡大している。先日、習近平国家主席が「米国経済は中国との長期にわたる貿易摩擦を吸収できないと賭けている」と述べているとの報道が伝わったように、米国との交渉を焦る必要もない。

 一方で、トランプ米大統領が昨日プーチン露大統領と電話会談し、ロシアとウクライナ戦争の終結を目指してブタペストで対面での会談をする方向と示したのは、中国からのレアアースの確保ができない場合には、ウクライナに眠る巨大なレアアースを獲得しようとする魂胆が見え隠れしている。いずれにしろ米国にとって不利な状況に陥っていることで、米中貿易摩擦はドル売りが優勢にならざるを得ない。

 また、米国の政府機関閉鎖はベッセント米財務長官が「1日当たり最大150億ドルの損失をもたらす可能性があると考えている」と述べているように、米国経済に大きな痛手として今後のしかかるだろう。昨日トランプ大統領が米連邦準備理事会(FRB)に送った刺客のミランFRB理事が「0.25%の利下げでは必要な調整よりも遅い」と述べていたが、経済的な打撃と雇用情勢の悪化でFRBの利下げ幅が大きく、利下げスピードも速くなるリスクも高まっていることもドル売り要因だ。

 また、引き続き混迷化している本邦の政治状況で「高市トレード」の停滞を招いていることが、円の買い戻し要因となっている。自民党と日本維新の会の連立政権の道筋が見え、市場では財政積極路線となり再び「高市トレード」への期待が高まっている。しかしながら、今後の政権の舵取りが高市氏の思惑通りに進まない可能性もあり、自民党総裁選後のお祭りのような相場に戻るのは難しいかもしれない。

 なお、本日の15時35分に内田眞一日銀副総裁が全国信用組合大会で挨拶を行う予定。通常は同時刻に日銀のホームページで内容文が掲載される。ただ、通常中央銀行は政権交代直後に政策金利の変更をすることが稀であることから、今月の政策変更は難しく、昨日の田村審議委員の講演同様に市場の反応は限られたものになりそうだ。


(松井)

・提供 DZHフィナンシャルリサーチ