このレポートの概要:米国株式市場と外国為替市場の最新動向と分析
金融マーケットで永く情報発信を行っている田嶋智太郎氏が、米国株式市場の最新動向を詳しく解説します。
大いに気がかりなイランの今後の“選択”
「我々はイランと戦争しているのではない。イランの核開発計画と戦っている」。バンス米副大統領はこのように述べ、今回のイラン攻撃はあくまで「ピンポイント作戦」、「限定介入」である点を強調している。少し振り返ると、先週20日の東京時間に伝わったのは「トランプ米大統領がイランへの攻撃に踏み切るかどうか2週間以内に決める」、「イランとの交渉が近いうちに実現する可能性が高い」ということだった。しかし、イラン側は「イスラエルに攻撃を停止させることが交渉の場に臨む条件になる」とし、その一方でイスラエルのネタニエフ首相に武力攻撃から外交交渉に切り替えようなどという思いは微塵もない。イスラエル国民の多くがイランへの攻撃を支持しているのだから、国民からの支持を回復・維持したい首相の判断としては当然ということになる。
つまり、2週間という猶予期間に何ら意味はなく、むしろ「その間に相手が折れるのを待つ」という姿勢は弱腰に映る。そこで、今回は攻撃を絞り込んだあくまで限定的な軍事力を行使したということなのであろう。もちろん、そんな道理がイラン側に通じるはずはなく、報復を誓うイランの今後の“選択”が大いに気がかりなものとなってきている。
強まる!インフレ懸念と株価への影響
最も懸念されるのは、やはりホルムズ海峡の封鎖であろう。米国によるイラン攻撃実行以前は「ほぼない」と思われていたが、イラン国営メディアによれば「すでに同国の国会は海峡封鎖を決議した」と伝わる。最終的に実行されるかは不明だが、封鎖が現実となれば原油の供給減少や相場上昇などを通じて世界経済に与える影響は計り知れない。
すでに原油先物市場には強含みの反応が見られており、今後、価格の高止まりが続けばインフレ圧力がさらに高まることは避けられない。むろん、そうなれば米金利には上昇圧力がかかりやすくなる一方、米株価には下押し圧力がかかりやすくなる。ひとまず、週明けの東京市場では日経平均株価が下落してのスタートとなっているが、いまだ様子見ムードが色濃いことも事実で、何より今夜の米株市場の反応をしっかり見定めたい。
S&P500種の当面の下値の目安は?
ときに、先週末は米ウォールストリートジャーナル(WSJ)紙から「トランプ政権が半導体を巡る対中規制を一段と強化することを検討している」との報が伝わり、米株市場では半導体関連株が売られていた。どうやら、中国による米国向けレアアース輸出が依然として停滞していることが背景にある模様で、ここでは米中間の“チキンレース”が引き続き繰り広げられている。
このような状況下にあって、投資家が米国株の一段の上値を取りに行くことに慎重になるのは当然のこと。同時に、米連邦準備理事会(FRB)も政策の方向性を明確に打ち出せない状況にあるわけだから、なおさら米株価の上値は重くなりがちとなる。その実、S&P500種も6000ポイントを超えたところからは俄かに上値の重さが強く感じられる状況。今後、仮に5960ポイント処を明確に下抜ける展開になると、ひとまずは200日移動平均線が位置するところ、あるいは5月23日安値=5767ポイント処を試す可能性があると見ておかねばなるまい。
緊張緩和局面のドル売り戻しに備える
地政学的な緊張の一段の高まりによって、市場ではドル買いの流れが強まっている。先週末にドル/円が146円台に乗せる動きとなったのは、決して米国株相場が強含みで推移したからでも、幾人かの米地区連銀総裁が早期の米利下げに慎重な発言をしたからでもない。結果的に、足元のドル/円は強い上値抵抗と見られていた一目均衡表の日足「雲」を上抜ける動きを見せ、テクニカル的にも強気の流れ。さらに、本日(23日)のオセアニア時間には一時146.58円処まで上値を試す動きが見られた。
今のところは手探りムードも色濃いが、中東情勢の行方次第では一段の上値余地も生じよう。ドル買いの動きが強まっている間は様子見に徹するのが無難であり、いずれ緊張が和らぐ局面を迎えたときに、戻り売りを仕掛ける算段で臨みたいと個人的には考える。
ドル円週足チャート
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田嶋智太郎氏
経済アナリスト 慶應義塾大学を卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券を経て、経済アナリストに転身。現場体験と綿密な取材活動をもとに、金融・経済全般から戦略的な企業経営、個人の資産掲載まで幅広い範囲を分析・研究。 WEBサイトで経済・経営のコラム執筆を担当し、株式・外為・商品などの投資ストラテジストとしても高い評価を得ている。 また、「上昇する米国経済に乗って儲ける法」など書籍も手掛けるほか、日経CNBCレギュラーコメンテーターも務める。
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