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図表で見る米国株アップル(Apple)の2025年3月期(2Q)決算と株価動向分析

(画像=iStock)

 世界有数の巨大IT企業アップル(Apple)。同社は同じく米国のマイクロソフト(Microsoft)やエヌビディア(NVIDIA)と時価総額を競い合いながら、上場するナスダック(NASDAQ)指数を牽引する優良銘柄のひとつです。主力商品である携帯電話iPhoneは若者中心に人気が高く、日本の国内市場で約6割のシェアを誇ります。世界的にみるとアンドロイド型携帯電話のユーザーが7割を占める中、2023年に韓国のサムスン電子(Samsung)を抜いてアップル(Apple)のiPhoneは世界シェア一位となっています。

 そのアップル(Apple)は、すでに2025年の3月期(FY25 2Q)の業績まで発表しています。そこで今回はFY2020〜FY2024の通期データとFY25 1Q・2Qのデータを使って、アップル(Apple)という米国の巨大IT企業の財務体質を、数字が語る事実に基づき、客観的に読み解いてみましょう。

アップル(Apple)の損益計算書

 まずは損益計算書から見ていきます。

(1)売上高の動向

・FY2020−FY2024

 FY2020の274,515百万ドルがFY2024には391,035百万ドルとなりました。5年間で約42.4%の成長です。特にFY2021はiPhone12シリーズの販売やコロナ禍による在宅需要の増加により、前年比で33.3%の大幅増収となりました。また、FY2022も7.8%成長と堅調に推移しましたが、FY2023は為替相場の影響や一部製品の需要鈍化から△2.8%の減収となりました。FY2024は+2.0%と小幅に回復しています。

 

・FY25 1Q・2Q

 FY25 1Q(2024年12月期)の売上高は124,300百万ドル、FY25 2Q(2025年3月期)は95,359百万ドルでした。前年同期比で見ると売上高成長率はFY25 1Qは+4.0%、2Qは+5.1%の成長率です。FY2024の回復傾向からFY1Q・2Qと成長軌道に乗ってきた様子がうかがえます。

 売上高の内訳からさらに分析します。前年同期比で売上高成長率は製品別にiPadがFY25 1Q+15%→FY25 2Q+15%、MacはFY25 1Q+16%→FY25 2Q+7%と、二期連続で健闘しています。特にサービス部門は注目で、クラウドサービス、App Store手数料、Apple Pay、Apple Musicなどの貢献が顕著です。FY2020〜FY2024と右肩上がりで着実に伸びており、FY2025も前年同期比で1Q+14%→2Q+12%と安定的な成長率となりました。Appleを着実に成長させる”エンジン”の機能を担うようになってきたと考えられます。

 地域別売上高では、日本国内でのFY25 1Q +16%、FY25 2Q +17%という安定的な成長率が目立ちます。円安・ドル高の為替相場がマイナスの影響を与えているにもかかわらず、日本市場で人気の高いiPhoneとサービスの販売が伸び続けています。また、アジア太平洋地域もFY25 1Q +1%、FY25 2Q +8%と伸びが顕著です。ただ、中華圏だけがFY25 1Q △11%、FY25 2Q △2%と連続で減収しました。

(2)営業利益の動向

 

・FY2020−FY2024

 FY2020の営業利益は66,288百万ドルで、FY2024には123,216百万ドルとなり、5年間で約85.9%増加しました。FY2021は対前年比で64.4%と急成長、FY2022も9.6%の増益で過去最高益を更新しました。FY2023は減益から△4.3%成長になりましたが、FY2024は増益し、7.8%の成長率を記録しました。営業利益率を見るとFY2020の24.1%がFY2024は31.5%と着実に改善しています。

 

・FY25 1Q・2Q

 FY25 1Qの営業利益は42,832百万ドルで、営業利益率は34.5%でした。FY2024から続く高水準の利益率は、効率的な収益構造が継続しているからでしょう。ただ、2Qの営業利益は15,278百万ドルで、営業利益率は16.0%に低下しています。一時的なコスト増加や売上構成の変化が影響した可能性があり、季節的な要因も考えられます。

(3)当期利益の動向

 

・FY2020−FY2024

 FY2020の当期利益は57,411百万ドルでしたが、FY2024は93,736百万ドルになりました。5年間で約63.3%増加しました。FY2021は64.9%の大幅な増益となりましたが、FY2022以降は成長が鈍化して、FY2024は△3.4%の減益となりました。次項の(4)株主価値指標の動きのチャートを参照するとわかりますが、EPS(一株あたり利益)がFY2020の3.28ドルからFY2024には6.08ドルに上昇しています。利益成長が鈍化したにもかかわらず、EPSが下がらない理由は、自社株買いなどで市場に流通する株式を減少させている影響でしょう。

 

・FY25 1Q・2Q

 FY25 1Qは当期利益が36,330百万ドルで、前年同期比7.1%の増益となりました。2Qの当期利益は24,780百万ドルで、前年同期比4.8%の増益です。1Qよりも2Qの営業利益は減少しましたが、利益自体は前年同期よりも改善しています。これはコスト管理の効果が現れていると考えられます。

(4)株主価値指標の動き(FY2021~FY2024)

1)EPS(一株あたり当期利益)

 EPS(一株当たり利益)は、FY2020の3.28ドルからFY2022には6.11ドルに上昇、FY2023は6.13、FY2024は6.08ドルと横ばいが続いています。上昇に頭打ち傾向が見られますが、依然として高水準です。

2)PER(株価収益率)

 PER(株価収益率)はFY2020の34.28倍が、FY2024は37.44倍となりました。利益が横ばいであるにもかかわらずPERが上昇しているのは、投資家がアップルに(Apple)の成長に高い期待を抱いていることを示しています。

3)PBR(株価純資産倍率)

 PBR(株価純資産倍率)は、FY2020の29.17倍からFY2024には60.46倍と急騰しました。自己資本が減少傾向にある中でも、株価は大きく上昇しており、アップル(Apple)のブランド力や将来性に対する市場の高い評価が反映されています。

アップル(Apple)の貸借対照表

 続いて貸借対照表を分析します。

(5)資産の動向 

・FY2020−FY2024

 流動資産はFY2020の143,713百万ドルからFY2024は152,987百万ドルと微増しています。FY2021からFY2022にかけて減少しましたが、FY2023からFY2024は再び増加しました。固定資産はFY2020の180,175百万ドルからFY2024の211,993百万ドルへと持続的に拡大しており、設備投資や長期資産への積極的な投資姿勢がうかがえます。

 

・FY25 1Q・2Q

 FY25 1Qの流動資産は133,240百万ドル、FY25 2Qが118,674百万ドルで減少しています。売上債権の回収や現金などの減少が背景にあると考えられます。一方で固定資産はFY25 1Qが210,845百万ドル、FY25 2Qが212,559百万ドルとほぼ横ばいでした。安定した保有状態が継続しています。

 

(6)負債の動向

・FY2020−FY2024

 流動負債はFY2020の105,392百万ドルからFY2024の176,392百万ドルに大きく増加しました。特にFY2022には153,982百万ドルまで急増しており、買掛金や短期借入の増加が背景にあると見られます。固定負債はFY2020の153,157百万ドルからFY2024には131,638百万ドルへと減少しており、長期債務の返済が進んでいることがうかがえます。

 

・FY25 1Q・2Q

 流動負債はFY25 1Qが144,365百万ドル、FY25 2Qが144,571百万ドルと、ほぼ横ばいでした。固定負債はFY25 1Qが132,962百万ドル、FY25 2Qが119,866百万ドルと継続的に縮小しています。負債構造は長期から短期にシフトが進んでいる可能性があります。

(7)純資産の動向

・FY2020−FY2024

 純資産はFY2020の65,339百万ドルからFY2022には50,672百万ドルまで減少しました。しかし、翌年のFY2023は62,146百万ドルと回復しています。これは自社株買いの影響による資本減少が主要因と考えられます。FY2024は56,950百万ドルと微減でしましたが、安定的に推移しています。

 

・FY25 1Q・2Q

 FY25 1Qは66,758百万ドル、FY25 2Qは66,796百万ドルと、過去5年間で最も高水準となりました。四半期毎の利益蓄積が背景にあり、財務健全化が進んでいると見られます。

(8)流動比率の動向

・FY2020−FY2024

 流動比率はFY2020の136.4%からFY2024の86.7%まで低下しています。FY2022以降は流動負債の急増に流動資産の増加が追いつかず、安全性がやや低下しています。

 

・FY25 1Q・2Q

 FY25 1Qは92.3%とやや回復しましたが、FY25 2Qでは82.1%と再び低下しました。100%を下回っているので安全性において注意が必要ですが、現金収支の流動性によって影響は限定的と考えられます。

 

流動比率=流動資産 ÷ 流動負債

 

(9)自己資本比率の動向

・FY2020−FY2024

 自己資本比率はFY2020の20.2%からFY2022には14.4%まで低下し、その後FY2023から2024にかけて15〜17%台へとやや回復しました。これは財務レバレッジの活用や自社株買いの影響でしょう。

 

・FY25 1Q・2Q

  FY25 1Qは19.4%、 FY25 2Qは20.2%と、5年ぶりに20%台へと回復しました。負債の圧縮と利益蓄積によって、企業の財務健全性は着実に改善していると考えられます。

 

自己資本比率=純資産 ÷ 総資産

アップル(Apple)のキャッシュフロー計算書

 最後にキャッシュ・フロー計算書をみてみましょう。

 

(10)営業キャッシュ・フロー(営業CF)の急拡大

・FY2020−FY2024

 営業活動によるキャッシュ・フローは、FY2020の80,674百万ドルからFY2024の118,254百万ドルへと着実に増加しました。特にFY2022の122,151百万ドルは過去最高を記録しており、製品やサービスの売上増加が反映されています。2023年にはやや減少したものの、2024年には再び増加しました。

 

・FY25 1Q・2Q

 FY25 1Qは29,935百万ドル、FY25 2Qは23,952百万ドルとなっており、引き続き堅調なキャッシュ創出力を維持しています。四半期ごとの比較でも2024年とほぼ同水準であり、Appleのコアビジネスの強さがうかがえます。

 

(11)投資キャッシュ・フロー(投資CF)の変化

・FY2020−FY2024

 投資活動によるキャッシュ・フローは、基本的にマイナスが継続しています。例外的にFY2023は3,705百万ドル、2024年は2,935百万ドルとプラスとなっており、有価証券の売却などによる一時的なキャッシュ流入があったと考えられます。2022年の△22,354百万ドルはこの期間で最大の支出となっており、大規模な設備投資や有価証券の購入が行われた可能性があります。

 

・FY25 1Q・2Q

 FY25 1Qは9,792百万ドル、FY25 2Qは2,917百万ドルと、いずれもプラスを記録しました。設備投資の抑制や保有資産の売却によって、資金回収を積極的に進めている可能性があります。全体として、現金の運用に対して保守的な姿勢がうかがえます。

(12)財務キャッシュ・フロー(財務CF)の推移

・FY2020−FY2024

 財務活動によるキャッシュ・フローは、全期間にわたり大幅なマイナスが続いています。FY2020は△86,820百万ドル、FY2024には△121,983百万ドルと支出額が拡大しました。主な要因は、自社株買いや配当金の支払い、借入金の返済によるキャッシュ流出と推定されます。特にFY2024のマイナス幅は、今回の財務分析期間中で最大であり、株主還元を加速させている印象を受けます。

・FY25 1Q・2Q

 FY25 1Qは△39,371百万ドル、FY25 2Qは△29,006百万ドルとなっており、引き続き大規模なキャッシュアウトが続いています。自社株買いが継続している可能性が高く、Appleの強い資金力と株主還元への積極的な姿勢が反映されています。

 こうしてみてみると、アップル(Apple)のキャッシュ・フローには、いくつかの明確な特徴があることが分かります。それは、本業による営業キャッシュ・フローの増加で、安定的に現金を生み出していることです。また、投資キャッシュ・フローでは支出を抑制しながら、資産売却などでキャッシュ回収を進めています。そして、財務キャッシュ・フローでは、自社株買いを中心とした株主還元を積極的に実行していることです。その結果、多額の支出が続いていますが、営業キャッシュ・フローと投資キャッシュ・フローでバランスさせて、現金水準が安定しています。

アップル(Apple) 2025年3月期(FY25 2Q)決算の総括

 最後にアップル(Apple)のFY25 2Q決算内容と、これまでの財務データをもとにポイントを整理します。

 損益計算書(P/L)では、FY2020からFY2022にかけて、売上と営業利益は大きく拡大、営業利益率も30%を超える高水準を維持してきました。しかし、FY2023以降は成長率に鈍化が見られ、FY25 2Qは営業利益率が16.0%まで低下しています。FY25 1Qは一時的に高い利益率を記録したものの、四半期ごとの変動が目立っており、コスト構造や販売構成に改善の余地があることが浮き彫りになっています。

 貸借対照表(B/S)では、流動資産と固定資産の双方が過去5年間で拡大し続けています。それに対して負債は徐々に圧縮され、自己資本比率は20/17%だったFY2020からFY2022には14.36%まで低下しましたが、FY25 2QにはFY2020と同水準まで回復しています。この間に財務基盤は整えられて堅実になっており、成長投資と財務健全性のバランスが保たれています。

 キャッシュ・フロー計算書(C/F)では、営業キャッシュ・フローが安定的に高水準を維持している一方で、財務キャッシュフローは大規模な自社株買いや配当支払いを背景にマイナスが継続しています。なお、投資キャッシュ・フローはFY25 1Q・2Qともにプラスで、資産売却や投資抑制を通じて現金流動性を確保している様子がうかがえます。

 総じて、アップル(Apple)はこれまで「本業による安定収益」「健全な財務体質」「株主還元を重視した資本戦略」を通じて、強固な経営基盤を築いています。しかし、FY25 1Q・2Qの決算からは、成長の減速、利益率低下といった課題も見え始めています。今後はコスト効率の見直し、AI・サービス領域のような新たな収益の柱を構築できるか、「持続的成長」の鍵になるでしょう。

 ただ、トランプ大統領が5月24日、自身のSNSで、主力製品であるiPhoneの海外生産を続けるアップル(Apple)に対し、「米国内で生産しない場合はトランプ関税かける」というような発言を行い、株価が急落するなど、不透明な要素も発生しています。財務分析のみならず、アップル(Apple)を取り巻く経営環境についても注視していきましょう。

(本文ここまで)

 
岩田仙吉(いわたせんきち)氏
株式会社タートルズ代表/テクニカルアナリスト
2004年、東京工業大学から一橋大学へ編入学。専門は数理経済学。卒業後、FX会社のシステムトレードプロジェクトのリーダーになり、プラットフォーム開発および自動売買プログラムの開発に従事。その後、金融系ベンチャーの立ち上げに参画。より多くの人に金融のことを知ってほしいと思い金融教育コンテンツの制作に集中するために会社を創業。現在は、ハイリスク・ハイリターンの投資手法ではなく、初心者でも長く続けられるリスクを抑えた投資手法を研究中。
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