昨日の海外市場でドル円は、貿易問題を巡る米中対立激化への懸念から、戻り売りなどが出やすい地合いとなった。トランプ米大統領がSNSで「中国が米国産大豆を購入しないことは経済的に敵対的な行為だ」「報復措置として、食用油をはじめとする中国との貿易取引を停止することを検討中だ」と投稿すると、一時151.61円と日通し安値を付けた。ユーロドルは主要野党である中道左派「社会党」はルコルニュ氏の不信任決議案に賛成票を投じないと表明すると1.1615ドルまで強含んだ。
本日の東京時間でのドル円は、上値が重い展開を予想する。ただ、引き続き政治相場となることで政局をめぐる報道には要警戒だ。
昨日もトランプ米大統領が中国に対して、米国の大豆購入を行わない場合は制裁を促すことをSNSに投稿した。トランプ氏は先週10日に中国への(11月1日からの)追加関税を発表、12日にはSNSで穏健な姿勢へ変わり、昨日14日には再び制裁の可能性を示唆するなど、朝令暮改となる姿勢を繰り返している。あまりにも変節が激しいことで市場の反応も鈍くなっているが、米政権の不安定さが露見していることはドルにとってはネガティブ要素でしかない。中国当局は一貫して米国に対する態度は変わらず、表立っての米中貿易摩擦は望んでいないものの、米国が追加関税を行った場合は対抗措置をとるなど、粛々とこれまで通りの対応をとることになる。いずれにしてもトランプ政権の独り相撲を見守る相場になるだろう。
更に、トランプ政権は政府機関の一部閉鎖の解決の糸口が見えていないことも、ドルの重しになる。上院は共和党の政府予算案に投票するが進展の兆しがなく、政府閉鎖による経済的な打撃もドル売り要素となるだろう。
また、本邦の国内政局も不透明感が拭えないことが、株安を連想させドル円の上値を抑えることになる。公明党が26年間の連立を離脱したことで、高市自民党総裁が自民党内で党内融和をせざるを得ない状況に陥っている。仮に高市氏が首相に就任した場合でも、高市氏が掲げていた財政拡大路線を貫けるかが懸念されている。「高市トレード」が後退したとはいえないまでも、当面は停滞せざるをえず、円売りを積極的に仕掛けるのも難しくなっている。
本日は本邦からは8月鉱工業生産確報値、設備稼働率などが発表されるが、上述のように市場が政治相場となっていることで経済指標への反応は限られるだろう。また、中国からは9月消費者物価指数(CPI)、生産者物価指数(PPI)が発表される。
(松井)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
