執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2025年7月4日 12時46分
ユーロ/円・ポンド/円買いで追随だが、高値警戒でストップもタイトに
ユーロ/円は堅調、ポンド/円は政局不安で乱高下
ユーロ/円は169.00円を中心に振幅が続いていましたが、米ドル/円が145円台を回復する動きに連動して、170.610円まで上昇しました。一方、ポンド/円は、財政規律を重視するリーブス財務相が近く内閣を離れ、政府は財政規律を大幅に緩める可能性が意識されて英国資産売りが強まり、197.40円付近から195.363円まで急落しましたが、その後、底堅い米雇用統計を受けた円売りを受けて198.100円付近へ反発しました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
ポンド過度に悲観的になるのは危険
デギンドス欧州中央銀行(ECB)副総裁は、「追加利下げは経済の助けにならない」と述べ、金融緩和への慎重な姿勢を示しました。また、「ユーロドルは1.17ドルで十分許容できる」と語り、現時点のユーロ水準に特段の警戒感は示していません。市場では、ユーロ高が懸念される水準について「1.23ドル超からではないか」との声も聞かれます。
NATO加盟国は国防費をGDP比5%とする新たな目標に合意し、財政出動への期待感も高まる中、ユーロはなお底堅い展開が見込まれています。一方で、米国との通商協議の行方が不透明な状況では、全面的な貿易戦争に突入する可能性もあり、そうなれば成長見通しへの懸念からユーロへのセンチメントが後退するリスクもあります。
Bloombergデータを基に当社が作成
一方、英国では現政権が公約として掲げていた社会保障改革の重要部分――50億ポンド(約9,800億円)規模の削減案――が撤回に追い込まれ、財政赤字の抑制が一層困難な状況となっています。秋の予算編成では、増税か国債の増発に頼らざるを得ない見通しです。増税を選択すれば支持率低下や景気減速への懸念が強まり、国債の増発を選択した場合も財政健全化の遅れにより英国資産が売られやすくなるなど、いずれにせよ政権には厳しい展開が予想されます。
こうした政治的な不透明感がくすぶる中、英中銀の利下げバイアスも根強く、ポンドの上値は抑えられる可能性があります。ただし、英国の信用リスクを示す指標とされるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は依然として低水準にあり、現時点で過度な英国離れを想定するのは適切とは言えないでしょう。
ユーロ/円・ポンド/円、押し目買いスタンス継続(テクニカル分析)
ユーロ/円は、21日移動平均線および200日移動平均線に支えられながら170円台を突破しました。昨年7月に付けた史上最高値175.423円にはまだ距離があるため、まずは同年7月12日の高値173.432円の突破が注目されます。オシレーター系の指標では買われ過ぎを示唆するものが増えており、調整が入った場合には下落幅が拡大するリスクもあるため、押し目買いのタイミングは慎重に見極める必要があると考えます。
一方、ポンド/円も短期的な調整を挟みつつじりじりと下値を切り上げる展開が続いており、押し目買いスタンスを維持したいと考えています。ただし、上昇ペースは緩やかであり、節目となる200.00円の突破は不透明です。したがって、買いを仕込む水準については慎重な判断が求められます。
【ユーロ/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:EUR/JPY:167.500-173.500
【ポンド/円チャート 日足】
出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:GBP/JPY:195.000-201.000
7/7 週のイベント:
一言コメント
欧州の熱波はすごいですね。軒並み気温40度を超える地域が続出しています。周りを海に囲まれている日本と違って、大陸で熱がこもりやすいことも関係しているのでしょうね。
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